
私の自分史の中でも、相当インパクトのあった
体験についてお話しをしてみたいと思います。
当時私は、そう19歳でしたね。
その当時、と言っても、現在でも一部の
愛好家は居られると思うのですが、
ウルトラ・ライトプレーンという
超軽量飛行機に乗せてもらう機会がありました。
その彼とは、とある車好きが集まる喫茶店で知り合ったのですが、
私もその喫茶店の常連だったのです、客同士が仲良くなれるような、
良い雰囲気の店でした。まあ今も昔も、その年代はそういう場所に
たむろしたがるもんです。
丁度、彼と話をしていた時に、今からウルトラ・ライトプレーンを
飛ばすから見に来ませんか?という事で、何も分からないまま、
飛行場についていきました。飛行場と言っても、300m程度の
滑走路らしきものがあり、そこ以外は草が繁茂する
ただの河川敷だったんです。そこには、一人乗りと二人乗りの
計2機の超小型軽飛行機が、駐機されており、周りに5~6人が
いらっしゃいました。一応飛行機の形はしてるのですが、
アルミのフレーム枠に翼は、カラフルなテント地みたいな感じがしました。
主翼は、2mm位のワイヤーでフレームに引っ張って固定されており、
主翼の真後ろには、エンジンとプロペラ、三角形のフレームに
包まれるように固定されている座席が二個、後ろの昇降舵と
尾翼も同じ、テント地のような感じでした。
翼幅、全長共10m位しか無く、こんなのが、本当に飛ぶのか?
そんな印象でしたね。
操縦席といっても左右どちらでも操縦は出来るように、
連動しているのですが、足踏み式のペダルが左右に二個づつ、
あとは、操縦桿が左右の座席前中央に一個づつ、操縦桿を前後に
倒すと後ろの水平尾翼が上下に動き、左右に倒すと垂直尾翼が左右に
動きます。足での操作は右がアクセルで、左はスポイラーと言って
主翼の後ろにスライドして揚力を抜く役目のものを、操作出来るよう
になっていました。
各操作は多分、クランク機構とパラコードのような丈夫な紐で
繋がっていたと記憶してます。
計器類はフレームにバンドで付けてある速度計と高度計、
そして昇降計の3個だけでした。
エンジンを掛けると、バララン、バラランというアイドリング音で、
翼は、振動で、大きく震えていました。
機体は、後ろをロープで繋がれて固定されていました。
エンジンの調子を見る為、少し回転を上げたのでしょう。
真後ろにいた私は、プロペラの風圧で、吹き飛ばされそうになりました。
その人は、固定ロープを外した後、私を呼んでナビ席に座るように
言われましたので、座るとシートベルトをするように、指示され、
4点式のシートーベルトを装着すると、私に飛ぶよ!って…。
驚いている私をよそに、突然、アクセルを全開にしました。
何という加速でしょう!
車の加速なんて比べようも無い程の、Gを感じましたね。
滑走は10秒まで掛からなかったと思います。飛行場の半分位まで来た時、
突然浮かび上がり、その3秒後には、人の顔がようやく分かる位まで
上がっていましたね。1分も掛からずに、高度400mまで上昇しました。
人間の恐怖感とは不思議なもので、高度で一番怖いのは100m位までですね。
何故なら、その高度は、人間の顔、小石など、精細な描写が細部まで
判別できるからだと思うんです。高度400mにまで達すると、もうそんな
精細な部分は、全く見えなくなり、代わりに目の前に映し出されるのは、
雄大な景色そのものなんです。
そんな感傷に浸っていると突然、機は、急激な左旋回、囲いも何もない
機体で、左旋回されると、シートに、シートベルトだけで、
括り付けられている状態なのですから、自分の左側は何にも無い、
真下の景色が映し出され、先程までの雄大な景色など、消し飛んで
何処にもありません。さらに、秒間5mの急上昇、秒間8mの急降下と
ジェットコースターなど、単なる、子供のおもちゃレベルに思える程の
恐怖でした。
何度か、そういう操縦を繰り返したあと、ようやく水平飛行に移った所で、
その人は、私に操縦を代わるよう言ってきました。何度も断ったのですが、
しかたなく、操縦桿を握ると、ゆっくり右に動かすように、指示を
してきました。言われた通りに操作すると、不思議な事に、
自分は真っすぐに前を向いて座っているだけなのに、地面だけが、
右から左にゆっくりと流れていくんですね。あれは実に不思議な感覚でしたね。
それから、左右旋回、上昇、下降を教えてもらいました。
特に、アクセルを踏んでの上昇と水平飛行は気持よかったです。
といっても何れも、操縦桿の動きなんてほんの小さなものだったんですけど…。
操縦桿を握っていたのは、時間にして5分位だったと思います。
再び、操縦を代わり飛行場に帰っきて、着陸となるのですが、
飛行場手前までは、遊覧飛行のようなゆったりした速度だったのに、
着陸態勢に入った途端、アクセルを踏んで、スピードを上げるんです。
後で聞いたら、スピートを上げる事で、横風など吹いた場合などに
対応できるように翼を安定させる為だそうです。
そして、地上1m程度まで、接近した際にスポイラーを踏み、
揚力を減らせ、ストンと実に見事な着陸が出来ました。
このスポイラー、主翼の後部に、開きを作り空気を入れる事で
翼面積を少なくしていたんですね。速度は落とす事なく、揚力だけを
落とす事が出来るという全く理にかなった、仕組みなんですね。
超軽量小型飛行機は、見た目は、頼りなさそうな感じなんですが、
完全に飛行機の機能は備えていた事に感心しましたね。
あとがき
若いから出来る、挑戦するチャンスが来たからやってみる、今なら出来る。
表現はともかく、体験できるチャンスがあれば、何にでも挑戦して頂きたいですね。
特に若い方には…。
それと、写真は今の時代のようにスマホでお手軽にという時代でもなく、
何も残っていなかった為、Google Earthで飛行場の雰囲気だけでもと
添えさせていただきました。
ただ、今でも、記憶には鮮明に残っている貴重な体験でした。