
題名:明智左馬助の恋
著者:加藤廣
出版社:文芸春秋
うちのご先祖様(と伝わる)が主人公なので、図書館で借りずに、保存用に本屋で買って読んでみました。
本作は、「信長の棺」「秀吉の枷」に続く本能寺三部作の完結編で、明智光秀の娘婿となる明智左馬助の視点で、本能寺の変を追う作品。
3年前に、市川染五郎主演でTVドラマになっていたので、内容の方は分かってました。
まず第一印象はと云うと、文章が拙くて興醒め。
(時代小説に文章の美しさを期待しちゃいけないのは、分かってるんだけど…)
其れと、主人公の明智左馬助と云う武将は史料が少なく、史実として不明な点が多いため、出自の設定とか後付け感が強くて×。
配下の忍びが、尼子の蜂屋党の残党と云う設定も要らない。
総じてウソの設定が下手なので、作者が主張する「本能寺に抜け穴があった説」と云うのに、共感出来なくなってしまう。
また、天正の馬揃えの際に邪魔となった社も、重要な役割になりそうな雰囲気だったが、肩すかしに終わってしまい、伏線の張り方も、うまいとは感じなかった。
肝心の本能寺の変では、秀吉と家康の関わり方が今イチ分かり辛い。
此れは多分、他の二作品で書かれているで、わざわざ枚数を割かなかったんだと思う。
三部作併せて讀むと、100%楽しめるんでしょうね。(僕は、別に此れ以上加藤某の作品を読みたいとは思わないけど)
ただ全部がダメと云う訳でもない。
光秀が丹波攻めに手こずったと云うのは、山岳戦に不慣れであったからと云う事(織田軍全体を含めて)は、興味深い。
故に、信長が光秀の丹波平定を秀吉以上に評価したと云うのも、納得出来る話。
終盤の、湖水渡りから妻との別離を搦めた最期は、たっぷりと見せ場を楽しむ事が出来て◎。
狩野永徳から雲竜の陣羽織を貰ってから、見事湖水渡りを成功させる所のクライマックスは、非常にかっこいい(湖水渡りは事実じゃないけど)。
歌舞伎なら大向こうが飛ぶ見せ場だ。
最初はあんまり楽しめなかったけど、最後にご先祖様のおいしい所を見せてもらったので、まあまあの作品でした。
本日は此れ切り。
Posted at 2010/10/31 23:04:32 | |
トラックバック(0) |
読書 | 趣味