その砲は歩兵と共に〜四一式山砲〜

１９世紀後半、各種技術の発達と共に火砲はその性能を飛躍的に向上させ戦場においての有効性を確立していった。



明治維新後近代国家体制を整え欧米列強に対抗すべく軍備拡張を急いだ「大日本帝国」も小銃を始めとした小火器から７５mクラス火砲の国産化を進めた。



日清戦争の勝利と三国干渉を背景に南下を謀る帝政ロシアと対立、明治３７年（１９０４年）から翌年３８年まで後の「日露戦争」が勃発、ここで三〇年式歩兵銃や三一式速射山砲などの国産兵器が実戦投入され活躍。　旅順　洛陽　奉天　数多くの戦いにて多くの兵達と共に戦った。



一応の勝利（まぁ引き分け）をして朝鮮半島や南満州における利権を獲得した。　それをして兵器の性能向上のもと新兵器の開発が行われていた。




日露戦争の主力山砲として活躍していた「三一式速射山砲」


無煙火薬を採用して当時としては優秀な性能を誇り日露戦争の勝利の立役者、しかし駐退復座機はまだ採用されておらず一発撃つごとに大きく交代するためその度にもとの位置に戻さなければならなかった。　それでも黒煙火薬に比べ早く撃てるため「速射砲」となっている。（有坂砲として有名）



日露戦争後この弱点（射程不足、発射速度不足、方向射界皆無）改良した新式山砲の採用が急がれ採用されたのが「四一式山砲」だった。



性能　
制式名称 四一式山砲
重量 539.5kg(歩兵用は535kg
砲口径 75mm
砲身長 1379mm(18.4口径)
初速 352.4m/秒
最大射程 7,100m (九四式榴弾)
俯仰角 -8 - +25度
水平射角 左3.5度、右2.5度
発射速度 約10発/分
使用弾種 十年式榴弾
九〇式榴弾
九四式榴弾
九五式破甲榴弾
徹甲弾
発煙弾
照明弾
タ弾　　　　　　
使用勢力 大日本帝国陸軍　大日本帝国海軍　国民革命軍
総生産数 2000～2500門前後

駐退復座機の採用や射程も伸び「三一式速射山砲」を上回る性能を示した。　特に重量540kg、馬6頭で分解運搬（駄馬）、馬2頭で牽引運搬（輓馬）可能。山砲として開発されたため人力による分解運搬も可能であり、山岳戦や森林・密林地帯で威力が発揮された。また、構造が比較的簡単であるため組み立てや操作が容易であった。-23℃でも使用可能だった。


そして各種帝国陸軍の主力山砲として主に師団砲兵たる山砲兵連隊で運用された。　その後長らくその任を勤め、四一式山砲の性能向上を目指し開発された「九四式山砲」の配備により山砲連隊からは順次更新されていった。

後継の九四式山砲　



しかし更新された四一式山砲は退役はせず。　歩兵砲として改良（大きな点として歩兵用では砲手を防護する防盾（防楯）の横幅が車輪内へと狭くなり（山砲兵用は車輪外へ伸びる幅広）、下部に延伸されている。）されている。





満州事変などの戦訓から歩兵連隊に約４門配備され歩兵部隊の直接支援火器として活躍、「連隊砲」と呼ばれた。その軽量さと分解構造により山岳やジャングルなどの険しい地形等でも展開する事ができ敵の意表をついた攻撃等が出来た。　特に中国戦線の山岳　南方のジャングルなどではその性能を遺憾なく発揮した。




最終的には「タ弾（成形炸薬弾）」を使用して対戦車戦でも活躍、第一線の歩兵とともに苦楽を共にして数多くの戦場でその勇姿を見せ付けた。




終戦後も中国での国共内戦や朝鮮戦争でも使用されて帝国陸軍亡き後も戦い続けその任を全うした。　今でもその姿はあの時と変わらぬ勇士だと思う。