
昨日に引き続きグロープラグの話 4回目です。
昨日はシリンダーヘッド修理の話をしましたが、今日は、グロー外しをもう一度頑張ってみましょう という話。
ディーゼル主流のヨーロッパでは、固着したグロープラグを外す仕事で生計を立てている職人がいるらしいですよ。
グローが抜けないと言って整備屋さんはシリンダーヘッドをボーリング屋さんに送ろうとするけれども、ほんとうに抜けないのか? 土壇場でもう一度疑ってみましょう。
まずは、エンジンを動かして完全に暖めてからグローを緩めようとしているか?
昨日入庫したお客さんのクルマを、冷たいままいじっているなんてのは論外です。 UBS73のシリンダーヘッドはアルミ。 グロープラグは鉄ですから、100℃くらいに暖まるとネジ穴の隙間がガバッと広がり、ネジが外れやすくなります。 アルミ熱膨張は鉄の2倍くらいあります。 火傷するのを嫌って冷めたエンジンをイジッているようでは “甘い”
皮のブ厚い手袋を履いてレンチを握るってのが、グローの作業をする時のあるべき姿です。
逆ネジ対応のトルクレンチを使って、チカラ加減をコントロールしているか?
グロープラグ製造元は、35Nm以上の力をかけると、グローがポッキリ逝くと言っています。
緩める時にもトルクレンチを使わなければなりません。
しかし錆でカジッたグローに35Nmしか力をかけられないというのは “イジメ” に等しい。 そんなトルクじゃまず、絶対に抜けません。 ケミカルに頼るしかありません。
浸透性潤滑剤に工夫しているか?
いろいろ聞いてまわった所、錆でカジッたネジを緩める時に使うケミカルは ワコーズの 『ラスペネ』 が一番人気でした。 (上の画像)
ワタシは エステー化学の 『WD-40』 を愛用しており、今でも10本位買い置きがありますが、職業整備士から言わせると、 それではまだまだ “甘い” そうです。 世の中にはいろんなものがありますね。 感心しました。
最高の浸透性潤滑剤を使い、かつ、それを患部に浸み込ませる努力をしているか?
カジッたネジアタマにシュッとケミカルを吹いて一服して待っているだけでは、やはり “甘い”
待つ事も必要ですが、闘う事も必要です。
グロープラグのオネジとメネジの表面はとても凸凹していてカジリあい、そこにはアルミと鉄の錆と煤が混じりあい・突き固められ・ “熱処理” され、最強のスクリューストッパーに化けて詰まっています。 コイツを破壊しない限りネジは緩みません。
コツコツコツコツ。。グローのアタマを直接小突くとか、6角レンチをネジに嵌めて小突き、メネジ側にショックを与えるとか、家庭用電動インパクトドリルにソケットをセットして、トルクを最弱にしてネジ頭にショックを与えるとか。。ケミカルを浸み込ませるためには工夫と根気が必要です。
ネジは緩めようとすると下方に突っ張ります。 左に回しているにも拘らず、実際かかる力は上下方向です。
(下に突っ張るオネジ) × (それを突き上げるメネジ) の摩擦です。 ケミカルを浸透させ、“錆合金のスクリューストッパー” を破壊するためには、上下方向 (軸方向) の振動を与えるのが最も有効なのですよ。
以上、整備屋さんがめったにやらない “本来やるべき作業” を列挙してみました。
整備もビジネスです。 一台のクルマにかかりっきりになってしまってはメシが食えない。 大抵は、浸透性潤滑剤をグロー頭に吹き付けて、カンに頼ってチカラで抜く。
抜けなければ、他の手離れの良い車の整備の合間に、それを何回か繰り返す。
運が悪けりゃグローがポッキリ!
これが実際のところです。
グローをポッキリされる前に、ヘッドをボーリング屋に持ち込まれる前に、固着グロー抜き取りに再トライしてみませんか? 何日かかるかワカリマセンが、コストを気にしなくて済むDIYユーザーなら、いつかきっと外れます。 無事に外れれば、すべてが円満解決です。
手っ取り早いのは、道具を揃えて自分でやることです。 それで外れなければ諦めもつくし、二度と同じ過ちを犯さない決意も腹に座るでしょう。
頼む場合でも、それだけの気持ちを見せなければ整備士の心だって動かせません。 値切ってばかりだと、それなりの仕事しかしてもらえないモンですよ。 UBS73の固着グロー外しなんてのは、コスト度外視の大変な作業だと思いますので。
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kumagoro | クルマ
Posted at
2012/04/09 06:49:41