
X5のフロントガラスの亀裂のアクシデントは、不運にも、GW直前だったため、フロントガラス交換は休暇明けからの作業スタート。また、ヘッドアップディスプレイ対応のガラスは特注品のようで、入荷に時間がかかったうえに、やっと届いたパーツの質が悪かったらしく、表面の歪みが運転に支障をきたすレベルだったとのことで、再度ガラス交換になったとのこと。結果、ディーラー入庫は10日間にも及びます。その間、担当セールさんが代車を手配してくれていますが、代車といっても、ショールームの試乗車ですから、この間ずっと同じ車を借りられるわけではありません。試乗のリクエストが入ると、車を乗り換えねばならず、ここのところ2~4日毎に車が変わります(セールスさんも、やり繰り大変みたいです)。X5が手元にない間、いろんな車に乗ることができるのは、お客を飽きさせない演出でしょうか、私はすっかりハマっております。
1台目:F10 Activehybrid 5
F10以降の最近のBMWはドライビング・パフォーマンス・コントロールが装備されます。以前、E36にもシフトレバー横に同じようなスイッチがあったのを懐かしく思い出しますが、エンジン回転数によるシフトタイミングをコントロールしていたその頃の代物とはちがって、iDrive画面に映し出されるイメージ図は、エンジン出力からサスペンションまで、ずいぶんインテリジェントなコントロールをしている感じがします。使い方もよくわからないうちは、Comfortモードのままで車の流れに任せて走ります。オプションのエレクトリックダンパーコントロールが装備されていることもあるのでしょうか、かなり乗り心地がよろしいです。Comfortモードでも十分な硬さがあって心地よく、時速100キロを越えようのない首都高では、すべてが完璧にマッチしています。こんなに乗りやすくて、楽ちんなドライブは初体験。年寄りになったら、迷わず選びたい車です。ハンドルはサーボトロニック装備、X5と同じステアリング感覚なので、そう悪くはないです。高価な車なのに、アクティブステアリングが無いのは何故だろうと、ちょっと不思議に思いました(その理由は、後になってわかったきがしました)。
生まれて初めて、BMWのハイブリッドに乗りましたが、モーターだけで走れる場面はそれほど多くないのも事実。あくまで、エンジンのアシストで、燃費を稼ぐのがメインなのでしょう。プリウスのようなエコエコに拘る車ではないようです。ガソリンエンジンそのものは、E92 335iに載ってた6気筒パラレルツインターボN54の進化版、N55B30A-M230(シングルターボ)。流石に借り物ですから、ピークパワーを引き出すことなどできませんので、官能サウンドを聴けませんが、きっと素晴らしいエンジンに違いないでしょう。ちなみにN54エンジンは、フェイスリフトがあったばかりのZ4では、いまだに採用され続けているようですね。
2台目:F10 523i ハイライン
ショールームの駐車場を出てすぐ、あれ?と思いました。Activehybrid5にはなかったアクティブステアリングが、523iには装備されているようで、ちょっとびっくりしました。しかし、それにしてもハンドルが軽すぎ・・・アクティブス・テアリング装備のE92 335iに比べて、ハンドルが異常に軽いのです。自宅に戻ってネットで調べてみたら、これがインテグレテッド・アクティブ・ステアリングなるAWSシステムだと知る。いやいや、ドライバーのステアリングフィール命のBMWもここまできましたか。前輪だけで無く、後輪のキレ角もコントロールしているわけですから、車のコントロールはもはや電子制御の賜物。ハンドル操作はマウス操作のようなものになってしまうのでしょうか。とにかく、車は曲がる曲がるの超オーバーステア。コーナー進入時ハンドルを切るのが遅れがちになっても、ぐいぐい曲がっていきますから、運転が苦手な人でも楽ちんに乗りこなせられるでしょう。一方で、ステアリング操作を愉しむ人間には、ありがたくない機能かもしれません。アクティブ・ステアリングからインテグレテッド・アクティブ・ステアリングへの進化は、これまでとは異なる方向性を目指しているためか、Mモデル同様、排気量やパワーの大きな車には、標準で装備される機能とはなっていないようです。
以前、北京やバンコクでE60に520iというグレードを見かけました。おそらく自然吸気のN42エンジンが載っており、5シリーズには厳しいだろうと思っていました。車は年々でかく、重たくなるトレンドですから、新しい5シリーズにターボになって載せられた4気筒(N20B20B)であっても、荷が重いのではと思っていました。しかし、その予想はあっさりと裏切られました。都内を走るのも、高速走るのも、何のストレスも無いです。素晴らしい。唯一不満を感じるとすれば、アイドリングストップからのスタート。積極的にアイドリングストップして燃費を稼ぐわけですが、信号待ちからのスタート時、若干おいてきぼりを喰らいます。Activehybrid5がブレーキから脚を離すと、すぐにモーターでスタートし、しばらく走り出してからエンジンがかかるのとは違い、523iでは足をブレーキから離し、エンジンがかかってクリープしてから、アクセルを踏みこんでスタートする訳ですから、ちょっとした”間”が存在します。なれてしまえばどうってことのない”間”ですが、これを受け入れられるかどうかで、Activehybrid5に価値を見出すかどうかが決まると言えます。つまり、アイドリングストップして欲しくない時にはエンジンスタートボタン下にあるエンジンオートストップ回避のボタンを、ドライバー自ら押さねばなりません。例えば、交差点の左折時、歩行者が横断歩道を渡り切るのを待つような場面で、にじり寄る様にゆっくりと歩行者をやり過ごしながら左折する場合、完全に車を止めるとエンジンが止まることがあります。エンストさせたみたいでカッコ悪いし、またエンジンがスタートするのに"間"が空いて、左折のタイミングを逃します。なので、こんな時にはエンジンオートストップは回避せねばならず、その手間が煩わしいといえば煩わしいです。その点、モーターがアシストするActivehybrid 5は何も考える必要がありません。それさえ除けば、日常使用の5シリーズには523iの4気筒ターボで十分です。
3台目:E92 320i M Sports
セールスの心憎い演出です。320iクーペのLCIモデル、エンジンは4気筒のN46B20です。コクピットに座った瞬間、かつての335iクーペで過ごした5年の月日を思い起こさせます。セールスに、やっぱスポーツクーペがお気に入りですか?と聞かれて、惚れ込んで乗っていたはずのE92 335iを、いとも簡単にE70 X5に乗り換えてしまったことを思い出し、涙が溢れそうになりましたが、スタートボタンを押して、エンジン音を聞いたところで、車としては、やはり別物なので、センチな気分も深刻にならずに済みました。
今回のGW後半、この代車で箱根に出かけました。2リッター、ノンターボのエンジンですから、高速での追い抜きをかけるにはハンデがあります。追い越し車線をびゅんびゅん飛ばす輩に道を譲りながら、走行車線の流れに乗って走ります。そういう乗り方なら、本当に静かで、居心地のよい車です。履いているミシュランPilot Sports 2 RFTは、ブリジストンのような、路面の状況によって常に何かしら存在感を前面に押し出してくる、”目立ちたがり”のスポーツタイヤとはちがって、地味で目立たない、素直で余裕のあるタイヤでした。好印象です。
箱根を上がる国道1号も、夫婦2人+犬2+荷物程度なら2リッターでも余裕たっぷりです。鼻先が軽いことで、余計に軽々と登っていく印象です。峠をがんがん攻めるわけでなければ、ゆっくりとワインディングを上がる際、335Iクーペだと、アクセル操作でのパワーコントロールがやや難しく、アクセルを空けぎみ、オーバースピードでコーナーをひとつ登ってしまって、慌ててアクセルを戻したとすると、エンジンブレーキがかかって急激に直進力を失い、一方で行き場を失った遠心力のせいで、次のコーナーへの進入はダメダメになりがちです。しかし、パッケージとしてのこの車は、非常に乗りやすいということをあらためて感じました。確かにオーバースペックな18インチホイールではありますが、この車で重いのはそもそも足下だけ。したがって車全体の重心移動が大きくなく、コーナー進入も出口も、自分の思い通りに車を操れます。
体に染みついたスポーツクーペを操る感覚はそう簡単に消えません。鼻先の軽さ、ステアリングの素直さ、スポーツタイヤがもたらすがっつりのグリップ感、どれをとっても体に馴染んだ感覚と共鳴していました。
ひとつ気になったのは、車の至る所にコストダウンの形跡が見られるところです。LCI前の335iクーペだってお世辞にも高級感溢れる車内とは言えませんが、コクピットパーツやシートなど、小さなところまでしっかり作り込まれていましたので、ああ、地味だけどコストかかってるな、という感じはしました。それが320iクーペだと、見るからにプラスチックの成形が安っぽく、実際の質感も貧素なのです。グレードの問題か、LCIモデルでは製造コストを削減しているのかは解りませんが、最も醜かったのは、両ドアのボディとの接合部分の溶接。まるでこれじゃ、軽トラだよ、って感じでした。
4台目:F10 528i M Sports
首都高をSportモードで走行して大失敗。全然ダメです。助手席の嫁は車酔いしました。Comfortモードで走ると、他の2台のF10試乗車と同じく、快適にクルーズできます。M Sportモデルは特別なサスペンションを装備していますが、Sportモード、Sport+モードはワインディングのみ、カントのついた高速道路の高速コーナーには出番なし。カタログによるとオートマチックトランスミッションも、特別なものが載っているようですが、前2車F10ノーマルとの違いを見いだすことはできませんでした。この車にもインテグレテッド・アクティブ・アクティブ・ステアリングが装備されていますので、コーナーでの車の挙動はオーバーステア気味です。
エンジンは523iと同じ形式が載っていますが、60馬力ほど大きく、出力だけみるとX5 35dと同じ245馬力です。だからといって、523iと比べてものすごくパワーを感じるかというと、それ程でも無く、エンジンのアドバンテージを感じる場面がありません。一方で、ガラスサンルーフ付きのこの車は、ハイラインの523iから比べると車体重量は40キロ増。それ程大きな重量ハンデを背負ったわけではないのに、528iはブレーキが随分貧弱な感覚があり、深くブレーキしないと、車がなかなか止まりません。Activehybrid5のサンルーフ付きモデルは、523iに対して230キロの重量増なので、おそらくもっと強力なブレーキが装備されていることが予想され、実際ブレーキはかなりしっかり仕事して、安心感と余裕を感じました。528iの方は、BMWの特徴でもあるよく止まるブレーキという印象が全くありません。残念です。トータルで考えると、528iはバランス悪く,523iはとてもバランスが良いと言えます。
総括:
ということで、以上4台、妻の送迎のため、高速30分+地道15分の同じルートを毎日往復。比較がとてもしやすかったです。敢えてこの4台のなかから将来乗る車を1台選ぶとしたら、ロングクルーズに向いた、そして余裕のあるActivehybrid 5となるでしょう。しかし、実際には523iで十分で、アイドリングストップの問題は、積極的に523iを否定する理由にはならない気がします。E92 320iは・・・やはり335iクーペがよかった。
以上、誤解・偏見たっぷりの試乗レポでした。
Posted at 2013/05/08 22:06:07 | |
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