怪しいオッサンだと思ったのが第一印象。
2分刈りほどの坊主頭に、口髭とあごひげ。
気付いたら口説かれた後だった。
スポーツが有名で、アカデミックな雰囲気かと思い選んだ学校。
授業レベルは相当低いが、遊ぶには親の仕送りでは足りない。
モデルの仕事がしたくて、事務所を廻った。
登録はしたものの、コンパニオンとは名ばかりのバイトしか来ない。
田舎じゃ一番の美人と言われていたのに、レベルが違った。
バイト先の飲食店の店長と同棲したが、1年持たなかった。
尊敬できる部分のないオトコと思ったけれど、あたしはどうよ。
成りたい自分に投資するなら、学生の今しかない。
内面を磨こうと思った。
服やファッションにお金をかけるのをやめた。
ローンを組んで、エステに通った。
最初のお店で、騙された。
2カ月で60万、今思えば高い授業料。
効果も無く、ローンの支払いだけが残った。
今通っているエステは、モニター料金で月10万。
サプリも全て無料、この3カ月で2キロ痩せた。
気になっていたお尻も2センチ細くなった。
今のカレは、ここのエステのマネージャー。
店には出ないので、髭面で良いのだろうか。
勧誘され、入会した翌日には一緒の湯船に浸かっていた。
香港で買ってきた偽ブランド品を、安かったと自慢げに見せるカレ。
時計もバッグもスーツも、全てニセモノだと言う。
カレと付き合っていて良いのかと一瞬思ったが、ダメな理由が浮かばない。
ニセモノだと他人に言うことが間違ってるんじゃないの?
カレにそう言ったら、オマエも内面の意味、間違ってるぞと言われた。
「知ってるか? 似て非なるものを悪(にく)むって言葉。
ニセモノではなく本質を追究せよと、むかし孟子が説いたのさ」
おいおい、言ってることとやってること違うじゃん。
そう言うあたしに、笑いながらカレは答える。
「ホンモノはひとつあればいい。このクルマ、レンジローバーもそう。
オフロードのロールスロイスと呼ばれるクルマさ。
エアコンは効かない、燃料は喰う、でも、最高のステータス」
そうか、このでかい図体のクルマ、夏は乗れないってことだけはわかった。
カレの言う不便でも乗っていたいクルマって、あたしにはわかんない。
「オトコはいつも、死に場所ってのを考えているものさ。
このクルマで死ねれば本望、レンジでチーンってね」
景色が一瞬、ブリザード。
ドンびきのこのボケに、どうツッコミを入れろってか?
って、つい吹き出しちゃった。
笑えるって幸せなのかな、あたしたち。
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2011/01/10 15:35:15