
「久慈ありすは県の嫁」と熱く語る達増岩手県知事。
その土地の名産品などにちなんだ独自のゆるキャラや戦隊系ヒーローなどを作って
地域興しを行っている例はにわかに増えてきているが、これらとはちょっと異質な流れで
地域活性に役立っている現象が生まれている。
その鍵を握っているのが、「鉄道むすめ」だ。
「鉄道むすめ」といえば、運転士や車掌や駅員さんなど各鉄道事業者の制服姿で活躍する
女性たちをフィギュア化した、トミーテックから発売されている人気シリーズだ。
2005年に第1弾が発売されて以来、すでに第8弾まで続いており、フィギュアから派生した
コミックやCD、テレビドラマなど多くのコンテンツが作られ、鉄道ファンだけでなく幅広い
ファンを獲得している。
この11月には第9弾も発売を控えている。
その、フィギュア化した鉄道会社の「むすめ」を文字通り看板娘として前面に打ち出し、
路線のイメージ向上や沿線の地域興しに一役買わせようという動きが各地で起こっているのだ。
中でも積極的なのが、岩手県の第3セクター・三陸鉄道だ。
「鉄道むすめ」に登場する同社の女性運転士「久慈ありす」のイラストが描かれたヘッドマーク
付きのイベント列車を走らせたり、ご当地名物・南部せんべいに彼女の絵を描いたものを
お土産品として売り出すなど、これまでに様々な活動を展開してきた。
ちなみに「久慈ありす」の名前の由来は、三陸鉄道の起点である久慈駅と、「リアス式海岸」を
もじったものだそうだ。
その縁もあって、久慈駅周辺の商店街では久慈ありすのポスターが方々に張られている。
そんな久慈ありす一色の久慈市内で11月1日、三陸鉄道開業25周年記念事業の一環として
全国の「鉄道むすめ」関連事業者が集結した「鉄道むすめサミット」が開催された。
会場には主催の三陸鉄道のほか、北海道の函館市交通局、石川県ののと鉄道、
東急車輌製造の広報担当者らが参加、各社での「鉄道むすめ」の活躍ぶりが報告された。
このうち、路面電車を運行している函館市交通局では、電車の車掌として活躍する
鉄道むすめ「柏木ゆの」のイラストを描いた1日乗車券を5月に売り出したところ即日完売。
担当者の方は「普段なら方々へ営業をかけてやっと買ってもらっていたのがウソのよう」と喜ぶ
反面、「(公営交通の性質上)上の方の理解がなかなか得られず、切符の調達に苦労した」とも。
一方、電車の製造工場で溶接見習いとして研修中という設定の「金沢あるみ」が所属する
東急車輌製造の担当者は、「モノ作りの様子を見る機会を増やしたかった」とのこと。
今では同社の会社案内にも「金沢あるみ」のイラストが登場している。
各社報告に続いて、「鉄道むすめ」のプロデューサー・森山勇治さん(トミーテック)、キャラクター
文化に詳しい東京工芸大学の伊藤剛・准教授、岩手県の達増拓也知事の3人が登壇。
「カワイイが地方を救う」と題したパネルディスカッションが行われ、「鉄道むすめ」が地域活性に
関わる意義などについて、まじめな意見が交わされた。
「鉄道むすめ」の生みの親ともいえる森山さんは、「実は私どもでやっているのはフィギュアを
出すことだけ。各事業者さんごとに、ここまで広く展開されているとは思いもよらないこと」と、
その広がり方に驚いている心境を語った。
一方、伊藤さんは「以前はキャラクターといえば物語の中から生まれたものだが、まずキャラクター
ありきで物語が展開していく流れの一つ」と、「鉄道むすめ」現象のユニークさを分析した。
さらに、自らの執務室にもポスターを貼っているという達増知事からは「久慈ありすはウチの嫁」
なる発言も(あくまで岩手県の、という意味だそうです)。
今後も地域活性のために久慈ありすを積極的にアピールしていきたいと強調した。
そしてサミット終了後は、11月3日が誕生日と設定されている久慈ありすの
バースデーパーティーがファンらを囲んで盛大に行われた。
最近では、各社の成功事例を聞きつけたほかの鉄道会社から「鉄道むすめ」参加のラブコールが
増えているそうだが、森山さんによると「商品ラインナップ上(黒や紺など)暗めの制服ばかりに
なってしまうわけにもいかず、明るい色の制服を採用している事業者はないかと探している」と、
そう単純にはいかない事情もあるようだ。
(※Exciteニュース:フィギュアがローカル線の救いの女神? 「鉄道むすめサミット」開催よりコピペ)