
みんカラを見ると、メガライフバッテリー過充電&充電不良問題が多数の車種・車両で発生していることが分かります。メガライフバッテリー愛好家としては、とても残念で悔しい気持ちです。
メガライフバッテリーの充電制御の困難な点は数年前にメーカーの方にご相談頂いて共同で調査研究していた時があったので、私も知り得る所があります。
この資料は数年前、メーカーの方から提供して貰ったもので、既存の鉛バッテリー前提設計の車輌において、車載制御コンピュータの充電パラメータを変更する程度では、充電率過多と充電不足の問題を抜本的に改善するには至らなかったという結果を表したものです。テスト車輌はVWゴルフ7Rです。
私も同じ車輌を持っているので、この資料を提出していただく前に問題に気づいて、根本的に充電制御システムの見直しを実施しなければならないと考えてました。
その電気的特性が大きく異なるバッテリーですから、やはりどうしても鉛バッテリー前提の設計の車輌にそのまま載せ替えればそれで良いという訳にはなかなかいきません。
さてどうしよう。少し悩みましたが、その時点で将来的にはより軽量なレーシングバッテリーも使ってみたいと思っていたので、リン酸鉄リチウムイオンバッテリー専用の充電制御をリプログラムすることで対応できました。
充電制御リプログラムの要となるポイントとしては、鉛バッテリーとは大きく異なる充放電特性にマッチした充電制御を行うことです。
リン酸鉄リチウムイオンバッテリーの充電効率が既存の鉛バッテリーよりも優れるからと言っても、充電ロスによる発熱やメガライフバッテリー搭載iBMSの電気容量の制限もあるので、充電は極力ゆっくり優しく行うようにプログラムしました。
この時、難しかったのがバッテリーセルの自己発熱量をメガライフバッテリーのケーシングがあまり上手に熱発散してくれない点でした。外部からの熱に対応する為に断熱材が充填されたケースは防水の密閉式で、バッテリーセル内部の熱を外部に逃すルートの主だったところはバッテリーターミナルくらいでした。
実は鉛バッテリーの場合は内部の電解液の対流などで冷却されるところもあるので、余剰電力の熱発散をする性能も備えているのに対し、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーでは、クーリングチャネルなどを工夫しなければならないという課題があります。
バッテリーセルの発熱が少なくなるように、電気容量を意識した充電レートを制御するようにしたところ、スムースに充電できるようになり、充電不良の問題も解決できました。
また副次的に充電抵抗、充電フリクションの大幅な低減も実現できました。
この充電制御が完成すると、その優れた電気特性を活かした使い方が可能となり、より小型軽量なレーシングバッテリーの使用も可能となりました。
そして更に、時折セルバランスを整える目的も加味してCTEK充電器でメンテナンス充電をすることを前提とした、より充電を最小限として充電フリクションを最小化するレーシング充電制御も完成することができ、現在に至ります。
ですが、メガライフバッテリーのハードウェアとしてのいくつかの課題については、ハードウェアの問題はソフトウェアではカバーしきれない原理原則から解決に至らなかったところもあります。
メガライフレーシングバッテリーについては、内部構成や電気容量の違いから解決されている点が多く、ほぼ大きな問題なく継続使用できてます。
ここまでやってみて正直な感想としては、やはり、リン酸鉄リチウムイオンバッテリーを車載で使用するには専用の充電制御や充電システムが必要ということでした。
或いは私よりも賢い解決策を見つけられる方もいらっしゃるかも知れないと考え、この知見を広く共有したいと思います。皆様にも車輌電装システムの専門家の方やそうしたお友達がいらっしゃいましたらば、この記事を共有して頂けると有難いです。
Posted at 2022/11/25 21:32:34 | |
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