会議終了、それは一ヶ月間の解放を意味するものだった。絞られるという予想は見事に外れ、何も無かったかのように時が流れていった。自販で煙草を買ってお釣りが100円多かった時には死を予感したほどだったが、文字通り何事もなく終わったのだ。「俺のターン…、ドロー」静かに、そしてはっきりと宣言する。プロジェクトがまた一歩前進した瞬間だった。遡ること前日、彼は神妙な赴きでパソコンの画面と対峙していた。折しも翌日は遅番ということもあり、気がつけば時計の針は深夜2時を指そうとしていた。表向きはいっぱしの契約だが、まだ口約束の域を出ていない。直前でキャンセルをくらう可能性は十分すぎるくらいある。〆切を大まかに設定したことで、彼の不安は余計に大きなものへと変わっていった。時計の鐘が鳴り、半ば諦めかけたその時、一通のメールが届いた。目を疑った。寝ぼけているのかと思った。むしろこれは夢なのではないかとさえ思った。万が一が無いようにと、アドレス帳に登録した人物からのメール。胸が高鳴り興奮が抑えられなくなった。落ち着こうと外へ行き、煙草に火をつける。手の震えが止まらない、これは一体なんなのか。期待と不安、双方がまさに交差を繰り返し頭の中を巡る。部屋に戻り、ゆっくりとメールの画面へ。タイトル 「デザインラフアップしました」もはやこれが現実だろうが妄想だろうがどうでもよくなっていた。メールを開き、内容を確認する。数時間後、彼は返事を送った。これで後は待つばかり。今月の後半には発注した外装パーツも揃う。来月には完成したイラストが届く。これが夢ならもう少しこのままでいたい。本当にここからは自分との戦いとなる。仕事でのミスは許されないし、イレギュラー対応も迅速にこなす必要がある。早いのか長いのか、時間の感覚も既に曖昧になってきている。ただ、これは必ず完成させる。その思いだけが、今の生きる理由なのだから。