佐渡島　北一輝

今冬に初めて佐渡島に渡り、南端の北前船の根拠地に向かう途中、北一輝の墓という小さい看板を見つけた。


２・２６事件の思想犯で死刑となった人で、語感が良い名だけは知っていた。そういえば、学生時代に通った六本木の生産技術研究所の建物は、２・２６事件の反乱将校が率いた歩兵第三連隊の宿営所であった。


何か縁を感じ、北一輝の「日本改造法案大綱」を買って読んでみた。民衆が長らく苦しむ中、無為無策で私欲と保身が行動原理の特権階級を排除して、国民を大御宝とする天皇が親政すべきとの総論と、１００年後に２億４千万人に到達するであろう日本人を立派に生活させるための具体策が提案されていた。


文中、おかしな認識や主張はないどころか、彼が怒りをもって語る、当時の国内外の憂える状況と特権階級の腐敗ぶりは、昨今の日本と同じではないか。彼が期待した天皇はその特権階級の親玉でしかなかった。結果、２・２６事件の９年後に３００万人の日本人民衆が犠牲となり、僅少な代償として得た全成人投票の議会制民主主義はその欠点だけが機能するようになり、当時の構図が再び顕在化している。

２・２６事件から約９０年、現状を打破するには我々民衆一人一人が賢くなるしかないと強く思う。