みなさまこんにちは。
さて、
前回のエントリーではスバルのレヴォーグとメルセデスのCクラスのチョイ乗り試乗記をお届けしましたが、今回はその続きです。
朝から日本車、ドイツ車と試乗したら、次はフランス車に乗らないわけにはいきません。がしかし、お目当てのプジョー308もシトロエンC4ピカソも試乗車がディーラーに届くのは1ヶ月先。
となると残りはルノーしかありませんね。輸入車ミニバンウォッチャーの私ですから、ルノーでは新型エスパスが超気になる存在なのですが、これは本国でも未発売。とりあえずメガーヌのエステートに乗ってみようかな、と。
私、フランス車経験はそこそこ長いんですが、ルノーのディーラーには行ったことがなく、ルノー車をまともに運転した経験もありません。自宅からルノーディーラーがちょっと遠いのも、今まで足が向かなかった理由ですね。
ということで、Cクラスに乗ったメルセデスディーラーから30分くらいの、規模が大きそうな湾岸の某店舗を訪ねました。
湾岸地区は道が広くて試乗もしやすそうですね。こういうところにある店舗はいいなあ。メガーヌってどんな乗り味なんだろうなあ。しびれるくらいよかったらどうしよう・・・
などと考えながら店舗に到着。ここは駐車場が建物の奥にある構造。都市部にはよくあるタイプですね。
車に乗ったまま1階の吹き抜けに入ると手前左側に接客スペースが見えます。あれ?照明が消えてる?休み?いやウェブサイトで営業日は確認してるし、第一こうやって敷地に入れてるし。
そして奥の整備スペースでは赤や黄色や青の色とりどりのルノー車たちがメンテナンスを受けています。うーん、この色彩がルノーだなあ。これは確実に営業してるよね。
と、整備スペースからルノーの黒いジャンパーを着たお兄さんが出てきて、奥の駐車場を案内してくれました。整備場を抜けて駐車場に入るって、ディーラーでは珍しいな。それに対応してくれた人は多分メカニックだよな。
駐車場で車を降りるとさっきのお兄さんが店内に案内してくれました。訪問シートに名前などを記入して、メガーヌに乗りたい旨を伝えると、では営業を呼びますので3階のショールームでお待ちくださいと。やっぱりこの人はメカニックなんだ。
エレベーターを3階で降りるとショールームは結構広くて、6〜7台のルノーが展示されています。キャプチャーが2台、ルーテシアが2台かな。メガーヌも2台ありました。
私の他に客はいません。月曜日の昼間だし、昼休みにフラッと立ち寄れるような場所でもありませんからね。スタッフも席を外しているらしく、広いフロアには私1人です。
ルーテシアもキャプチャーもカッコいいなあ。塗装もツヤツヤしていて見る角度によって微妙に光沢の具合が変化して本当にキレイ。最近のルノーは、外観も内装も見た目だけならプジョーやシトロエンより抜きん出てるよなあ。
店内の壁にはロールケージとかストラットブレースなんかのパフォーマンスパーツが飾られていて、随分とスポーティーな雰囲気。やっぱりルノースポールは売りの一つだよな。
白いメガーヌエステートのドアを開けて運転席に座ってみる。基本設計は308よりもちょっと古いのかな。質感は308の方がよさそうだ。
それにしても営業マン、来ないな・・・
まあ、日本車でもドイツ車でもない、フランス車のディーラーですからね。ちょっとくらい待たされたって別に驚きはしません。
あ、来ましたよ。
あれ、また黒ジャンパーのメカニック風の人だ。
「すいません。メガーヌのオートマの試乗車きてないんですよ。」
あらら。
どうやら、1.2リッターのEDC(エフィシエントデュアルクラッチ)はまだ店舗に届いていないそうです。デビューフェアに間に合わなかったとのこと。
「プジョーやシトロエンならちゃんとやるんでしょうけど、ルノーはインポーターがグダグダなのでこういうことはよくあるんです。日産系のお店ならあるかもしれませんが。他メーカーだとありえないかもしれませんが、うちの試乗車を他店に貸し出したりもしてるので、試乗ならぜひ予約してくださいね。」
日産系の店?
聞けば日本のルノーディーラーはほとんど日産の販売会社が手がけていて、私が訪問したこちらのような独立系は少ないそうです。確かに、ルノージャポンのウェブサイトを見ると、ルノーの販売店の会社概要には「日産プリンス◯◯販売株式会社」などの文字が並んでいますね。
そんなにグダグダなんですか?
「基本的には日産の一部門みたいな位置づけだから、あんまりルノーを売る気がありません。彼らのヒエラルキーではあくまでも日産が上位で『(ルノーの)◯◯が売れると(日産の)××が売れなくなる』って平気で言う人もいるくらいですから。」
えーっ!でも、ルノーの日本での販売は伸びてますよね。前年比40%増とか、仏車勢では破竹の勢いじゃないですか。
「それはモノがいいからです。いまのルノーは商品がすごくいいです。以前プジョー306やシトロエンなどに乗ってた人が『いまのプジョーシトロエンには乗りたい車がなくなった』といってルノーを買われるケースも多いです。そういうよいお客さんに支えられているのが現状です。」
「そもそもインポーターや日産系のルノーディーラーはルノーのことを知らなさ過ぎるんですよね。うちはフランスと直接繋がっててインポーターより先に情報を仕入れてたりするので、日産系のお店で買ったお客さんがうちに来ることもありますね。」
「他店だと販売の95%がカングーなんてこともあるみたいですけど、うちはRSとかMTモデルが多いですよね。」
え、それってもしや・・・
「ルノージャポンや販売店の体制があんまりしっかりしてないんで、けっこう遠いところから整備に預けていただくことも多いですよ。まあ、うちは正規ディーラーなんですけど、ショップに近いですよね、というかショップですね。」
やっぱり・・・!
ここは表向きはルノーの正規ディーラーですが、その内実はルノー好きが集まる「ルノーショップ」なのでした。
私が勝手に定義する「ショップ」とは・・・
・基本的に事業の中心は整備
・新車や中古車も販売するがあまり商売っ気はない
・社員は自分が扱う製品に対する愛情がハンパないので知識もものすごい
・メーカーや営業寄りのポジショントークがないので「ここがだいたい壊れる」と素直に教えてくれる
・ディーラーの過剰整備を目の敵にしている
・整備士と直接会話ができる
・あまり「お客様」的な扱いは受けられない
・メーカーの推奨する整備方針(油脂類の交換時期など)とは別の独自基準を持っている
・レース開催日は臨時休業することもある
これで、入店時に感じた違和感は全て合点がいきました。ショップであれば、1階のエントランスが薄暗かったことも、いきなりツナギの人に出迎えられるのも、営業という名のツナギの人が出てくるのも納得がいきます。
あとで調べたら、ここは全国からルノー好きが集まるというルノーの聖地だったんですね。販売台数も国内有数で、メーカーから何度も表彰されているそうです。私が話した方も整備の責任者の方で、初対面にも関わらずかなり濃ゆい話を聞かせていただきました。
そんな方と小一時間駐車ロットで立ち話をさせていただけるなんて、これは平日ならではですね。
ちなみに、最近のルノー車は日産との競業によって部品の共用化が進んでおり、総合的なクオリティはかなり上がってきていると。「ルノーオーナーの家族になら普通に勧められる品質」ということでした。
中にはメガーヌのCVTのような「国産そのまんまでひどい」ものもあったようですが、技術者同士がいい意味でケンカしあって、よい製品が生まれているそうです。 メガーヌの1.2リッターに搭載されるゲトラグ製のDCTはトルク伝達の効率が素晴らしく良いと。ゲトラグのDCTは本来1基200万円を下らない高価なものらしいですが、それをルノーの購買力で安く買えたということでした。
いやー、試乗車には乗れませんでしたが、ルノー初訪問でこんなに深い話が聞けるとは思ってもみませんでした。
やっぱりフィールドワークですねえ。現場で見て乗って触って話して初めてわかることってほんとに多いですね。
ということで、日独仏車試乗祭りは思わぬ展開を迎えましたが、ルノーのDCTはぜひ体験してみたいですね。
年末にかけて、プジョー308、シトロエンC4ピカソ、BMW2シリーズアクティブツアラー、そしてメガーヌエステートと個人的に魅力的なモデルが続々と登場しますので、しばらくはディーラー詣でを楽しめそうです。
そして、1日で3件のディーラーを回るという夢のような時間を過ごして15時過ぎに帰宅。洗濯、もう1回洗濯、掃除、夕食の準備、3人の子供を保育園に迎えに行き、食べさせ風呂入れ寝かせて掃除してあっという間に23時、と、また怒涛の日常が押し寄せるのでありました。