
よく、トヨタ等の輸出企業が、消費税の還付を受けてずるい!とい声をきくが、果たして本当だろうか。消費税の仕組みを考えながら、その誤解を解いていきたいと思う。
そもそも、消費税をだれが負担するかというと、クルマを買う我々消費者である。クルマの本体価格が500万円だとすれば、それに税率10%(50万円)をオンして550万円をディーラーに支払うことからもそれはおわかりだろう。ではその消費税分50万円を誰が国に納めるかというと、消費税を預かったディーラーである。
しかし、ディーラーが50万円をそのまま納めるか…といわれると、そうではない。ディーラーはメーカーからクルマを仕入れるので、仕入れ価額が440万円(消費税が40万円)だとすれば、売上げた消費税50万円から仕入れた消費税40万円を支払った残りの10万円を国に納めるのである。
それではメーカーはいくら納めるか…というと、ディーラーへの売上に係る消費税40万円から下請け業者に支払ったコスト(300万円と仮定しよう)に対する消費税30万円との差額10万円を納める。つまり、流通過程全体で消費者が負担した消費税50万円になるように負担する形がとられているのだ。
消費税にはもう一つルールがあり、「最終的な消費地で課税される」という国際的な決まりがある。例えばドイツに輸出した場合は、現地の消費者が消費税を払うのである。
すなわち、日本から輸出してしまった場合、日本は課税する意味を失ってしまう。最終消費地がドイツだからだ。
上記の例で考えてみよう。メーカーが国内でディーラーに売る場合は消費税40万円を受け取れたが、輸出した場合は消費税が課されないため、40万円は受け取れない。しかし、製造過程で下請け業者等に支払った30万円については、すでにメーカーが輸出した場合、その段階では生産過程で支払ったコストに対する30万円の消費税は、メーカーがすでに支払ったままだ。
日本の消費者に転嫁できないのに、メーカーが支払った消費税30万円だけが宙に浮いてしまう。そこで、その宙に浮いた30万円を国はメーカーに還付するというやり方をとっているのだ。
企業にとってみれば、一般的に消費税というのは「預け金」「預り金」という性格でしかない。消費者から一時的に預り、仕入れ先には預けて、その差額を国に納めるか、還付されるか、というだけのことである。還付の仕組みは企業規模の大小にかかわらず、輸出を行うすべての企業にあてはまるものだ。消費税は大企業優遇の「ずるい」と感じるような仕組みではないことをご理解いただければ幸いである。
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2025/06/05 00:07:47