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かづのりのブログ一覧

2013年08月04日 イイね!

日本の少年よ、風は吹いているか

先日、初めて職場で「風立ちぬ」を観てきたという同僚と
会話を交わしました。
部署が違うので、それほど親しい同僚でもないのだけれど、
「どうでした?」と訊かれたので
「私個人としてはとても良かった」と答えましたが
どうも、その人は「何が良いのかわからなかった」とのこと。

前回書いたように、賛否両論あるとは思っていたし、
やっぱり、それが素直にこの映画の評価なんだな。と思ったけれど、
続いて「どこがそんなに良かったんですか?」と訊かれて困りました。

どこが良かったとか、そんなこと説明できない。
私が良かったと思ったのは、…というか“思った”んじゃなくて
“感じた”のは、理由も分からず良い意味で“泣けた”映画だから、
ということくらいで、
自分でも理由が分からないんだから説明のしようがない。

とにかく感じたのは、「いい映画だ」ということであって、
それは、登場人物がいい人であるとか、監督の思想が素晴らしいとか、
正しい教訓を含んでいると読めたとか、そんなことは無い。全く無い。
むしろ逆だから、ちょっと人間臭くて、そこが逆にイイ。と感じたのかもしれない。

あんまり作品を難しく論じたり、勝手に分析したりするのは、
鑑賞後の読み物としては好きだけれど
上映期間中は誤解を招くので自分は考察めいたことを
書くべきではないかなと思っていて、
きっとそれはそうなんだろうけど、
先日既に「良かった」と書いてしまったわけで。
後で「どこが良かったんですか!」と言われても困る(?)ので、
そんな単純に「所謂お涙頂戴のイイ話」だとは私も思っていないことを
言い訳しておいた方がいいかな、と思いました。

本当はもう一回観に行ってから、改めて書いた方がいいんだけど、
盆辺りまで観に行けそうにないので、
あくまで今“ムツカシク穿って観ると、そうとも思える”レベルで
「風立ちぬ」のネタバレ感想を書いておこうと思います。
もうすでにどこかで同じようなことが
たくさん書かれているかもしれないけれど、
私は映画レビューで星とかつけている人の
数行感想程度しか読んでいないので、
「そんなのみんな言ってることじゃん」と思われたら、
ああ、ここにも同じ考えの人がいたな、
と苦笑いで許してやってください。

以下ネタバレ。


あの映画の主人公=フィクションとしての堀越二郎さんは、
決していい人ではない。
自覚なくジコチューな人だ。

最初に違和感を持ったのは、冒頭の
「二郎少年が自宅の屋根から小型機で飛び立つ」シーン。
あんな特徴的な風切羽のついた鳥形飛行機を少年が操作して、
川の水面ギリギリを超低空でかすめて飛び回っているのに
川岸にいるおっちゃんとか集落の人が全くリアクションを示さない描写。
あれ?みんなには“猫バス状態”で見えてない?
それとも、そんな飛行機は当たり前の世界だから誰も驚かないのか?
あれ?これってファンタジーじゃなくてリアルな昭和
…あ、まだ大正か…が舞台だよね?
~と思っているうちに、紡績工場?の女工さんだけは
歓声を上げて手を振ったり見送ったりしている。
なんだ、やっぱり見えてんじゃん
ってところで、直後「夢オチ」だったと分かるんだけど、
このリアクションの違いにちょっと混乱。。。

次に違和感を持ったのは、少年声の声優さんから
突然変声した庵野声w
…というのはさておき(^^;

圧巻の大震災の描写の後、二郎の学校に計算尺が届けられるシーン。
あの時、二郎さんが思い浮かべたのがヒロイン=菜穂子ではなく
彼女の侍女らしき「お絹さん(だっけ?)」だということ。
そして軽井沢?の保養地で再会した時には
「あっ、あの時の…」とすっかり忘れておいて、
求婚のシーンでは都合よく
「帽子を受け止めてくれた時から」好きだったと
のうのうとぬかす二郎さん(^^;
この辺り、「私もだ。いつもカヤを想おう」と約束しておいて
直後もののけ姫サンに一目惚れし、カヤから託された玉の小刀を
あっさりとくれてやるアシタカの如しw

それを、全く悪気なく自覚なくやっている。

ここで、ああこの人は単に女好きなんだな、と。
女好きと言うと語弊があるけど
要するに飛行機に限らず「美しいもの」だけが
好きなんだな、と。

上で二郎さんは「いい人」ではないと書いたけれど、
決して悪い人ではない。
ジコチューな人だけれど自覚はしていない。
むしろ本人は自分が「いい人」だと思っているのかもしれない。
いじめられている下級生を助けてみたり、
汽車で席を譲ってみたり、震災で人を助けてみたり。
すごく「いい人」だ。
そして子守の少女に“シベリア”をめぐんでやろうとして
友人に「そりゃ偽善だ」とツッコまれ、
「違う!…いや、そうかもしれない」と
根本では自覚のない二郎さん。
ことあるごとに「薄情者」だと妹に言われているけれど、
やっぱり自覚は無い二郎さん。

美しい婚約者のことは大好きだけど
美しい飛行機の夢も追いかけたい。
療養所に手紙は書くけれど見舞いには行けずに
設計室で笑顔を交えた勉強会に興じてしまう。

重病の婚約者が決死の覚悟で療養所を抜けて来たのに
名古屋駅のホームで迎えるシーンでも、
「見つけられなかったらどうしようかと思った」と
あくまで自分目線な二郎さん。
「ひと目会えたらすぐ帰るつもりだったの」に
「帰らないで。ここで一緒に暮らそう」と引き止める二郎さん。
嗚呼ザンネンな二郎さん。実に残念。
残念だけど、そこが素直でイイ。

とにかく「美しいもの」が好き過ぎて、
美しい嫁は大好きだけれど美しい飛行機の設計はやめられないから
見舞いにも行けないし、
上司に「君のは愛情ではなくエゴイズムじゃないのか」と
まさにその通りなことをズバリ!ツッコまれても
それでも一緒に居たいと我が儘を言う。

素直に好きな一心で他意はないから、
重症結核患者の嫁の隣で煙草もふかせるし
そのかわり「うつります…」と言われても気にせず
キスもできる。
その時のセリフもやっぱり「きれいだよ」だ。

私はかなりの嫌煙家なので、この煙草のシーンは
なんとも嫌で仕方がなかったけれど、
これが二郎さんなんだな、と一番納得できたシーンでもある。

「君はピラミッドのある世界とない世界、どちらが好きかね」
とのカプローニさんの問いに直接には答えず
「僕は美しい飛行機を作りたいと思っています」と言う。
職を求めて線路沿いを歩く市民を
汽笛で追い立てる機関車に乗り、
銀行の取り付け騒ぎを横目に車で走り去る。
飛行機の開発費で日本中の子どもに天丼を食わせられると聞いても
やっぱり自分はピラミッドの上で飛行機を作りたい。

そんな我が儘でジコチューな二郎さんに振り回されて
可愛そうなだけのヒロインが菜穂子さんなのかといえば、
それもまた違うところが、この映画の良さなのだと思う。

結核患者という、ひと昔前のオヤクソク的にステレオタイプな
薄幸美人の代名詞的な設定ではあるが、
この女性もなかなかしたたかで強い宮崎ヒロインだ。
「お絹は結婚して二人目の赤ちゃんが生まれた」と
さりげなく恋のライバル?を消しておいて、
木陰のキャンバス→堰の小径への誘導w
風と雨という天候を利用した?猛アタック。。。

「私、治りたいの。二郎さんと一緒に生きたいの…」と
悲壮な決意で寂しい療養所に向かい、
そこで手紙を受け取って
「こりゃダメだ。あの人は傍に居なきゃダメなんだ」
と悟ると、今度は文字通り決死の覚悟で山を下りる。

毎朝化粧して頬紅をさして、
「美しいところだけ好きな人に見てもらっ」て
二郎さんの好きな「美しい自分」を限界まで
精一杯演出して、最期は見せずに潔く去っていく。

妹の加代さんは「可哀想」だというけれど、
それは恋をしたことが無いから?

お涙頂戴的に悲劇のヒロインを演じることなく
好きな人のために精一杯“女”でいた菜穂子さんは
すごく強い宮崎ヒロインだったと思う。


この映画は、要するに監督自身を投影したかのような
「男のワガママ」を、最後には強い宮崎ヒロインが
「それでもあなたは生きて」と赦す
という内容であって、それは否定しないけれど、
それで自己満足映画だとか
「自分で視写を見て泣いてりゃ世話ない」などと
監督を揶揄するのは、ちょっと違うと思う。

誰でも、そういうところってないですか?
人はみんな矛盾を抱えて、それでも生きねば
って日々精一杯過ごしてはないですか?

あの時代、日本は貧乏で、世界は戦争に向かっていて、
飛行機は戦争の道具でしかなくて、結核は死に至る病で、
それでも夢を追いたい!恋もしたい!!って
我が儘言いながら、精一杯生きた人の物語。
ただの薄幸のヒロインが出てくる悲恋モノではなく
素晴らしく人間のできた男が立派な夢を叶えるという映画でもなく、
そんな人間臭い不器用な精一杯さに泣ける映画
なんだと私は思います。

私はそう感じただけで全然見当違いなのかもしれませんが、
だから、私はこの映画がすごく好きです。
Posted at 2013/08/04 11:16:50 | コメント(1) | トラックバック(0) | 日記

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