Prior investment

先行投資

「あと五十五万円出してくだされば、御宅の息子さんが志望校を受験出来るくらいの学力が上がる可能性が出てくるかもしれません。お父さん、ご決断を！」

塾の狭い懺悔部屋の様な所に押し込まれ、過去のデータと、未来予想図を見せられ、向こう側が考える厳しい現状と明るくなるであろう未来を語られる。

丁寧な言葉を紐解くと…
「あんたの息子、アホでっせ、金払えば何とかなるならもしれませんけどな。」

帰り道、息子に問う。
この金を回収出来るのか？
塾での勉強にお金をつぎ込むのではなく、他にやりたいことは無いのか？
バイク買って、日本一周をしないか？
高校も休学して、アジアを歩いて来ないか？
オーストラリアやアメリカの知人を頼って、一年くらい働きに行かないか？
この金を基本にして株式投資の勉強をし、長期的に儲ける力を付けないか？

それでも塾に行かくのが今は一番良い選択だと言う…
変わった男だ…

嫁はんが春から稼いだお金を全額つぎ込み、ここに投資を決定した。
この投資が回収されるのは、彼が自分で稼ぐようになってからか…

「まあ、やりたいことやりなさい。」
嫁はんの泰平な言葉に改めて舟を漕ぎ出す我が家である。