2025年09月03日
従兄弟さんも亡くなっていた。
それを聞いた瞬間のお袋の表情は多分忘れる事はないだろう。
驚愕と絶望が混じった表情だった。
淡々と山田さんが続ける。
「去年の2月にね。孤独死だったのよ…」
お袋もだし、自分自身も小刻みに震えてるのがわかった。
ああ、これで繋がりは無くなったのか…
「ちなみに正八さんの家はそこよ。」
言われて振り向くと1軒の家が。
角度的に上から降りてくるとちょうど死角に入ってしまうので気付かなかったのだ。
確かに玄関が2階みたいな造りだ。
……………!
その家を眺めていたら。
顔はわからない。でも目が合った。
どんな声かわからない。でも何か声が聞こえた。
見えるはずもなく、聞こえるはずもないモノ。
でも、俺に何か届いた。
その瞬間、涙が溢れ出す。
よくわからないグチャグチャの感情が迫ってくる。
急に泣き出した俺を山田さんが不思議そうに眺める。
その横でお袋が何か納得したような表情を浮かべる。
「色々あったのよ… あ、お父さんが来たわ。」
今度は家の中から初老の男性が出てこられた。
旦那さんだった。
お袋が挨拶を済まし、先ほどと同じ説明をする。
ちなみにこの時まだ落ち着かず涙を流していた自分は少し離れた所にいた。
「そうですか…。わざわざ千葉からね…。」
「はい。なんとかここまで来たのですが…」
少し考え込む旦那さん。
その間に急に俺の感情が落ち着く。
…何でだ?
荒ぶるような感情が静かに収まる。
すると旦那さんがスマホを取り出す。
「確か、アイツいたな?」
何処かに電話を始める。
「アイツがつかまれば…」
と、
「おう、俺だけどさ。お前今日こっち帰って来てたよな?」
俺を一瞥して電話を続ける
「あのよ。千葉からお前の親戚来てるよ。墓参りしたいらしい。こっち来れるか?」
…え?
「あい、あいよ。じゃあウチに来てくれ。」
電話を切って旦那さんが続ける。
「ご隠居の血筋で外に仕事に出てるヤツが、偶々一昨日位から帰って来てるんだよ。」
え?それって…
「今話つけたから来てくれる。5分も有りゃ来るだろ。」
…繋がった!
ギリギリのところで!
その人が来るまで少し世間話をし、従兄弟さんにと用意した土産をお礼代わりに押しつける。
すると、こちらも初老に近い男性が歩いて来た。
「よーおぅ。」
旦那さんが声を掛ける。
「あー、どうも。」
男性が返事をしながら寄ってくる。
「始めまして…?始めましてかな?奥さん見たことあるような気がするんだけど…、まあ、山田の者です。」
今思い出したが、こちらの男性のお名前をはっきりとお聞きしていなかったのだ。
旦那さんが「トク」と呼んでいた覚えがあるのでトクさんと呼ばせていただく。
「トクよ。この人達、歌子さんや正八さんの墓参りをしたいそうだ。案内してやってくんねぇか?」
「ああ、良いですよ。ちょうど手が空いたとこだったんで。」
ああ、繋がった。本当になんとかなった…
「お兄さん、車をあの倉庫前に移動しなよ。多分あそこが1番便利だから。」
旦那さんと奥さんにお礼をし車を取りに行く。
お袋とトクさんは先に墓へ向かい始めていた。
指示された倉庫前で合流し、墓地へ向かう。
と、言ってもその墓地は先ほどから視界にあった場所だった。
田舎によくある田んぼの中に建つその地域の墓地。
ただ、案内された先で俺とお袋は再び打ちひしがれる事になる。
続く
Posted at 2025/09/03 22:42:10 | |
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2025年08月31日
目の前に広がる田園風景。
初めて見るのに何処か懐かしさを感じる。
さて、なんとかここまでは辿り着いた。
「お袋、従兄弟さんの家って覚えてる?」
「ごめんなさい、建物自体の記憶はあるんだけど場所までは…」
まあ、40年近くも来てなけりゃそうだろうな。
どうしようか思案していると工事のガードマンさんが目に入る。
「すいません。」
「あ、この先にの住人の方ですか?」
「いえ、違いまして。ここに親類を尋ねて来たのですがわからなくなってしまいまして…」
スマホに表示した住所を見せる。
「この住所ってご存じないですか?」
「あ〜、自分もここの人間ではないので…。でも、この先のちょうど工事してる辺りがこの住所だったかと。」
迂回路を教えていただき、
「こちらから回っていただければ向こうへ行けますので。徒歩で行かれる分には入れます。現場にも連絡しておきますので。」
お礼を言い、教えてもらった迂回路を進む。
すると住宅もなくなり、車を停められるスペースを発見。
車を停めて歩き出す。
道路工事で通行止めになっていた区画に入る。
「覚えのある家、ある?」
お袋が見回すが…
「どれも違うのよ…。玄関が2階になる家だったから…」
確かにその様な家は無い。
建て替えも否定できないが、諸々の事情から考えるとその可能性は限りなく低い。この事情は後で語ろう。
情報を得る為に部落内を歩く。
残念ながら人の気配がない。
しかし、どの家も池があって鯉が泳いでいる。
流石は錦鯉で有名な地域だ。
ふと、お袋が1軒のお宅に気付く。
玄関が少し開いている。
そこに
「中におります。チャイムも中にありますのでご用の方は一度中にお入り下さい。」
との1文が貼られている。
お袋が迷う事なく中へ入り、チャイムを鳴らす。
「はーい。」
数秒の後に60代後半と思しき女性が来てくれた。
「すいません。私達千葉から来ましてこの地域の山田、藤田の血筋の者になります。正確にはご隠居の家の出の人間の子供になります。」
「あらー、ずいぶん久しぶりにその名前聞いたわ〜。ウチも山田だけどそちらとは流れが違うの。」
屋号が通じ、相手の方の表情が和らぐ。
ちなみにこのご隠居度言うのは祖母の生家がかなり立派だったそうでそれなりの方が家系にいたからだそうだ。
祖母は小学校途中まで自分の土地だけを踏んで学校に行けたそうで、女中さんが何人も居るような地元の有力者の家だったらしい。
ただ、自分のひいひい爺さんにあたる人がお人好しすぎて保証人になりすぎて飛んでしまったそうだ。
話がそれましたな。
「それでわざわざ千葉からどうなされたの?」
お袋が俺を一瞥する。
「ここに居るのが私の息子なのですが、息子がどうしても曾祖母の墓参りに来たいと言い出しまして…。何分この辺りの血を濃く引いているみたいなので、この子がそう言い出しましたら来る必要があると思い、本日今ここにおります。」
この辺りの血。
特に祖母側の山田の血。
神職に携わる者が非常に多い血筋で、能力者と言って良い程の直感、霊感、第六感を持っていた人間もいるそうで。
最近自分も身内に関してはその傾向が強く出ている。
だからこそお袋も「この子がひいばぁに呼ばれている」と思い、この新潟行きを決めたのだ。
「あぁ、そういう事…」
山田さんが納得してくれた。
「それで、何を聞きたいのかしら?」
「あの、山田正八さんのお宅を。正八さんのお宅と息子さんの消息を教えていただきたくて。私の叔父と従兄弟になります。」
「カズヒロさん?」
一呼吸置いて
「カズヒロさんも亡くなったわ…」
重い沈黙が辺りを包んだ…
続く
Posted at 2025/08/31 17:41:21 | |
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2025年08月11日
目的地まで1時間弱。
当初の予定より大幅な遅れになっている。
現地では2時間半ほどしか時間を取れないだろう。
出発前に宿にチェックインが遅れる可能性を連絡。
さて、行きますか。
しかし、思ったより市街地。
普通に町中である。
「なんか、思ってたより都会なんだけど。」
「まだまだよ。ここを抜けてまた少し登るから。」
なるほど。
20分程走ると大通りから逸れる案内が。
「こっち…ね。」
確かに更に上に登る道筋。
10分程走ると建物より田んぼの面積の方が多くなってきた。
「おお〜稲作風景。清田山もこんな感じ?」
「あたしが行った頃(30年以上昔)と変わってなければもっと田舎よ。」
ほうほう。
田んぼの中の道を抜け、勾配のキツい登りに入る。
既に視界に建物はない。
…こんな先にホントに有るのか?
途中で小学校のマイクロスクールバスとすれ違う。
確かに登り始めに小学校があったっけ。
という事は、この先から通っている小学生が居るって事だ。
この辺りから俺の身体に変調が。
なんて言えば良いのか。
気持ちが、心がザワつき始めた。
「…どうしたの?」
お袋が俺の変調に気付いた。
まあ、そりゃそうだろ。
いきなり口を開かなくなってたんだから。
「いやね、なんつーか、心がザワつくって言うか…明確に早くなってるワケじゃないんだけど、鼓動が早まってるみたいな感じもあってさ。」
「そう…」
それから数個カーブを回り、その度にざわつきは大きくなっていく。
とあるカーブにさしかかった瞬間。
(あ、この先だ)
わかる筈もなく、知ってる筈もない所なのに自分の中に確信が生まれる。
その登りのコーナーを抜けた直後、景色が変わる。
まさに米どころの田舎といった景色。
知らない景色。
知らない景色のはずが僅かな懐かしさを感じる。
ここが、じいちゃんばあちゃんの生まれ故郷…!
続く
Posted at 2025/08/11 15:16:12 | |
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2025年08月06日
思った以上の雨。
既に全体的に登りの道。
遠慮なく路面を流れて行く雨水。
さて気分は上げたが気合と注意力も上げていかないとな。
もう一度セブンに入り道中の支度を整える。
さて。行きますか。
しばらくは住宅ある風景が続いた。
勾配もそれほどキツくない。
2速、3速を多用して登って行く。
前日に施工したガラスコーティングが視界を確保する。
絶好調だ。
個人的にはフッ素系よりシリコン系が良い。
シリコン系の方が弾きが良いのだ。
月イチでの施工が苦にならなければシリコンをお勧めする。
そのうち視界から建物が消える。
さあ、峠本番だ。
ありがたい事に前にトラックが居る。
今日の相棒はアルト。どんなに頑張っても所詮NAの軽自動車。
登りは絶対的に苦手なのである。下手をすれば渋滞の先頭になりかねない。
しかし、現状は前のトラックがちょうどいいペースメーカーなのだ。
峠道をトラックがとばせるはずもなく、良い意味でスローペースで登って行く。
後ろに最強の営業車ことプロボックスがついているが、こちらもちょうどいい車間距離を保ってくれている。
これだけでも精神的疲労が全然違う。
そのせいか視野が広がりとある看板に気付く。
三国峠はコーナー毎に今何個目のコーナーなのかのナンバリングがあったのだ。
それをお袋と数えながら登っていく。
再び視界に建物が入ってくるようになり、とある看板が目につく。
「群馬県側、最後のガソリンスタンドまで2キロ」
メーターを確認する。
ちょうど半分だ。入れておこう。
見えてきたスタンドは昔ながらのフルサービスタイプ。
ひと昔あちこちにあった個人営業の小さな店舗だった。
計量機の前についたが誰もいない。
休みかな?
ホーンを鳴らしてみる。
女性のスタッフが大慌てで出てきた。
カードを渡し、ハイオク満タンをオーダー。
高回転キープな道程なのでハイオクを入れてみた。
窓を拭いてくれようとしたので「燃料だけで大丈夫です。ありがとうございます。」と断る。
給油完了。
さて、再出発だ。
しばらく視界に他の車両はなかった。
自分の気持ちいいペースで走る。
ここでもチョイスしたタイヤが功を奏していた。
選んだタイヤはダンロップのエナセーブ202L。
基本設計は既に10年程前の品だが、逆に言えばそれだけ信頼されているパターンだ。
不安なく水をかき、アルトには充分なグリップをしてくれる。
お陰様で雨なのにペースが上がる。
快調に走っていると、山の中に大きな建物群が見えはじめた。
今でも営業している物もあったが、スキーリゾートのホテル群の名残りだ。
あからさまに廃墟となっている物もあった。
一抹の寂しさを感じながら道は下りへと変わって行く。
お袋と他愛もない会話をしながら走り続ける。
ファミマが見えたのでちょっと休憩をする事に。
降りて手足を伸ばす。
気分転換にアイスを買って齧りつく。
目も覚めた。
ナビを確認すると目的地まで1時間程。
さあ、あと少しだ。
Posted at 2025/08/06 22:39:35 | |
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2025年07月28日
相棒、21万km突破。
壊れねぇ!
マニュアルなんで走る!
通勤でもリッター20走る!
人乗れる!(但し3人までがベスト)
手放す理由がないのでまだまた乗ります。
Posted at 2025/07/28 21:59:25 | |
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