連結器に要求される機能は、おおよそ以下の通りである。
引張力の伝達・連結の確実さ
車両間の引張力を伝達することが、連結器の基本的な機能である。機関車が客車をけん引する列車であれば、機関車と次の客車の間に最大の引張力がかかる。特に上り勾配、加速中にはさらに大きな力がかかるため、これに耐えられる強度が要求される。また大事故につながる危険があるため、連結が切れ車両が分離する事故(列車分離と称する)は絶対に避けなければならない。従って、充分な強度を持つだけでなく、一部の部品が壊れても連結が切れない機能を持つ連結器が望ましい。
容易な連結・解放
前述の「引張力の伝達・連結の確実さ」と相反する要素であるが、連結器は車両の連結・解放が容易かつ確実に実施できなければならない。但し、日常的に編成が固定されている車両同士においては、この限りではない。
圧縮力と衝撃の吸収
下り勾配、減速中、、連結時、機関車が客車を後方から押すような場合において、推進(圧縮)力を受けるので、これに耐えられる強度が要求される。その他、客車では乗り心地向上、貨車では荷崩れ防止、そして何より安全確保のため、車両の連結や運転中に生ずる衝撃による前後動を吸収し、車体が両側から押されて持ち上がったり破壊されたりしないよう、緩衝装置が設けられる。
左右・上下動への対応
列車が曲線やポイントなどを通過する際には、前後の車両が互いに各方向に傾き、また勾配進入時、上下動や荷重による車体の沈み具合によって高さに食い違いが発生するので、これらに対応する性能も求められる。
種類と構造
自動連結器
人間の右手を鉤形に構えた形をしており、どこに荷重がかかるのか一目で分かる。先端が開くことで連結・開放ができ、さらに連結器同士が突き合わされると自動でロックがかかる(名の由来)。開放の際はてこでロックを引き抜くが、てこを強く引くと先端が自ら開く点も特徴である。ロック機構は腕の付け根の内側に入っている。
自動連結器の中でも細かな区分がある。図のように前後に隙間がある(意図的)基本タイプの並形連結器、ロック機構を改良し隙間をなくした密着自動連結器など。これらは一部私鉄の特異なものを除き相互に連結が可能である。
並形連結器に関してはバネ・ネジを一切使用しておらず、注油なしに安全に使用できる。構造もシンプルであり、「究極の組立品」と呼ばれることも。
アメリカで生まれた方式。西部劇の列車強盗シーンなどで、これを銃で撃って開放させる様子が見られることがある。
北海道の鉄道はアメリカからの輸入品で作られたので、弁慶号や開拓使号などは最初からこれを装備していた。
社を問わず機関車・客車・貨車・気動車全般に使われている。気動車と近年の客車は密着自動連結器の採用が多い。また私鉄の電車の先頭でも見ることができるが、これは緊急用としてのものがほとんどである。
密着連結器
ツノとそれが差し込まれる穴が特徴的である。一見頼りなくも見えるが、突き合わされると中央の回転するロック機構が噛みあい抜けなくなる。この構造から「回り子式連結器」とも呼ばれる。開放する際はレバーを引いて回り子を引っ込めてやればよい。
鋳造品を機械加工して作られ、連結後は全く隙間やズレがない。そのため連結器上下には、ブレーキ用の細い空気管が取り付けられている。また連結開放を頻繁に行なう連結部には、配線作業の簡略化のため、電気接点を自動で繋ぐ電気連結器がこれの下部に取り付けられ、連結作業の効率化が図られている。
JR(国鉄)の電車のほとんどがこの連結器を採用している。私鉄では日常的に連結運転が行われている社で採用されていることが多い。
ねじ式連結器
フックにチェーンを引っ掛けて連結を行う原始的な方法。押し縮められる力には、車両に取り付けられたバッファーと呼ばれる大きな緩衝装置のはたらきで対応する。
ねじで隙間なく締め付けるため、乗り心地は自動連結器などより遥かに良く、発進時のショックもない。
この連結器を用いた連結作業では、連結(≒衝突)する車両同士の隙間に作業員が入り込んでいなければならなかったため、死亡事故が非常に多かった。
日本でも鉄道開業以来しばらくこの連結器を使用していたが、1925年7月17日に国内全線を運休し、自動連結器への一斉交換を行った。そのため、古い貨車などにバッファーを取り外した跡が見られることがある。このような対応が取れなかったヨーロッパの鉄道では、未だにこの連結器を使用し続けている。
日本では、愛知県犬山市の博物館明治村の汽車で使われており、機回し時に連結・開放作業が毎日行われている。
棒連結器・半永久連結器
工場での検査以外ではまず切り離さないような箇所に使われるのが、棒連結器や半永久連結器である。
前者はその名のとおりただの棒で、連結器一帯を分解することで車両の切り離しができる。後者はボルト締めでの連結となり、連結・開放作業の容易さでは棒連結器以上密着連結器未満である。共に非常に簡単な構造であるため、価格も安いのではないかと思われる。
私鉄電車の編成中間部では両者とも広く使われてきた。国鉄ではほとんど使われてこなかった(全ての連結部に密着連結器を使用)が、近年の新車では半永久連結器が少しずつ採用され始めている。
ブレーキ・電気的接続
車両を長く繋いで運転するには、物理的な連結のほかにブレーキや電線の引き通しが必要である。ブレーキは全車に効くことが法令で定められているほか、現在全盛の電車運転には電気的接続が不可欠である。
ブレーキ接続
ブレーキの接続にはエアホースを用いる。通常は連結器の下をたすきをかけるように垂らすか、連結器と並行になるように垂らし、中央のコネクタで繋ぐ。密着連結器には連結器本体の上下にブレーキ菅が付いており、ホースを必要としない。
送られる空気はその編成が採用するブレーキの方式によって、圧力での指令を伝えたり、電気での指令でブレーキシリンダーに供給される。
電気的接続
電気的接続にはジャンパ連結器を用いる。これは何十もの芯を持つ太い電線であり、これを前後の車両の接点に接続する。
密着連結器には自動で接続ができる電気連結器を取り付けることができる。これは箱型で、未使用時に接点部はカバーで覆われている。連結する際はカバーが開き、内側にずらりと並んだ接点同士が接触する仕組みである。
現代の車両では、アクセル・ブレーキ・空調・車内放送など、非常に多くの指令が編成内を伝わっている。
連結器画像







※トヨタ純正連結キットの画像は有りません。
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2016/12/21 05:00:50