
サクラさんにおける急速充電について考える「サクラさん 急速充電考」シリーズ、今回は「充電コスト編」です。宜しければシリーズのまとめもあわせてご覧下さい。
前回の記事では、サクラさんの急速充電における「45%の壁」について考察しました。SOC(充電残量)が45%付近までは最大能力である30kW(定電流:CC充電)で電気が入るものの、それを超えると徐々に出力が落ちていく(定電圧:CV充電)という結論でした。
今回は、その充電効率の変化が充電コストにどう影響するのかを、具体的なサービス料金を交えて検証してみたいと思います。
比較対象のラインナップ
現在、サクラさんの運用で現実的な選択肢となるサービスとして、下記を比較してみます。
| サービス名 | 課金方式 | 基本料金(月額) | 利用料金 |
|---|---|---|---|
| eMP(ビジター) | 分課金 | 0円 | 55.0円/分 |
| eMP(会員) | 分課金 | 4,180円 | 27.5円/分 |
| ENEOS(プレミアム) | 分課金 | 2,200円 | 22.0円/分 |
| Go Charge | 従量課金 | 0円 | 89.99円/kWh |
| eMP(従量課金) | 従量課金 | 0円 | 110.0円/kWh |
ここで注目したいのは分課金のサービスです。分課金の世界では「同じ1分間でどれだけ多くの電気をぶち込めるか」によって、実質的な電気の単価が激変します。
サクラさんにおける「1kWhあたりの実質単価」を算出する
サクラさんの最大受電能力は30kWです。これを1分間あたりの電力量に換算すると、30kW ÷ 60分 = 0.5kWh/分 となります。この数値を元に、分課金サービスを「1kWhあたりの単価」に換算してみましょう。
| サービス名 | CC充電区間(~SOC45%)※30kW受電時 | CV充電区間(SOC60%付近)※推定20kW受電時 |
|---|---|---|
| eMP(ビジター) | 110.0円/kWh | 165.0円/kWh |
| eMP(会員) | 55.0円/kWh | 82.5円/kWh |
| ENEOS(プレミアム) | 44.0円/kWh | 66.0円/kWh |
| Go Charge | 89.99円/kWh(固定) | 89.99円/kWh(固定) |
| eMP(従量課金) | 110.0円/kWh(固定) | 110.0円/kWh(固定) |
基本料金無料の「eMPビジター」を利用した場合、最も効率の良いCC充電区間であっても、1kWhあたり110円という非常に割高なコストになります。さらに、充電出力が20kWに落ちた状態では1kWhあたり165円にまで跳ね上がります。
一方で、入った電気量に対してのみ支払いが発生する「Go Charge」や「eMP(従量課金)」のような従量課金サービスは、充電後半で出力が落ちてもコストパフォーマンスが悪化しないという明確なメリットがあります。
基本料金の「損益分岐点」を考える
実質単価の安さで目を引くのが会員向けプランですが、ここで忘れてはいけないのが「月額基本料金」の存在です。どの程度充電すれば、この基本料金の元が取れるのかを計算してみます。
ここでは、ENEOSは基本料金無料の「シンプルプラン(49.5円/分)」を、eMPは「ビジター利用(55.0円/分)」をそれぞれ比較対象として損益分岐点を割り出します。
結論:サクラ使いの賢い立ち回り
以上の計算を踏まえると、サクラさんの急速充電運用におけるコスト面での最適解は以下のようになります。
高出力な充電器のスペックをフルに活かせないサクラさんだからこそ、各充電サービスの課金方式と自車の充電特性(45%の壁)を理解しておくことが、賢い運用に繋がるという訳ですね。
おまけ
当方はサクラさんを主に横浜市内で使用しているのでGo Chargeのスポットは射程圏内にあります。と言うことで、実際にこの記事の通りに「普段はENEOS Chage Plus」「満タン必須のときはGo Chargeかエネチャージ等で普通充電」と運用しています。
で、ENEOS Charge Plusもちゃんとプレミアムプランを契約しているのですが、正直サクラさんでプレミアムプランは馬鹿らしすぎて話になりません。PHEVプランって何だよ。サクラさん、アウトランダーPHEVよりバッテリー容量少ねーんだぞ。それで満額払わされるのさぁ、酷くない?
せめてバッテリー容量で区切るとかさぁ、何とかならんかね。いや、正直サクラさんならPHEVプラン契約しててもバレないと思うけどね。うん、絶対バレない。ただ、分かってるけどやってませんよ。ちゃんとプレミアムプラン契約してる。なんならENEOSでんきも使ってる。
・・・これ、何とかなりませんか?>ENEOSさん

サクラさんにおける急速充電について考える「サクラさん 急速充電考」シリーズの充電効率編です。宜しければシリーズのまとめもあわせてご覧下さい。
セル構成について
BEVのリチウムイオンバッテリーは、セルと呼ばれる小さい電池のような物の集合で出来ています。サクラさんの場合は全体で96セル(16モジュール)構成で、例えばSOCが20%の時には1個1個のセルの容量が20%になっています。全体の8割のセルを使い切っているとかではありません(と言う風に制御されています)。
さて、サクラさんのバッテリー電圧は公称最大350.4Vとされています。じゃあ、1個1個のセルが350Vも出せるのか?と言うと当然そんな訳はありません。96個のセルを直列で並べて高電圧を実現しています。350.4を96で割るとぴったり3.65Vですから、放電時はセル1個1個の3.65Vを元気玉のように集めて頑張っていることになります。微笑ましいですね。
なお、より大容量な他の多くのBEVにおいてはセルは並列構成になっています。例えば、リーフ(ZE1)の場合は標準モデルは192セルで96セル×2並列、e+の場合は288セルで96セル×3並列の構成です。
CCCV充電
BEVと言うかリチウムイオンバッテリー全般に言えるのですが、リチウムイオンバッテリーを充電する際にはCCCVと呼ばれる充電制御が使用されます。この方式では、一定のSOCまではCC充電が、それを超えるとCV充電が使われます。
CC充電はConstant Currentの略で、和訳すると定電流充電となります。この状態はセルの充電電圧が最大値に達していない状態なので、セルに対して全力で充電電力をぶち込むことが可能となり、SOCもぐんぐん増えて行きます。これを、セルの充電電圧が一定の値になるまで続けます。
CV充電はConstant Voltageの略で、和訳すると定電圧充電となります。セルの充電電圧が最大に達した後は、それ以上電圧が上がらないよう制御された状態での充電に移行します。電圧維持のため充電の進みに対して充電電流は徐々に減少し、充電が遅い状態となります。
EV-tech.jpさんのサイトからの引用ですが、図にするとこんな感じになります。
要するに「充電効率」について考えるときには、以下の2点がポイントとなります。
・どの程度のSOCまでCC充電が出来るか
・CC充電自体の性能
CV充電の区間では充電効率が指数関数的に低下して行くため、特に効率と言うか速度の点でここ含めることは正直あまり意味がないです。どこまで全力疾走=CC充電出来るかの方が大事。
もう1点。無制限一本勝負で急速充電された方は「最後の方、全然進まないんやが」と思ったはずですが、これは仕組みからすると当然そういうもの、となりますね。ただし、最後の2%程度は少し違う理由もあります。ここでは割愛します。
どの程度のSOCまでCC充電が出来るか
ここまでは理屈一本でしたが、ここからは実戦ベースの内容が入ってきます。あくまでも当方の限られた環境・回数に基づきますので、皆さんの環境では異なる部分があるかもしれません。予めご了承下さい。
で、CC充電がSOC何%まで続くかですが、どうやら45%あたりのようです。昨年の暮れから今年の頭にかけてENEOS Charge Plusで充電した10回ちょっとの結果をChatGPTに整理して貰ったのですが、充電終了画面の「開始時○%、終了時○%、充電時間○分」から推定したSOC%ごとの電力量の推移はこんな感じでした。

縦軸がkWhになっちゃってますがChatGPT曰く360V想定で70Aでの定電流充電(なのでグラフ表記は0.42kWhで一定)だそうで。この数字、ちゃんと計算すると少し変なのですが、ただこの45%のところまで続いている所がポイントで、SOC45%までは全力疾走と言う結論自体はそれで良さそうです。
確かに体感とそう大きくはズレていない気がします。実際には60%位までは実用範囲とは思えるものの、30%とか40%から充電すると10分経ってもなかなか入ってないなぁ、って感じなので。実際には開始早々にCV充電に移行してどんどん遅くなっていたってことなんですね。なるほど。
CC充電自体の性能
サクラさんの急速充電性能、これはカタログにもあるとおり最大30kW(それ以上の充電機でも車両側で制限されます)ですが、この最大値が出るのはCC充電の状態となります。
じゃあ実際どうなっているか。Leaf Spyとかで見ている方は良くご存じだと思うのですが、サクラさんの全力充電中、ざっくりこんな感じになっていそうです。
・充電電流は80Aちょっと(OBD2での目測)
・CV充電中のセル電圧=CC充電の充電終止電圧は4.0V(同上)
これを検算してみると以下の通りで、目視が故のざっくり感はあれど大体合っていそうですね。サクラさんのCC充電中はしっかり30kWの性能が出ていると言って良さそうです。
・セルの充電終止電圧が4.0V×96セル=充電電圧は推定384V
・80Aの電流とすると、電力は384V×80A=30720W≓30kW
以上を元に、またChatGPTに充電時間とSOC%の相関を書いて貰いました。んー序盤そんなに増えるか?とか思うものの、意外とこんなもんですかね。無理矢理満タンにしようとすると1時間と言うのは合っています。従量課金の充電機でやってみましたが、だいたいそうでした。

補足事項
長い記事なので少し雑になってしまいました。いくつか補足です。
まず、理論値ベースで計算した部分と実績から推定した部分(特にChatGPTの出力)に差異がありますが、これは恐らくは極端に寒い時期に充電した実績を食わせているからです。具体的には2025年11月暮れ〜2026年1月頭の実績、計11回を食わせて分析させているのですが、充電時間が夜遅かったりで10度を下回る日が多かったと記憶しています。記事本文と同じ結果をkWと充電時間の関係で書かせると、CC充電の時間帯も25kWしか出ていない計算結果です。これは・・・

サクラさん、リチウムイオンバッテリーの冷媒冷却には対応しているのですが加温には対応していない仕様です。特にバッテリーの温度が10度を下回るとセルの内部抵抗が急激に上昇し結果的に充電性能も大きく劣化するところ、今回食わせた結果の多くは思いっきりこの条件に符合しています。タイトル画像の充電でも「バッテリーの」温度が一桁ですね。
寒い時期はしっかり急速充電の性能が出ないのがサクラさんですが、これは欠点では無くて個性だと強調しておきます。仕様だっつーの。
最後に。サクラさんに搭載されているバッテリーの日産公式による仕様はリチウムイオンバッテリー取り外し ・ 回収マニュアル 日産サクラ(KE0型)に記載の通りです。定格電圧350.4V、96セル構成はここからの引用です。ただ、記事中の各種計算結果・ChatGPTの出力はあくまでも推定です。特にCV後半のあたりはまぁまぁ怪しい気がしますが、何卒ご了承下さい。BMSの細かい仕様なんて公開される訳もないですから、ここは最後まで推測の域は出ません。機会があったら、今度0%→100%一本勝負をデータ取りながらやってみようと思いますが。
おまけ
ところでこのマニュアル、それよりもパック重量192.2kgに目が行ってしまいますね・・・
・・・いやいや、ここは敢えて「不安定になりがちな腰高なトールワゴンの重心を下げる効果がある」と思っておきましょう(強引)。

自宅や駐車場に普通充電の設備がない状況でサクラさんを購入する方は少数派な気がするのですが、当方が折角の少数派ですので急速充電について考えてみたいと思います。
経緯や考え方を書くと非常に長くなりそうなので、先に結論だけの記事を投稿しておきますが、コストパフォーマンスの観点だけを考えると感覚以上に厳しいものがあります。
ポイントのまとめ
・充電効率はSOC45%から急速に低下する(詳細は充電効率編で)
・最も一般的と思われる49.5円/分がペイする可能性はない(詳細は充電コスト編で)
・急速充電主体の場合はガソリン車と大差ないコスト効率(詳細は電費vs燃費編で)
充電効率のポイント
サクラさんはセルの並列度が低い(と言うか直列のみ)のため、充電の早い段階でセル電圧が最大値に達してしまいます。一般的な容量のBEVであればSOC65%あるいはSOC80%前後までは高効率で充電可能なところ、サクラさんはこれがSOC45%で終わってしまいます。
そもそも急速充電の速度自体が30kWに制限されていることも相まって、単位時間あたりに充電可能な電力量は、どのSOCレベルにあっても他のBEVと比べて異常なレベルで少ないことになります。
詳細記事では、具体的な計算で詳しくみていこうと思います。
充電コストのポイント
その充電効率を踏まえた上での充電コストですが、余程特殊な料金体系の急速充電でもない限りは、他の充電方法に対して勝ち目は一切ありません。特にSOCが60%を超えるような充電時間に対しては、時間を買うにしても限度ってもんがあるやろwwwのレベルです。
本気で行くなら5%を切った位のギリで充電ポートへ→20分に設定した上で15分でぶった切る位が高効率なのですが、流石にSOC40%上限で常に過ごすのは現実的ではないでしょうから、詳細記事では代替案についても少しだけ考えてみようと思います。
電費vs燃費のポイント
家庭での充電かつ一頃のガソリン高のと言う条件での比較なら爆勝なんですが、サクラでの急速充電・ガソリン価格が落ち着いた現状での比較となると話が大きく変わります。
詳細記事では、充電コストに関する考察を元に「燃費で言うとどの車と同じくらい?」を状況別にみていこうと思います。比較は燃費をガソリン代に換算して金額ベースで行う予定です。
なお、ユーノスコスモには負けないと思います。勝負ライン低っ。
(各詳細記事は2026年中に順次公開予定です)
・2026/1/10 充電効率編を公開しました
・2026/4/12 充電コスト編を公開しました