
「私はインスピレーションで生きている」
そんな風にいえばあまりに身勝手で自己弁護的な言い方になる。
実際には欺瞞と謝罪の半生だった。
いや、人はいつ死ぬか分からないのだから、半生ではなく人生というべきか。
昨年の今頃はロードスターの所有進退に頭を悩ませている時期だった。
走行距離こそ4万キロ程度ではあったが、納車から5年目を迎え、自分とNDとの接点である「コックピット周り」に嫌気が差していた時期でもあった。
単純にレカロシートに替えてしまえば良いという意見もあるが、エアバッグなどの安全機能は無視できない。
NDのSSPグレードからRSグレードへの乗り換えを検討した。
ディーラーに頼み込み、オプションで換装される純正レカロシートの車を探してもらいフィッティングをした。
最後期モデルはキネマティックポスチャーコントロール機能(KPC)が搭載されていたが、効果も判りにくく、さほど惹かれない。
それよりも、かねてから悩みの種であったドライビングポジションの不快さを商品改良で追加したテレスコピック機能がある程度、解消してくれる。
何度か試乗させてもらい、いよいよ見積書を作ってもらった。
そんなある日、ディーラー内にある私の隣のテーブルに若い男性座っていた。
彼は私の前にロードスターに試乗していた。
私はこれからの同志に逸る気持ちを抑えきれず、丁重に話しかけた。
すると彼は新型BRZと新型NDの購入に悩んでいるという。
私は彼にこういった。
NDとBRZは値段的に近いものがある。
しかしNDロードスターに乗って味わったこの5年間は金額には換算できない程の素晴らしい体験だった。
私は続けた。
BRZ/86の世界は分からない。しかしロードスターの歴史は長く、車を通して知り合えた人は数え切れない。
キャンプに旅行、これ程まで他者を思いやる世界があるだろうか。
そして私がこの度同じ車種に乗り換えること自体が答えだといった。
熱弁にディーラーマンも感服していた。
彼は私と会った次の日に契約した。
そして私はBRZを購入した。
私の住む街は狭い。
いつか彼に会うときが来るかもしれない。
何といえばいいのか言葉が思い付かない。
今度は彼にBRZを薦めてみようと思う。
Posted at 2022/08/25 09:57:35 | |
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