モダンな建物。それは近代美術を名乗るに相応しい建物であった。
BMWのフラッグの間を通ると、いよいよ会場に辿り着いた。
台数が少ないが、既に何台かは試乗に出ているらしい。
ひときわ目立つ場所にピンストライプの入ったマシンがある。
「アルピナだ・・・。」
呟き、ゆっくりと近づく。旧型は見た事があるが、現行型を目にするのは初めてだ。
非常に高い完成度。ドイツ製のコンプリートカーらしさを出している。
サイドのストライプをまじまじと見る。もしアルピナがストライプを使わなかったら、
自分も愛車にピンストライプを貼る事はなかったろう。
そんな事を考えながら車体を眺める。
一台の試乗車が戻ってきた。
そのアルピナとあまり大きさは変わらないだろうか。
もっともそれはクーペであるが。
乾いたアイドリングの音。
「M3・・・。V8の音だ。」
次の試乗待ちの車をじっくりと見まわす。
恐ろしいまでに完成されたそのスタイリング。
果たしてその走りは。。。
そうこうしているうちに、M3は次の試乗者を載せ彼方へと去ってしまった。
「そうだ、試乗をせねば。」
受付に向かい、よくあるアンケートに記入する。
試乗車は「530i Z4 23i M3 Coupe」の3つに絞る。
どれもスポーツモデル。
メーカーグッツコーナーを見ながら談笑し、しばし一息入れる。
流行る気持ちを落ち着かせる。
自分たちの番が来たようだ。
530の助手席に乗り込む。
インストラクターの方が入口までは運転し、入口で交代する。
つまらない事故を防ぐ良い方法だ。なかなかしっかりとした運営である。
自分が運転し、助手席にインストラクター。後部座席に旧友という格好で走りだした。
インストラクターの方との会話も弾む。
とりあえず、自分の心得ている限りのBMWのメカニズムと今運転している車の疑問をぶつける。
流石にアンサーが速い。メーカーなだけはある。
「ずいぶん御詳しいですねぇ」
どうやら認めて貰えた様だ。
欧州車、特にBMWのような技術系メーカーのインストラクターに認めて貰らえたとはなかなか光栄。
Mスポーツの足回りを確かめるために前の車と車間を開け、一気にコーナーに攻め込む。
ステアリングを切った分、ノーズが切れ込む。アンダーも感じられない。
ワインディングを攻めるには最適な脚だ。
Mスポーツ系を酷評する批評家がいるが、果たして何が不満なのだろうか。
若干の硬さがあるが、気にはならない。
ふと、頭文字Dの東堂塾編での二宮の「俺のシビックも足周りだけは東堂スペシャル」という
台詞が浮かんだ。
一人で苦笑する。
これでエンジンがV10なのだからM5はやはり異次元だ。
紅葉目当てか、近くでお祭りがあると言う事でやや混んだ道を戻る。
530ⅰ悪くない。モデル末期とは言え色褪せない魅力は発表当時のままであった。
しばしの談笑後、いよいよ真打。M3の試乗となった。
!!!
マニュアル6速だ。。。!
M・DCTが試せない。むしろ低速域でのクラッチ操作に不安が。
案の定、発進時にエンストする。シビアだ。
ようやく発進すると非常にトルクが太い。4リッターもあるのだからすいすい前に進む。
車間が開いた。2速でアクセルを踏み込む。
強烈な加速。
しかし4000rpmも回していない。レブはこの倍だ。
レットゾーンでの加速を想像し、ゾッとする。
法定速度と理性、試乗という事実がそれを阻んだ。
「エンジン見てみましょうか?」
インストラクターからの計らいでエンジンを見せてもらえる事に。
ボンネットの中には無機質な芸術品があった。
最近の自動車はエンジンをプラカバーで覆ってしまうが、それでもBMWは
「魅せる」事にこだわる。
いつだったかディーラーでそんな事を聞いた。
V8になった事による乗り換えの弊害はやはり出ているようだ。聞くとやはり直6に乗り続けている
オーナーはやはりいるらしい。
インストラクターのそろそろの声に促され、旧友がステアリングを握り復路へ。
道中混んでいてパフォーマンスを発揮出来なかったが、「3速でクリープするパワーを味わえた
だけで感激」との事。
後部座席に乗ってみるとバケット形状のシートにも感嘆した。
M3。V8になっても大正解。むしろ迫力ある低い乾いたサウンドは好みですらある。
もし機会があればM・DCTも乗ってみたい。
最後にZ4の試乗。旧友と二人での試乗になった。
M3はそのままでも十分ジムカーナで使える。サーキットではうんぬんうんぬん。
話しながら走っていると、Z4はサイドブレーキも足踏みブレーキも無いのに気づいた。
これはいただけない。
もっとも、ノーズが綺麗に入るのと回るエンジンは見事だった。
ただ、若干パドルシフトが使いにくいのが気にはなった。
これは人によりけりだが、自分は「右パドル加速、左パドル減速」が使いやすい人なので
Z4のパドルが形式がベストな人もいるだろう。
旧友に交代すると、やはり復路は混んでいた。
雨を心配し、助手席でリトラクタブル・ハードトップの締め方のマニュアルを熟読するなど
珍場面やオープンカーでの「千の風になって」の斉唱等ウルトラCもありつつ、
最後の試乗も終了した。
Z4。非常に快適。次は屋根ありでも乗りたい。スポーティさではロードスターに軍配が。
試乗を終えると入場券を頂いたので美術館へ。
サルバドーレ・ダリやパブロ・ピカソ。久々に美術品を鑑賞したが深い。
特に自分は抽象画が大好きなので楽しめる絵が多くあった。
数時間鑑賞すると、表は薄暗くなりかけていた。
感動の中自分の車に乗り込む。
ふと、レクサスLSを試乗した時の自分の車が粗末に思えた記憶が蘇る。
複雑な思いのままエンジンをかけ、走り出す。
何も臆する事は無かった。何時もと変わらぬ愛車がそこにあった。
変わらずに評価する事が出来た。乗り手としての成長であるのだろう。
そのまま一路郡山市へ向かう。
ダリの絵の食品を見ているうちに昼食を食べていないのに気がついた。
カー用品店を2点ほどめぐり、探していたクロスレンチホルダーとリザーブタンクカバーを見つける。
二人で談笑しながらラーメンを啜り、帰路へ着いた。。。。
価格以上の価値があるはずです。
特にM3はセダンも設定されました。
一度ステアリングを握ってみてください。