クルマ好きなら、誰にでも一台くらい「いつかは乗ってみたい」と思うクルマがあるのではないでしょうか。
私にとって、それはGTRでした。
そして今から振り返ると、私はそのクルマを手に入れるまでに、20年以上もかかりました。
1.GTRという存在
話は、私が中学生、高校生だった頃までさかのぼります。
私の亡き父は、セダンからスポーツカーまで何台も乗り継ぐ、大のクルマ好きでした。
そんな父の影響もあって、子供の頃から「スカイラインGTR」という名前は耳にすることがありました。
当時はちょうどR33GTRが登場した頃。
今のようにインターネットで何でも調べられる時代ではありません。
それでも、「GTRという、とにかく速いクルマがある」ということは子供ながらに知っていました。
街中でR32やR33を見かけると、なぜか少しワクワクする。
それが私にとってのGTRの原点だったように思います。
やがて18歳になり、自動車免許を取得しました。
自分でクルマを運転できるようになったことで、それまでとはまったく違う世界が広がりました。
当然のように、クルマへの興味もどんどん強くなっていきました。
そんな私にとって、決定的な存在となったのがR34GTRです。
1999年、R34GTRが発売されました。
鮮やかなベイサイドブルー。
R32、R33から受け継がれたGTRの血統。
当時の私にとって、それはまさに「特別なクルマ」でした。
ただし、価格も特別でした。
新車価格は500~600万円。
当時の私はまだ学生。
欲しくても、どう考えても買える金額ではありません。
「いつか、乗ってみたい」
そう思いながら、ただ憧れるだけでした。
2.買えるようにはなったけど・・・
やがて就職し、自分でお金を稼ぐようになりました。
貯金も増えていきました。
R34はすでに生産終了して新車では買えなくなっていましたが、中古車なら、頑張れば手が届くところまで来ていました。
「あれ? もしかしたら本当に買えるんじゃないか」
そう思ったこともあります。
でも、結局買いませんでした。
これからまだ長い人生がある。
そんな大金をクルマに使ってしまって、この先大丈夫なのか。
そう考えると、どうしても最後の一歩を踏み出せませんでした。
今思えば、私はクルマを買うことよりも、「買った後の人生」のほうを心配していたのだと思います。
そして、そうこうしているうちに、次のGTRが登場します。
3.R35GTRという衝撃
2007年、R35GTRが発売されました。
当時、国産車のハイパフォーマンスモデルといえば、280馬力前後というイメージがまだ強かった時代です。
そこに登場したR35GTRは、なんと480馬力。
「日本のクルマで、こんな性能のクルマが出てくるのか」
衝撃でした。
R34GTRに憧れていた私にとって、そのさらに上をいく性能を持ったR35は、当然のように気になる存在になりました。
いつか欲しい。
そう思いました。
でも、ここでも私は買いませんでした。
「800万円は高いな……」
「MTじゃないし……」
「維持費も大変そうだし……」
理由はいくらでも出てきました。
そして、時間が経つにつれて、その理由はどんどん増えていきました。
モデルチェンジのたびに車両価格も上がっていきます。
「もう少し安くなったら」
「今はまだ買う時期じゃない」
「もう少しお金に余裕ができてから」
そうやって、自分自身に言い訳をしながら、結局買わないまま20年近くが過ぎました。
4.結局、買えなかった・・・
そしてある日、GTRの販売終了が発表されました。
そのニュースを見たとき、最初に思ったのは、
「結局、買えなかったな……」
ということでした。
R34の頃からずっと憧れていた。
R35が出てからもずっと欲しかった。
それなのに、20年近く経っても、私は一度もGTRを所有していませんでした。
もちろん、GTRがなくても生活はできます。
他にも魅力的なクルマはいくらでもあります。
「GTRじゃなければ困る」なんてこともありません。
それでも、なぜか諦めきれませんでした。
そして、ふと考えました。
私はもう45歳です。
これから先、あと何年クルマを思い切り楽しめるだろう。
あと10年、20年もすれば、今よりもっと余裕を持ってGTRを買えるだけの資産を作れるかもしれません。
でも、そのときの自分はどうだろう。
今と同じように、GTRに乗りたいと思っているだろうか。
体力は?
生活環境は?
そして何より、クルマに対する情熱は?
「お金が貯まったら買おう」
そうやって先延ばしにしているうちに、今度は「買えるけど、もう欲しくない」という日が来るかもしれない。
そう思った瞬間、急に時間が惜しくなりました。
5.今しかない
電動化の波が押し寄せ、純粋なエンジン車そのものが少しずつ特別な存在になっていく。
そしてGTRは、もう販売終了が決まっている。
もしかすると、純エンジン車としてのGTRを手に入れる最後のチャンスなのかもしれない。
若い頃には決断できなかった。
でも、45歳になった今だからこそ、ようやく分かったこともありました。
人生は、いつまでも「いつか」が続くわけではない。
「いつか買おう」
「もう少し余裕ができたら」
「今じゃなくてもいい」
そうやって先送りしていると、その「いつか」は永遠に来ないかもしれない。
だったら、今買おう。
そう決めました。
他県の中古車店まで足を運び、実車を見ました。
そして、その場で購入を決めました。
即決でした。
6.GTRを買ったことを後悔しているか
もちろん、身の丈に合っていないと思われるかもしれません。
計画性がないと思う人もいるでしょう。
維持費まで考えれば、決して余裕を持って所有できるクルマではありません。
それでも、後悔はありません。
なぜなら、私にとってGTRは単なるクルマではなかったからです。
街中で見かけるたびにワクワクしたR32やR33。
免許を取って、憧れ続けたR34。
そして、2007年に登場して衝撃を受けたR35。
そのすべてが、20年以上の時間をかけて一本につながったような気がしています。
45歳になった今、ようやくそのクルマが自分のものになりました。
ずっと欲しかったクルマです。
だから、今は素直に思います。
買ってよかった。
7.もっと早く買っておけばよかった
ただ、ひとつだけ心残りがあります。
もっと若いうちに買っておけばよかった。
後先のことなんて考えず、あの頃の自分の気持ちに正直になっていれば、もしかしたら人生は大きく変わっていたかもしれません。
20年前の自分に戻れるとしたら、きっと迷わず買うでしょう。
もちろん、当時の自分には当時の事情がありました。
お金の不安もあった。
将来への不安もあった。
だから買えなかったことを責めるつもりはありません。
でも、今だからこそ分かります。
人生には、「いつか買えるようになったら」という時期と、「今買わなければ二度と買えないかもしれない」という時期があります。
GTRを買ったことで、私はそのことを身をもって知りました。
今日という日は、これからの人生の中で一番若い日です。
やりたいことがあるなら、いつかではなく、できる範囲で今やってみる。
後悔しない人生というのは、何も失敗しない人生ではなく、
「あのとき、やっておけばよかった」
を少しでも減らしていく人生なのかもしれません。
20年間憧れ続けたGTRを、私は45歳でようやく手に入れました。
これからは、このクルマと一緒に過ごせる時間を大切にしたいと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。