
「野球」と言うよりはまるで「格闘技」。
また「スポーツ」というよりは、
まるで何かの「決闘」のようでした。
研究熱心な性格(元・某メーカーの実験部隊)のところに
野球経験がないことも幸いして、
常識にとらわれず自由に、かつ真摯に、
自分の身体を使ってひたすら実験を繰り返し、
独自の満山流打撃論なるものを築いていました。
野球人からすると、一見突拍子もないスタイルなのですが、
奇をてらったわけではなく、本人は至ってマジメで本気。
1400gもあるバットを使うのは(素振り用でも1100gくらいです)
スイングスピードがどうしても80km/hくらいで頭打ちなので、
飛ばすのはバットに任せようという発想の転換なのでした。
通常は、F=mv²という物理の法則に従い、
スイングスピードを上げて、インパクトパワーを稼ごうとします。
エンジンで言うと、回転馬力を上げるみたいな発想ですね。
が、和尚はバットを重くして(トルクを太くして)パワーを稼ぐ。
さしずめ高回転型の2リッターDOHC直4エンジンに、
7リッターOHVのV8エンジンで対抗するみたいな感じでしょうか。
それはいいとして、バットが重いと振り遅れてどうしようもない・・・
とフツウは考えてやらないのですが、幸い?和尚にはそんな先入観はありません。
クルマの開発と同じように、じゃあどういう風に身体を使ったら振れるか、
どういう風にバットを改造(公式戦ではNGです笑※)したら振れるか、
どんなトレーニングをしたら振れるか(その結果、素振り用バットは2kg!)
諦めずに挑戦し続けて、モノにしてしまったのでした。
重いバットにはメリットがあって、
とんでもないボール球に対して体勢が崩れても、
ミートさえできればホームランが打てるんだそうです。
また和尚のもう一つのテーマ、「どうしたら詰まってもホームランにできるか?」
これを実現するためにも重いバットなんだそうです。
私もこの1400gバットをお借りして打ってみて、実感しました。
その飛びっぷりは、もう異次元。
多少体勢が崩れようとタイミングがズレようと、
当たりさえすれば、あり得ない打球が飛んで行きます。もう笑っちゃうくらい。
どこから踏んでも加速していく、ぶっといトルクのクルマを運転しているみたいです。
そしてこれが「一対一のホームラン対決」では有効なんだとか。
確かに、この点も野球人にはない発想です。
「ボールの見極めが、しっかりできるのがいいバッター」ですから、
悪球には手は出さない習性が身に付いています。
また詰まって打ち損じてしまったら、
自分に落ち度があったと、どこか納得しています。
しかしバッティングセンターでの対決では球数が決まっているし(25球)、
しかも自分の好きなコースにくるとは限らない。
そこで低めのクソボールを、身体を折ってヒザが地面に付きそうになりながらも
ホームランにしたり、差し込まれて詰まってもホームランにすると、
相手が動揺するんだそうです。そしてそのプレッシャーで自滅してしまうと。
まさに実戦第一主義。無手勝流の、いわゆる喧嘩みたいなものですね。
それともう一つ、和尚が常々疑問に思っていることは、
どうせ強打者になればなるほど、ストライクで勝負してくれないのだから、
クソボールでもホームランできる方がいいじゃないか、
だったら重いバットを使えばいいのに、なぜ使わないんだ?・・・という素朴な疑問です。
これにはちょっと衝撃を受けました。だって考えもしなかったことでしたから。
重いバットは素振り用で、実戦で使うもんじゃないって思い込んでいましたから。
でも言われてみれば、これをフツウのバットと同じように使いこなせれば、
多少スイングスピードが落ちたとしても、その分をバットの重量がカバーしてくれるなら、
強打できるゾーンは広がります。
少しでもスイングスピードを上げようとするのと同じくらい、
少しでもボールを見極められるようになろうとするのと同じくらい、
「少しでも重いバットを使えるように」するべきなのかも知れません。
振り遅れに対する罪悪感に支配され過ぎなのかも知れません。
そんなことを発見した、鹿児島のイチローの打撃論なのでした。
そして重いバットを振るには、
体幹主導で振らないと絶対ムリです。まさしくレッシュ理論。
和尚のバッティングフォームもその通りで、
野球のバッティングでありながら、まるで柔道の投げ技のようです。
相手の襟首をギュッと掴み、腕をたたんで相手の身体に自分の身体をつけ、
体幹主導で投げ始め、十分に加速したところで腕を伸ばし、
さらに加速して畳にたたきつける。軽いバットでも基本は同じですが。
それに加え、ボール球でも本気で捉えに行っている姿をみていると、
和尚の頭の中には、たぶん「野球」をしているなどという概念はなく、
単純に「自分を攻撃しにきたボールを強く打ち返す」ことしかないようです。
この1400gバットを操ろうと挑戦するところと、
相手のどんな攻撃にも対応しようとするところが、
格闘技のようだと感じた部分なのでした。
ああ、1400gバットの話だけでこんなに長くなっちゃった。。。
「スポーツ」というより「決闘」については次回。
※バットの改造についてご指摘があり、野球規則を読んでみました。
グリップ側から18インチ(45.7センチ)の範囲は、
握りやすくするための改造はOKなようです。
(1・10 『バット』より)
それと「いかなる方法であろうともボールの飛距離を伸ばしたり
異常な反発力を生じさせるように改造、加工したと審判員が判断するバットを
使用したり使用しようとした場合」は反則行為でアウトになるとか。
(6・06 『バッターの反則行為』より)
あまり細かい例は載っておらず、結局は審判の判断になりそうですが、
昔の車検みたいに、ノーマルからいじったら絶対不合格!というワケではなさそうです。
重さの上限もないので、なんと和尚の1400gバットは試合で使える!?
(草野球はJSBBマークがないとダメなところが多いですが・・・)