![[北米ドライブ 一人旅2002] ~初日(二〇〇二年五月五日)~ [北米ドライブ 一人旅2002] ~初日(二〇〇二年五月五日)~](https://cdn.snsimg.carview.co.jp/minkara/blog/000/014/381/295/14381295/p1m.jpg?ct=b0186d35703b)
いよいよ出発の日である。前の日はあまり眠れなかった。
今回の空の翼は大韓航空である。大韓航空は思っていたよりも快適だった。韓国製のビールを飲みながら昼寝しつつ、劇場公開前の映画("THE MAJESTIC"と"THE SNOW DOGS")を楽しんだ。
成田を経ってから約九時間後、「搭乗機はまもなくロサンゼルス国際空港に着陸致します。」というアナウンスが流れた。アナウンスは三ヶ国語である。
飛行機の小さな窓からロサンゼルスの町並みを眺めた。白い建物が多い。白い建物は朝日を反射すると、きれいに輝くことに初めて気が付く。
小さな窓から見える大きな景色。アメリカ本土に到着である。
機内では韓国人の客室乗務員に「あなたはアメリカ人ですか?」と日本語で質問を受けた。
「いいえ。日本人です。」と日本語で答えたのに、アメリカ人用の入国審査のカードを渡された。
着陸後、入国審査の列に並ぶ。私の前に並んでいた韓国人は入国審査官の前で沈黙を続けていた。どうやら、沈黙を続けていても入国できるようだ。
そして、私の番がまわってきた。
入国審査官は私の出入国カードを見て、「宿屋の欄が記入されていません。どうしたのですか?」と質問してくる。
私は次のように答えた。
「小生、本日の宿屋は決めていないでござる。入国してからモーテルを探そうと思っているんだが、駄目なんだべが?」
しかし、入国審査官は厳しかった。
「貴殿入国時における、アメリカ合衆国の住所もしくは電話番号を持たざる者、是、入国不許可にて候。宿屋を予約した後、再度、入国審査を受ける必要があるでござる。」
空港の電話帳で宿屋を探して電話をかけようとしたが、小銭を持っていないので、公衆電話が使えない。困った。
旅行のガイドブックで見つけた適当な宿屋の住所と電話番号を記入し、再度入国審査を受けたら、あっさりとパスした。宿屋の予約は不要である。
旅はトラブル。
入国後、加減速の激しいアグレッシブな運転の送迎バスでハーツレンタカーのオフィスへ向かった。予約は日本で済ませていたので、「予約確認書」「パスポート」「運転免許証」「クレジットカード」を差し出し、何枚かの書類にサインするだけで借りられた。
この時の係員は非常に陽気だった。
「一日十五ドルで車種のグレードアップしませんか?」
「いいえ。必要ないです。」
「あら、そう。わっはっは~っ。」
さらに
「返却日と返却地の確認をします。おや、ラスヴェガスで乗り捨てるんですね。おお!すご~い。わっはっは~っ。」
直前に並んでいた日本人のお兄さんは、車種グレードアップの申し入れに対し、あっさりと「イエス」と答えていた。ノーと言えない日本である・・・。
私が借りた車は"Ford Taurus"という四ドアセダンである。オプションの"HERTZ NEVER LOST"(ハーッ 決して迷わない) 付きを選んだ。
フォード トーラスはコラムシフトのAT車だった。アクセルは左から二つめのペダル。そして、ブレーキは右から二つめのペダルである。
ドライビングポジションを調整し、一呼吸置いてから車を走らせた。久しぶりに感じる緊張と興奮。
ドライビングに慣れるため、広い道を選んで適当に走ることにした。アメリカの道路は広く、マナーも良かったので非常に走りやすかった。東京も見習うべきである。
適当に走ること約一時間。ドライビングにも慣れたので、目的地のハリウッドに向かった。"HERTZ NEVER LOST"のおかげで、迷うことなくハリウッドに到着できた。駐車場に車を停めて、徒歩でハリウッド観光を楽しむ。
しかし、ハリウッドは期待外れだった。街には期待していたような活気が感じられない。"Walk of Fame","Mann's Chinese Theater"近辺を観光したが時間が余ったので、「グリフィス天文台」(Griffith Observatory)観光の予定を追加した。気の向くままに行動できる点がドライブ一人旅の魅力である。
天文台からはロサンジェルスが一望できた。今更ながら、アメリカに来たことを実感する。
次の目的地として、「サンタモニカ(Santa Monica)」→「サンタバーバラ(Santa Barbara)」の予定を追加した。「サンタバーバラ」へは"ROUTE 1"と呼ばれる海岸沿いの高速道路経由で行くことにする。ガイドブックによると、"ROUTE 1"は世界でも最も美しいドライビングルートのひとつらしい。
落ちかけた陽を浴びながら美しい海岸線を左手に眺め、平均時速八十マイルで「サンタバーバラ」目指して北上した。気分はアウトラン(セガ)である。
走ること数時間。サンタバーバラに到着。高速道路を降りて、郊外を観光した。
サンタバーバラは非常に落ち着いた街だった。のんびりと老後の余生を楽しむには最適だろう。通行人の表情も柔らかい。なお、サンタバーバラ近辺ではスペイン語と思われる言葉のラジオ放送が流れていた。
サンタバーバラ観光を終えたのは午後五時だった。次にするべき事は宿探しである。明日の目的地は「十七マイルドライブ」なので、さらに北上してカーメル(Carmel)近辺の宿屋に泊まることにした。なお、「十七マイルドライブ」観光は当初の予定には無かった。機転が利くので、ドライブ旅行は楽しい。
再び高速道路に乗り、カーメル目指してひたすら北上する。
約一時間走行後、「次の出口にて宿屋・食堂・燃料補給所有り」と表示された看板を見つけたので、高速道路を降りることにした。疲労がピークに達していたため、食料とアルコールの補給及び休息が必要である。
初日の宿はBUELLTONという町の"MOTEL 六"に決めた。一泊四十九ドル。
夕食は宿屋近くのハンバーガー屋で調達した。初めてのドライブスルー。
バーガー屋では一番小さいハンバーガーを注文した。値段は三・九八ドル。約十五オンスのコーヒーと特大ポテトも付いてきた。
夕食は酒が無ければ始まらない。車を走らせ、ビールの調達に向かう。
ビールは宿屋近くのスーパーマーケットで買った。レジで「写真付きIDカードをお願いします。」と言われたので、パスポートを見せた。アメリカでは「酒を売る時は必ず年齢確認すること」という法律があるのだろうか?
初日のミッションは無事完了である。明日に備えて躰を休めることに専念する。
部屋ではビールを飲みながらテレビを観ていたのだが、気が付かないうちに意識を失っていた・・・。しかし、数時間後、隣の部屋から聞こえる女性の喘ぎ声で目が覚めた。なかなか激しかった。うらやましい。あぁ一人旅。
五月五日(初日)の走行距離は約四百マイル。