
以前に、Studieのサイトを見ていたところ、E60 M5のMT化について、QAで質問している方がいて、色々注意点があるので直接店舗に連絡してください、との回答を見かけたので、自分でも問い合わせをしてみました。
https://www.studie.jp/questions/180916/
ちなみに、他にもF10 M5や、F80 M3などのMT化などの質問も出てくるので、皆さんやはりMT化が気になるんだなと感じました。
本題に戻って、E60 M5のMT化について、東京店の方は、
・必要なパーツ代だけでも、ものすごいコストがかかるし、MT仕様のパーツが実際に入手可能なのかも、取り寄せてみないと分からない。
・仮に、MT仕様のパーツを組み込めても、DMEやABSなどなどと接続してきちんと作動させられるようになるかやってみないと分からない。
・たぶんStudieでやった例はない。
とのことで、お話のトーンからも、やれる保証もないし、コスト的にもほぼほぼ無理という気配を感じ取りました。(違ってたらすいません)
おそらく、60M5に関してMT化の話題が出てすでに10年以上たっているところ、どこからも成功例を聞かないことから、ほぼほぼ無理なんだろうと思っています。
そもそも、E46M3と違って、60M5のSMGはシフトの並びが通常のドッグレグのように1~6まで順序良く並べられていないので、SMGユニットの改修でMT化ができず、SMGユニットを捨ててまったく別のMTユニットに載せ替えないとならず、US仕様にしかMTミッションが存在せず専用品なので、MT化にはべらぼうなコストと手間がかかります。
しかも、USでMT仕様が導入されたのは、2007年式以降のLCIモデルからなので、MT化するにも、まずLCIモデルを入手しないと、そもそも、ミッションから出すシフトレバーのトンネルや、第3のペダル(クラッチ用)の取り付け、クラッチラインをエンジンルームに出すルートなど様々な工作を一からする必要があるのでは、と勝手に推測しています。
と言いつつ、それではロマンがないので、無理を承知でこれまでにリサーチしてきたMT化のコストをシミュレートしてみました。
・US専用60M5用MTミッションユニット
(諸説あり、他のモデルで類似と思われる型番のものが存在するものの、取り寄せてみて合わないとなると大変なことになるので、やはり専用品で検討)
すでに、No Longer Availableと表記されるサイトもありつつ、M6用がTurnerで1万ドルちょい($10453.99なので156万くらい)で販売。恐らく、木枠梱包などにより船便等で送ろうとすると、重量は100Kgを超えてくると思われ、関税や輸入消費税もかかるので、結局トータル200万円以上と推定。USMTは台数も限られているので、中古出物もほぼ無いのでは?
・MT用クラッチ、MT用フライホイール、ドライブシャフト等のMT用交換パーツ
ドライブシャフトは、SMGとMTとでミッション全長が変わってくるので、SMG用のドラシャは使えないようです。
上記いずれも、M5、M6のUSのみMTという極めて少数のモデル専用のものなので、海外で探しても非常に高いです。
クラッチ1500ドル、フライホイール2500ドル、ドラシャはすでに供給中止のようで、値段のあるところを見つけられませんでしたが、昔調べた時はやはり2000ドル以上していたので、これら準大物パーツだけで100万円以上、他にこまごましたクラッチシリンダー、ペダル、ペダルステー、各種シール類・同時交換油脂類等を入れて送料・関税、日本に来てからショップまでの送料などなどを合わせると、結局200万近く見ておく必要があるかと思います。
そうすると、必要部品類をまず準備するのにすでに400万円近く、これにLCIモデルのM5を準備するのに、現在の相場だと450万くらい?ということで、いわゆるハードをそろえるだけで850万円。
しかし、ここからが未知の領域で、SMGを下ろすのは当然として、エンジンもおろすに近い状態で、さらにクラッチラインを通したり、クラッチペダルを取り付けたり、MTミッションをくっ付け、シフトノブを通してみたりのハード取り付け作業を手探りで行い、最後にDMEやABSなどと電機的整合性をしっかりとった上にきちんと作動させてやり、かつ、イモビが作動してエンジンがかからなくならないような制御をおこなわないといけないので、ここの部分を50万でやってくれ、というのは全く無理な話になるでしょう。
そもそも、SMGのクラッチ交換だけでも、普通は25万とか(善意でもっと安くやってくれるショップもありますが)取られる話なので、未知の作業で時間もかかり、リフトも長期で占領することを考えると、今のご時世、安くとも150万くらいは払ってあげないといけないのではないかと思います。
さらに、仮にここまで出来たとして、次にやらないといけないのは構造変更の申請です。
これをやらないと違法改造、次回車検が通らないために公道走行ができないということになります。
この構造変更による公認車検の取得ですが、前に並行輸入を行う業者さんに聞いてもらったところ、この部分の申請だけで(車検の全取得ではなく)40~50万かかるとのことでした。
高額になる理由は、強度証明だとかなんだかんだと、とにかく手間がかかり、陸運に何度も行って色々な書類や写真の提出を求められ、確認を受けないといけないから、ということのようです。
この辺も、逆にドリ車などの公認申請慣れしているショップならもっと安くやってくれるのでは、と思ったりもしますが、なかなか重量級の外車での申請を行ったことのあるショップはほとんどないと思うので、逆に自分で色々な資料を見つけられないと断られる可能性があるのでは、と考えています。
以上をトータルして、雑にフルスペックのコストをただ足し合わせると、ベース車を含めて1050万円くらい、しかもこれだけコストをかけて電制デバイスなどを含めてきちんと作動する保証はない、という試算になります。
あと、もう一つ重要な問題があり、そもそもこういう面倒な作業をこころよく請け負ってくれるショップが、私の周りには一つもないというのがこの計画の一番の障害でしょうか。
過去の雑誌を見ると、かつてはいくつかの老舗のショップが、もっと古いモデルのMT化に挑戦していた記録がありますが、すでに廃業してしまったとか、もうやりたくない、というご反応をされます。
やはり、一番はコストがかかるのに、頼む方は、とにかく安く!普通のモデルは本国MTあるじゃん、なんて無理ばっかり言うからお金を取れないというリアルな現実があるんでしょうね。
ということで、以上、かなり雑な知識で根拠も乏しい試算ですが、46M3なら50万でMT化できるじゃん(ネット情報だけで未確認)という軽い気持ちでV10 MTとか言ってはいけないということを再認識しておきます。