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2026年04月01日 イイね!

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ず断っておきたいのだが、私は俗にいう「クルマ好き」ではない。

G・コロンボのエキゾーストノートに昂ぶることはないし、新型車のスペックを暗記して講釈を垂れる趣味もない。

走行距離が10万キロを超えようが「壊れたら直せばいいんじゃね?」程度の考えの持ち主である。

それなのに。

なぜか私は、家族の「クルマ問題」の窓口になっている。

先週もそうだった。
夜の9時過ぎ、スマホが震える。画面には「長女」の文字。
普段はスタンプすら返ってこないくせに、この時間に電話とは何事かと思ったら案の定だった。

「お父さん、なんかエンジンかからないんだけど」

場所を聞くと、コンビニの駐車場。
話の内容からバッテリー上がりだろうと推測してジャンプスターターを持って駆けつけると、娘はスマホをいじりながら「あ、早かったね」と一言。
いい気なもんだなっと思ったが、とりあえず無事にエンジンがかかってホッとする。

そのまま「ありがとー」と手を振って去っていく娘の車のテールランプを見送りながら、ふと思う。

なんで俺、こんなことに慣れてるんだろう。

しかもこれが一度や二度ではない。
嫁は「なんかランプ(警告灯の意)がついた」とLINEしてくる。
長男に至っては「もうすぐ車検なんだけど、どうすればいい?」というレベル。
そのたびに私は説明し、場合によっては現地に赴き、時には代わりに整備工場にクルマを預けに行く。
いわば「ファミリー整備士」。
資格はないけど、経験値だけは確実に積み上がっている。

そんな我が家のクルマ事情をさらに複雑にしているのが、私の人間関係だ。

親しい先輩は地元で小さな整備工場を営んでいる。
学生時代からサッカーを通しての付き合いで、お互いの家族ぐるみのつきあいだ。
彼は本物の「クルマ好き」で、休みの日でも誰かのクルマをいじっているような男だ。

「大丈夫、なんとかなるよ」が口癖で、実際、腕は確か。
ただ問題は、彼の工場に行くと必ず2時間は拘束されることだ。
カラダにいいからと出されたルイボスティーをごちそうになりながら、彼の最新の整備自慢を聞かされる。
悪い気はしない。いやむしろ楽しい。
ただ、「ちょっとだけ見てもらおう」と思って行くと、夕飯の時間になっているのはザラである。

そしてもう一人、義理の兄。彼はいわゆる自動車ブローカーだ。
新車も中古車も、法人向けも個人向けもなんでも扱う。
会うたびに「いいクルマあるよ」と耳打ちしてくる。
先日も「珍しいのが入庫したけど、どうする?」とLINEが来た。
珍しいってなんだ?どうするって聞かれても・・・

そんな二人の存在が、私をさらに「クルマ係」に押し上げているのも事実だ。


その結果として何が起きたか。

「お父さん、クルマに詳しいんでしょ?」

という誤解が家族内で確定したのである。

違うんだ。詳しいんじゃないんだ。ただ、詳しい人を知っているだけなんだ。
そのことを先日、妻に訴えてみた。

「俺は別にクルマが好きなわけじゃないんだよ。たまたま知り合いが整備士とブローカーなだけで」

すると妻は、台所で味噌汁を作りながら、こう返した。

「でも、いつも何とかしてくれるじゃない。それってつまり、クルマに好かれてるんだよ」

クルマに好かれている。

そのフレーズが妙にしっくりきた。

確かに、私はクルマを愛しているわけではない。
でも、クルマに関わる出来事はなぜか私のところに集まってくる。
バッテリー上がり、パンク、バルブ切れのような軽微なものから、レギュレーター交換、イグニッションコイル交換、ブレーキパッド交換といった、多少手間のかかるものまで。
それらはまるで渡り鳥のように、季節ごとに私の元を訪れる。

そして私は、それらを処理する。
特別な愛情はないけれど、放っておくわけにもいかないから。

これって、もしかしたら人と人との関係っていうものに似ているのかもしれない。
情熱的に好きで好きでたまらないわけじゃないけど、なんとなく気になって、なんとなく面倒を見てしまう。そして、いつの間にかそれが日常になっている。

先輩の工場でのシエスタは、もう20年以上続いている。
義兄の「いいのあるよ」は、もはや挨拶だ。
子どもたちからの「お父さん、クルマが…」という連絡は、彼らがまだ私を頼ってくれている証拠なのかもしれない。

クルマが好きじゃなくても、クルマに好かれる人生。

それはそれで、悪くないのかもな、なんて思う今日この頃である。

ちなみに今、我が家の駐車場には3台のクルマがある。
すべて私が何らかの形で関わり、そのどこかに私が不器用に修理をしたときの手垢がついている。

私は今でも、新型車のカタログを眺めることはないし、なんならヴェルファイアとアルファードの区別もつかない。
でも、義兄がたまに「これ、ちょっと試乗してみる?」と貸してくれる、古びたポンコツ車のスターターに火を入れる瞬間だけは、ちょっとだけ「クルマ好き」になった気がする。
この距離感が心地いい。


クルマは特別好きじゃない。

でも、クルマを通じて見える景色は結構好きだ。



Posted at 2026/04/01 14:02:55 | コメント(0) | トラックバック(0) | Prologue | 日記

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