
先日のOASISミーティングで、Sr2のシルバーストーンメタリックのオーナー様に声をかけていただきました。残念にも純正フロアマットに興味をお持ちの、とても謙虚でいらっしゃる素敵な紳士様でした。
そのオーナー様の悩み(というか不思議に思っておられること)があって、それはシルバーストーンメタリックなのに、エンジンルームやボンネット裏が「なんか白い」ということでした。オーナー様は「もしかして再塗装車なのかと思ったけどバルクヘッドにあるプレートの色番号も正確だし、どういうことなのでしょう。これがいわゆるシリーズ2のコストダウンと言われるものなのでしょうか…。」

…と、それはそれは可愛らしく素晴らしい悩みを口にしてくださいました(おそらくシリーズ2のコストダウンの結果だと思われますが、そのお話はまた今度)。
そう、こういう会話の成立こそがロードスターオーナー同士の奇跡の出会いであり、開発陣が望んだオーナー同士のコミニュケーションなのです!(と福田成徳さんが言っていた。)
これは「俺が一番知ってるぞおじさん」と遭遇しても生まれないキラキラなのです!そしてこの瞬間、エクセレントグリーンマイカにしか興味の無かった私のユーノス心に、銀色のユーノスロードスターへの興味の火が着いたのです。
銀色のユーノスロードスター。それは、「シルバーストーンメタリック」しか存在しません。しかも発売から8年間、ずっと販売し続けられたカラーです(これはクラシックレッドかシルバーストーンメタリックしかありませんよね)。
そしてなんといっても、一度もVスペシャルや限定車にも採用されず、しかもSスペシャルにさえ採用されなかった、標準車中の標準車、The most ordinary of the ordinary、の「ザ・ノーマルユーノスロードスター」なのです!

(徳間書店 ユーノスロードスター名鑑より)
よくユーノスロードスターオーナー間で、「歴代ユーノスの中でどのモデルが一番地味であるか」が話されることがありますが、「『Gリミ』じゃない?ジミだけに」とか、「G2リミでしょう、Gリミの2倍地味ってことで」とか、「Rリミのシャストホワイトでしょ」とか、思わずその会話に混ぜて欲しくなるような楽しい話がされる時がありますが、それぞれ限定車ってだけ、まだ華があります。
それに比べてシルバーストーンメタリックはあくまでも標準車!最高に着飾って華を持たせても、「スペシャルパッケージ」という当時人気だったセットオプションが最高でした。
ロードスターのことなら、ものすごく細かいところまで解説されていて、「痒いところに手が届く」と評判の、mizuhoさんの「NBロードスターアーカイブ」でも、「銀色のロードスター」というくくりがないぐらいですものね。
そして何より、カタログ上での扱われ方が良い!
みなさんもEUNOS ROADSTERのカタログは何冊もお持ちだと思いますが、あの何ページにも渡る立派なカタログの中で、シルバーストーンメタリックが登場するのは、最後の方のページのモデル紹介のほぼ1箇所しかないのです。
カタログ内で展開される素敵なイメージ写真も、Bow!さんのイラストも、シルバーストーンメタリックのものは8年間のユーノスロードスターカタログ史の中に一回も出てきません。
…では代表的なものを見ていきましょう。
1989/9 のカタログ。黒のハードトップを装着していてカッコいい!↓
1991/8 のカタログ。銀色のハードトップに変わりました。↓
1992/10のカタログ。銀ハードトップのままですが、ちょっと小さくなっちゃった?でもShop optionsのページに、ディタッチャブルハードトップ(ブラック)(熱線リアデフォッガー付)の装着された写真があります(すぐにクラシックレッドに変わってしまいますが)。↓
1993/8のカタログ。
とうとうハードトップを脱いでオープンになり、ページ上段の主役ポジション獲得!おめでとう!↓
1995/1
ページが横長になり、残念ながら主役交代。↓
1995/10
なんと、アルミホイールからテッチンホイールに!まさに標準車の美しさ、慎ましさを表現してるかのよう。清貧!↓
(ちなみにカタログ内のイメージ写真にはシャストホワイトの写真は増えています。)↓
1997年のSRリミテッドのカタログの有名なロードスターズエヴォリューションのページ。↓

ノーマル車の枠は3つもあるのに全てクラシックレッド。この紙面の中にシルバーストーンメタリックのユーノスロードスターはありましぇん。(涙)
…いかがでしょうか?
8年もの間、ずっとノーマル車、標準車としてカタログの巻末でのみ、その歴史を支えてきたシルバーストーンメタリックのユーノスロードスター。
私がシルバーストーンメタリックのユーノスロードスターに共鳴してしまうのは、これはまさに、VRリミテッド・コンビネーションBと同じく、周りに華がありすぎてあえて取り上げられないという、「地味系」を超えた、「寂しい系」ロードスターだからなのかもしれません。
しかし!ここで起死回生、一発逆転のシルバーストーンメタリック秘話(皆さんご存知だと思いますが)!
なんと、プロトタイプ第1号車はシルバーストーンメタリックだったんですってね。なんかすごいじゃあないですか!

(徳間書店 ユーノスロードスター名鑑より)
ユーノスロードスターのボディ色の決定にあたっては、「マツダ ユーノスロードスター 日本製ライトウェイトスポーツカーの開発物語」に詳しいですが、その中で田中俊治デザイン主査(当時)はイエローの代替案としてホワイトとシルバーを提案した、とおっしゃっています。そしてシルバーは、日本の販売店側からの強い要望で、アメリカと違い1989年9月1日の発売最初から販売されました(アメリカでシルバーストーンメタリックが販売されたのは1990年3月)。
このように、実はシルバーストーンメタリックは一番最初から開発陣にも愛されて、日本の販売会社の人達をはじめ、バブル崩壊後の日本の多くの人に求められ期待されて誕生したモデルだったのです。なんと素晴らしい!
…ちょっと地味な存在だけど絶対に必要な存在で、なんかみんなに愛されている。そんなシルバーストーンメタリックのキャラクターは、そのオーナー様達の雰囲気にも繋がるようですね。
…昨年の中間ミーティングでズラッと並んだ美しいユーノスロードスターを眺めながら、ニト朗さんと語り合っていた時、私が、「うちの仲間にシルバーのロードスターはいませんけど、シルバーのロードスターを美しく維持するのって難しそうですね。」と言うと、ニト朗さんは、「シルバーは特に『黒い』パーツがどれだけキリッと黒いかで随分変わるよね。黒いとこだよね。」とおっしゃって、「なるほど。美とはそういうところなのですね。」という、思い出すだけでもとろけてしまいそうな美しいユーノス会話をすることが出来ました。
…そして想像します。黒いパーツが黙ってても美しく引き立つシュチュエーション、それは雨の日。
「雨に濡れて佇むシルバーストーンメタリックのユーノスロードスター。」
想像しただけで素敵です。
雨の情景がこんなに似合うユーノスロードスターはシルバーストーンメタリックのユーノスロードスターしかないのではないでしょうか…。
(写真に撮りたい!)
と、いうわけで、シルバーストーンメタリックのオーナーでもない私が熱くなって銀色ユーノスロードスターのことを書いてしまいました。シルバーストーンメタリックのオーナー様にとっては、気分を悪くされるような表現、内容もあったかもしれませんが、同じくユーノスロードスター愛を持つ者の思いが溢れたものとして、どうかご理解ご容赦ください。
それでは長いブログに最後までお付き合いいただきありがとうございました。ごきげんよう。