
FAE系エンジンのあれこれ
今回エリーゼに採用されたトヨタFAE系エンジンはFE系にバルブマチックを搭載したエンジンです。
バルブマチックとは無段階可変吸気バルブ機構で、BMWのバルブトロニックのトヨタ版です。
スロットル制御をスロットルバルブを使わず(後述しますが、スロットルバルブは一応ついてはいます)、インテークバルブのリフト量で行うため、吸気抵抗が無く、ポンピングロスが少ないと云う特徴があります。(インテークバルブのリフトで吸気量を絞るので、今度はそこで抵抗が発生する為、ポンピングロスが無くなるわけではありません。トヨタの説明では、リフト量が小さくなる事で、入り口が細くなった分だけ空気の流速が上がるので、スロットルバルブより絞り抵抗は少ない。バルブスプリングの圧縮に伴う機械的損失を低減できるため機械的損失が少くなること等含め効果は高い…とのことです。)スロットルバルブの役目を果たすインテークバルブは燃焼室に近いのでアクセルレスポンスにも優れています。このあたりは独立スロットルに似た効果です。
燃費改善を狙っての機構ですが出力面でも改善されています。パワーカーブを見ると、全回転域で同排気量のFE系に比べてトルクがあります。又、6000回転を超えてもパワーが伸びています。
ここまでだと良いことづくしなのですが、スポーツカーに使うにはデメリットもあるようです。
それはこのエンジンが燃費を良くしつつ実用域でのパワーを確保するため、非常に複雑な機構を持っているということです。
FAE系にはバルブマチックに加えデュアルVVT-iも採用されています。この組み合わせで無段階でバルタイ、リフト量制御が可能なので、回転域に合わせたな協調制御を行うことで燃費向上を狙っています。(図 参照HP-http://www.motown21.com/Tech/Trend_27/index.php)この組み合わせはBMWとよく似ています。(ダブルVANOS+バルブトロニック)
又、ロータリー式バルブを使用した2段階切り替え式吸気管長システムを搭載し、低回転、高回転域それぞれで最適な吸気管長を切り替えています。
つまりバルブマチック+デュアルVVT-i+2段階切り替え式吸気管長システムの組み合わせで効果が出ていることになります。
単独での効果はそれほど無いのか、プリウスに使用されている同形列のエンジン2ZR-FXEにはバルブマチックはありません(もともとミラーサイクルだから追加しても費用対効果が期待できない?)
バルブマチックの動作の為、アクチュエータがヘッドに取り付けられています。又、スロットルバルブを使わない為、インテークマニホールド内の負圧が小さくなることから、ブレーキブースター用の電動バキュームポンプが装備されています。又、アイドル時の安定の為、通常のスロットルバルブも残っています。
つまり、ヘッド周りは上記の全てのシステムがある為、大型で重くなっているのです。
結果エリーゼに搭載した場合、1ZZエンジンに比べてヘッドの高さが34mm程上昇したそうで、エンジンフードが盛り上がっています。フィンを廃した理由の一つかもしれません。
又、カムの戻りにスプリングを使用している為、伸縮にタイムラグがあるのに加え、リフト量の幅にも限界がある為、8000回転レベルの高回転域には対応できないようで、同様のシステムを採用したBMWでもMシリーズには使われていません。(日産のVVELでは機構が異なるため、高回転域の追従性が向上しているとのことです。但し、コストと機構の大型さから、大排気量のエンジンにしか採用されていません)
正直、趣味で使うスポーツカーには不向きのように思えます。これなら普通の2ZR-FEを使ったほうが、燃費では劣りますが排気量が大きい分トルクも高いし、整備もチューニングも容易なのですが。ブロックはやや大きくなる(高さが上がる)と思いますが、ヘッド構造が簡単な分軽く、高さもそれほど変わらないでしょうし。今回は最新の技術で今話題の環境対策に積極的に取り組んでいる姿勢を示し、商品性を高めんが為の選択ではないのかな、と思います。
チューナーレベルでバルブマチックの制御をパワー重視のマップで作成できるのなら面白いのですが、可能なものなのでしょうか?
しかし最近のエンジンの何と複雑なこと。文章を書いていても全く自信がありません。どなたかお詳しい方に是非教えて頂きたいものです。
Posted at 2010/02/22 23:16:06 | |
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