改めましてハマノカズゾウです。アニメの音響監督をしています
(中略)
慣れている仕事はヘタをすると全力じゃなくても上手く回せてしまったりする。
しかし慣れていない環境だと新たな壁が出現し、その壁を越えるためにスキルアップが必要になる。そしてその壁を越えた時には知らぬ間に自分がレベルアップしていたりします。声優さんもそうです。
仕事柄、さまざまな声優さんとお仕事をし、そして飲みに行くことが多いのですが、
みんな新人の頃は「仕事がしたい」「売れたい」とギラギラしているのですが、何年か後にその中でも売れた声優さんと久しぶりに飲みに行くとあの頃のギラギラがなくなっていたりする…忙しさの中で手一杯で仕事を回すことしかできていない…うまく目の前の仕事をこなすことでいっぱいいっぱいになっている…ということがよくあります。
それは私たちキャスティングする側にも問題があると思うのですが…芸能界は一度火がつくと一気に仕事が増えたりします。
「今回のクールは○○さんばかり出てるね~」とかよく耳にします。この理由は、売れている声優=ファンが多い=メディアに取り上げられやすい=視聴率が上がる=DVD・グッズの売り上げが上がる、という効果が望めるからです(ま、この効果を望んで、近頃のアニメーションは声優さんじゃなく俳優さんや芸人さんやグラビアアイドルさんなどを抜擢したりするのですが)。
なので、今が旬と思われる声優さんのスケジュールは殺人的だったりします。
アニメのアフレコ時間は朝からの収録と夕方からの収録があるのですが、忙しい 声優さんだと2階建と言って朝から収録と夕方から収録、両方ともレギュラーアニメの収録が入っていたりします。そしてそれが月曜~金曜までビッシリ!(もちろん、土日にもレギュラーが入っている場合もありますが、土日はイベント・ライブ・ドラマCDなど単発の仕事をしている場合が多いです)
そこで考えてほしいのが、声優はリハVチェックと言われる、収録で使われる映像のチェックを前日までにしてから現場に臨まなければならないということです。
これをしっかりやっておかないと現場で良い芝居はできません。
リハVチェックに掛かる時間は、人によってさまざまですが、一つ一つの台詞のチェックをするので相当の分析時間が掛かります。
それが2階建であれば2作品のリハVチェックをしなくてはなりません。何時間も掛かる作業です。
前日も朝から晩まで収録していて、もちろん声優さんだって人なのでご飯も食べればお風呂にも入る、それにスタジオへの移動時間も掛かる。
それらの時間を考慮すると…睡眠時間を削る日々が続きます。すると、どうにか仕事を回すことで手一杯になってしまう…新人の頃の一本の仕事に掛ける情熱が薄れてきたりしちゃいます。
よく忙しい声優さんとお話をすると出てくる言葉があります。
「売れる前、売れたいと思って頑張っていた頃が一番幸せだった…」
って。
でもね、それも売れたから生まれた悩みであり、一握りの人しか味わえない苦しみなのです。この仕事の根本である「演じることが好き」があれば、乗り越えられます。たくさん演じることに喜びを感じて、苦しいのも楽しんで、ファンの皆さんのために声優さんたちには頑張ってほしいと切に願うカズゾウでした。
そんな声優さんたちを皆さん応援してあげて下さい。よろしくお願いします。
http://www.zakzak.co.jp/entertainment/ent-news/news/20131227/enn1312271530016-n1.htm