流石に波乱万丈な人生を歩んでいる旧型国電。
まぁ~そこが一番魅せられるところなんですけどね。
さて今回は大糸線クモハ51(2両)を製作したのですが並べてみてちょっと気になる点がありましたので
ここは再度、基本から勉強をし直してみることにしました。
奇数向き(松本向き)の奇数号車(写真:左)クモハ51027
偶数向き(南小谷方向)の偶数号車(写真:右)クモハ51014
※写真では同一方向を置いて比較しやすくなっています。
さて?まずはこの2両を見ておわかりいただけただろうか?(笑)
まずは左側にある正面からの写真をご覧下さい。
写真左側の奇数号車(クモハ51027)は当然ジャンパー栓受けを装備。
写真右側の偶数号車(クモハ51014)にはジャンパー栓受けはありません。
そして右側、妻板面からの写真ではなぜかパンタグラフからの母線と空気作用菅の位置になっています。
(本来、偶数号車であるクモハ51014は母線が右、空気作用菅が左と逆の位置になるはずなんですが・・)
これはひょっとすると妻板面にあるはしごの関係かな?とも思ったんですが・・やはりちょっと気になってしまいました。
そもそも電車の連結器は車体と車体を繋いで機械的に離れないようにします。
そしてジャンパー連結器(以下、ジャンパー栓)は制御信号や動力電源の橋渡しをして
長い編成でも運転士ひとりで総括制御ができるようにする重要な電気接続用の継手です。
やっぱりここは旧型国電に思いっきりこだわって製品化している「ねこまた」さんの
「ますこっとれいん」シリーズで勉強させてもらうことにしました。
「ますこっとれいん」は鉄道模型のショーティーモデルなので床下機器はありませんのでまずは安心です(笑)
さて、まずは基本的なおさらいをすることします。
図のようにこのような片運転台の電車では運転室側が前位で妻板面側が後位になります。
さらに前位の下側(運転席側)が②位、上側(補助席側)が①位となります。
実車では③・④位は表示されていませんが、前位①位の後位側が③位、前位②位の後位側が④位になります。
さらに実車を見ると空気配管の継手コック位置はジャンパー栓が2ケある方に付いているので
偶数向きの車体では①位側にあり、奇数向きの車体では②位側にあります。
すでに「ますこっとれいん ぱーと1」でクモハ51015を組立てた方は気が付いていると思いますが、
このクモハ51015はそもそもクセモノで奇数号車にも関わらず上図にあるクモハ54002と同じ辰野向きで運用されていました。
本来は山側の①-③側に電気機器が配置されているのですが・・
車体をそっくり方向転換したので海側の②-④側になってしまいました。
さらに後位側にあるパンタグラフからの母線と空気作用菅も奇数向きのままなので偶数向きとは逆になっています。
さて、下の写真は今回作った大糸線のクモハ51014になります。
このクモハ51014が製造当初から偶数号車であるにも関わらず後位の妻板面にある
パンタグラフからの母線と空気作用菅が通常の偶数号車と逆になっているんですね。
さらに実車の写真をググってみると奇数号車と同様に床下の電気機器が海側の②-④側に配置されていました。
本来は製造された時からの偶数号車ですからクモハ54002と同じように山側の①-③側に電気機器と空気配管が配置されている
はずなんですけどやっぱりおかしいですよね?
そこでとりあえずクモハ51014とクモハ51015の経歴から比較してヒントを探しました。
クモハ51014
・1937年 日本車輛製造(モハ51014)新製配置は三鷹電車区(東ミツ)
・1943年 セミクロスシートからロングシート改造工事(大井工機部)→モハ41069に改番
・1952年 ロングシートからセミクロスシート改造工事(吹田工場) →クモハ51014へ復番
クモハ51015
・1937年 日本車輛製造(モハ51015)新製配置は三鷹電車区(東ミツ)
・1944年 セミクロスシートからロングシート改造工事(大井工機部)→モハ41070に改番
・1952年 ロングシートからセミクロスシート改造工事(吹田工場) →クモハ51015へ復番
いずれも製造当初から当時の東京鉄道局三鷹電車区(東ミツ)に所属されたモハ51形なんですよね。
しかもなんと中央線に投入された車両は番号が奇数・偶数に関わらず全車が高尾向きの先頭車として使用されるために
奇数向き(上り)になっていたそうです。
もしそうだとするとすでに製造された時点で奇数向きの機器配置(山側の②-④側)だった可能性がありますよね。
このモハ51形(モハ51001~51026)26両については戦時中の輸送力増強対応でロングシートへ改造されています。
しかもこの東京鉄道局配置のモハ51形は歯車比がモハ41形(1:2.52)と同じ事からモハ41形(モハ41056~41081)へ編入されているんですね。
(※この時はなぜか全車が奇数番号→偶数番号、偶数番号→奇数番号へ改番されています)
また同時期に大阪鉄道局所属だったモハ51形は歯車比(1:2.26)がモハ41形(1:2.52)と違うことから
ロングシート改造工事後も改番されずモハ51形のままだったのも面白いですね。
その後、東京鉄道局所属で戦争から生き残った23両は歯車比(1:2.26)に変更して元のモハ51形に復番しています。
まぁ、この2両だけではわからなくなってしまったのでモハ51001~51026の写真を探して確認しました。
すると写真で確認できたモハ51形(東京鉄道局配置分)の車両(10両)はすべてが偶数向きになっていました。
しかも海側の②-④側に電気機器が配置されていたんです。
・クモハ51001・03・05・10・11・13・14・19・23・25
結果として東京鉄道局に配置されたモハ51形は京偶数・奇数の車番に関係なく製造後に中央線へ投入されて全車が奇数向きで
運用されるので山側の②-④に電気機器を配置。
その後、写真で確認できた10両については偶数向きの方向転換車として電気機器が海側の②-④になってしまったということ
なのではないでしょうか?
えぇ~い!もうこうなったら写真が確認できるクモハ51形を全部チェックしてみました。
・奇数向き:山側の②-④に電気機器、海側の①-③に空気機器の車両
・クモハ51027
・クモハ51029
・クモハ51031
・クモハ51035
・クモハ51039
・クモハ51041
・クモハ51043
・クモハ51045
・クモハ51053
・クモハ51055
・クモハ51057
・クモハ51062(元:モハ41002)モハ41をセミクロスシート化して編入
・クモハ51066(元:モハ41006)モハ41をセミクロスシート化して編入
・クモハ51068(元:モハ41008)モハ41をセミクロスシート化して編入
・奇数向き:山側の②-④に空気機器、海側の①ー③に電気機器の車両
・クモハ51036
・クモハ51040
・偶数向き:山側の②-④に電気機器、海側の①-③に空気機器の車両
・クモハ51028
・クモハ51032
・クモハ51044
・クモハ51046
・クモハ51049
・クモハ51056
・クモハ51200(抵抗器と制御器の位置が逆)
・クモハ51208(抵抗器と制御器の位置が逆)
・偶数向き:山側の②-④に空気機器、海側の①-③に電気機器の車両
・クモハ51075(元:モハ40007)モハ40を片運転台・セミクロスシート化して編入
・クモハ51080(元:モハ40012)モハ40を片運転台・セミクロスシート化して編入
・クモハ51083(元:モハ40015)モハ40を片運転台・セミクロスシート化して編入
・クモハ51087(元:モハ40019)モハ40を片運転台・セミクロスシート化して編入
いやぁ~一定の基準で配置されりしていたのかも知れませんが・・
もう益々サッパリわからなくなっちゃいました!(爆)
ところでちょっとヒントになるかもしれないと思ったのが身延線・飯田線を管轄する静岡鉄道管理局さんです。
身延線を走る車両はトンネル断面が小さくパンタグラフを低屋根化する必要がありました。
そこで転属入線する旧型国電を浜松工場で改造工事を行い、この時に制御電動車はすべて偶数番号の甲府向きに直しています。
しかも初期の改造車両は屋根全体を低屋根化しましたが途中からパンタグラフ部分のみの低屋根化で対応しています。
全車両が偶数向き(甲府向き)で偶数番号に直されています。
身延線の沼津機関区(静ヌマ)に所属していたクモハ51800番台の実車写真をみました。
・山側の①ー③に電気機器、海側の②ー④も空気機器の車両
・クモハ51800(元:クモハ51042)
・クモハ51802(元:クモハ51054)
・クモハ51826(元:クモハ51050)
・クモハ51828(元:クモハ51052)
・クモハ51850(元:クモハ51202)
・クモハ51852(元:クモハ51204)
・山側の①ー③に空気機器、海側の②-④に電気機器の車両
・クモハ51804(元:クモハ51004)
・クモハ51806(元:クモハ51006)
・クモハ51808(元:クモハ51007)
・クモハ51810(元:クモハ51008)
・クモハ51812(元:クモハ51009)
・クモハ51814(元:クモハ51012)
・クモハ51816(元:クモハ51017)
・クモハ51818(元:クモハ51018)
・クモハ51820(元:クモハ51020)
・クモハ51822(元:クモハ51022)
・クモハ51824(元:クモハ51024)
・クモハ51830(元:クモハ51073)
どうやらこの身延線については床下機器の海側配置を避けるような対策は行われていないようです。
(そもそも海沿いは走りませんからね~)
ここでさらに面白い車両をみつけてしまいました(笑)
飯田線では長距離に車両が運用されるので1961年からクハ68形にトイレの設置工事が行われました。
最初にクハ68064に設置工事が行われ1966年~1967年にかけて転入してきた9両にも施工されました。
その後、1968年に改造済みだった10両が400番台に改番され最終的には16両に設置されました。
・1968年改番(10両)
偶数向き(辰野向き)
・クハ68400(元:クハ68040)
・クハ68402(元:クハ68032)
・クハ68404(元:クハ68030)
・クハ68406(元:クハ68034)
・クハ68408(元:クハ68054)
・クハ68410(元:クハ68046)
・クハ68409(元:クハ68064)
奇数向き(豊橋向き)
・クハ68401(元:クハ68007)
・クハ68403(元:クハ68003)
・クハ68405(元:クハ68009)
・1972年改造(3両)
偶数向き(辰野向き)
・クハ68412(元:クハ68106)
・クハ68414(元:クハ68100)
奇数向き(豊橋向き)
・クハ68407(元:クハ68077)
・1974年改造(3両)
偶数向き(辰野向き)
・クハ68416(元:クハ68026)
・クハ68418(元:クハ68066)
・クハ68420(元:クハ68094)
この中でなぜか?クハ68409だけが奇数番号の車両なのに偶数向き(辰野向き)なんですよね。
もちろんジャンパー栓も偶数向きなんで①位側になっています。
こんなイレギュラーな車両もあるのがまた楽しいんですけけどね。
さらにこんな面白い話も見つけました。
高度成長期に旧型国電は全国の地方路線(中央東線・大糸線・日光線・長野原線)へ盛んに転出しています。
身延線にもサハ57形からクハ55形に改造されたクハ55321が1966年静岡鉄道管理局富士電車区(静フシ)へ転入してきました。
1968年にトイレ設置工事が行われクハ55440に改称、翌1969年には静岡鉄道管理局沼津機関区(静ヌマ)配属となります。
・クハ55321→クハ55440(静ヌマ)
同時期の1967年から地方路線向けにトイレ設置工事が行われ大糸線向けのクハ55形に大井工場で設置工事しました。
大井工場では車両の偶数向き・奇数向きに関係なくどんどん番号を振り分けしました。
するとなんと!クハ55440の番号が2両存在する事態(二車現存)が発生してしまいました。
しかもこの件は鉄道ファンからの連絡で発覚し、当時の国鉄は直ちに番号修正を行なっています(笑)
さらになぜかこの時、すでに大糸線へ配属されていた5両の車両も再度の改番が行われているのも気になりますね。
・クハ55304→クハ55433→クハ55430(長キマ)
・クハ55315→クハ55436→クハ55435(長キマ)
・クハ55310→クハ55435→クハ55436(長キマ)
・クハ55330→クハ55439→クハ55438(長キマ)
・クハ55321→クハ55440→クハ55439(長キマ)
まぁ~こんな事も起きるくらいですからちょっとやそっとの事で驚いてはいけませんね(笑)
いろいろと調べて来ましたが単純に配置された電車区が路線での使用状況に合わせて対応したんだなぁ~程度と考えてもよさそうですね。
さらに電気機器や空気機器の配置もまったく同じではなく前後に入れ替えて配置している車両もあったりします。
結論として旧型国電は配属先に合わせて順応できるマルチな電車だってことでいいんじゃないですかね~?(爆)



