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2011年09月04日

FORD EXPLORER って どうよ

FORD EXPLORER って どうよ









一番上のリフトを降りた先に、そのステージは存在した。


カナダ西部、天国に最も近い場所を意味するスキー場。
眼下に雲を見下ろすリフトの終点は、狭いわずかなスペースがあるだけ。
右手のスロープに沿って進めば、上級者用ゲレンデへと続く。



その一団は、スロープへは向かわないようだった。
リフトで着けていた板を脱ぎ、肩に担いで立つ若い男女数人。
仲間を待つにしては不自然と思い、話しかけた。


装備と身なりから、皆、上級者であることはすぐに察した。
風よけになっている小さな丘を登ると、左手に続く山の稜線が見える。
細く延びる尾根、どこまで行けるのか、先はあるのか。


人ひとりがやっと歩ける幅の雪の上を、一列になって進む。
歌を口ずさむもの、笑顔で話しかけるもの。
その先に何があるのか知らぬまま、最後尾を彼らに付いて歩く。


ストックをつき、ゆっくりと一歩一歩、足跡を辿りながら進む。
踏み外せば、左右どちらも切り立った急斜面。
新雪なら雪崩、氷層であれば滑落の危険を考える。



30分も歩いただろうか、ヒュッテもリフトも見えない稜線に並んで立つ。
僕を含めた若者8人が笑顔で向き合い、誰かのウォッカで乾杯をする。
親しみを込め歓迎の言葉をかけてもらうが、どんな仲間かはわからないまま。


「よし行こう」

狭いスペースでスキー板を足に着けると、最初のひとりが奇声をあげ滑り出す。
落ちてそこから見えなくなると言ったほうがいい。


実際、立った姿勢だと断崖絶壁にしか見えない斜面も、滑り出すと周りが見える。
銀に輝く真っ白な雪、黒に近い色をした青空。
白と青の狭間を、後塵に粉雪を撒き散らせて滑る複数のスキーヤー。


傾斜が40度を越える深雪の斜面。
ところどころロッキーという名の通り、岩肌が切り立って落ちている。
危険な雪屁を察しながら避け、ずっと先にある雪面を探す。



大学2年の冬、僕はひとりカナダに来ていた。
前の年の冬は、N県のスキー場でスクール教員のバイトをしていた。
4月には初めて競技会に出させてもらったが、惨憺たる結果だった。


僕より速い奴は、いくらでもいる。
僕より上手い奴も。
好きなスキーで食べてゆく道を探し、悩んでいた。


スキーヤーだけで食えるのは、どのジャンルであれトップの3人。
狙いを定め、世代を超え、勝ち続けて行かねばならない。
僕はそのスタートに立つ前に無理と悟った。



他の道を探そうと、ヒントを求め海外に出た。
目指した先はカナダ、期間は期末試験が始まる前までの40日間。
単身、拠点を移動しながら、名だたるスキー場に通い詰めた。


バンクーバーで借りたクルマは、フォードのエクスプローラー。
ダッヂのフルサイズバンや、ピックアップトラックがごろごろいる駐車場。
ここではエクスプローラーが小型車に見えてくる。



この日は風もなく晴れ、温度計は氷点下20度。
見渡す限り白銀のカーペット、細かい氷が空中を漂い光る。
山肌に止まることなく延々と一定のリズムで弧のシュプールを描いてゆく。


転べば深雪にすっぽり埋まり、気付かれず行方不明になるかも知れない。
不安や恐怖を覆い隠すほど膨れ上がった好奇心。
スキーを履いてさえいれば、空だって飛べると思った自信。



気付けば周りには誰もおらず、見渡す限り雪原だけが眼下に広がっている。
どこへ向かって滑ってゆくのか、この先には何が見えてくるのか。
ここまでくれば、あとは本能と運次第だろ。


なにより、生きてるって凄い。
僕は頭の中を真っ白にして滑り続けた。













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Posted at 2011/09/04 11:57:17

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この記事へのコメント

2011年9月4日 22:54
こんばんは。
中々感慨深いお話でした。

誰にも迷いがあり、それを解決する道を見つけるために、何か行動を起こす。
その先に見えるものなどわからないまま、ただ突き進む。

19歳で社会に出て就職した私にとっては、先は何も見えませんでした。
でも、周りには私と同じ境遇の仲間がいて、その仲間たちと共に会社の第一線に出るまで、楽しい時間を過ごした気がします。(今は、皆バラバラになってしまいましたが・・・)

<なにより、生きてるって凄い。
 僕は頭の中を真っ白にして滑り続けた

もしかしたら、私は今もまだその最中かもしれませんね。
コメントへの返答
2011年9月6日 10:10
コメントありがとうございます。
秋の気配に冬を思い出して書いてみました。

日々がむしゃらに過ごす中でも、経済の流れ一つとってみても大きなうねりとなって私達の生活を呑みこんでいます。

これほど目先のことばかりに注意をひきつけられている年も珍しいのでは。

病気で苦しんでいる時に先を考えての行動を促すなんて無理ですから、元気な時に考えておきたいものですね。

生きてるって凄いことですものね。

またご意見をお聞かせ下さいませ。
2011年9月4日 23:27
私の人生ホワイトアウトです(笑)五里霧中とも言います(失笑)

白銀の雪上に自分の足跡(あえてそくせきと読んでください)
誰も行っていないルートを自分で選んだのなら責任は自分。
誰かのスキーの跡を追っていってそのルートが
自分にとって不本意な結果になっても責任は自分。
前人のせいにしてはいけません。

山の頂まで登るのは努力。
その先の選択は本能と運。
すばらしい景色に出会うか?崖から落ちるか?

う~ん・・・人生ですね~
私の世界観だとこの主人公は35歳・・・
人生の折り返しを決めたはず。




コメントへの返答
2011年9月6日 17:37
コメントありがとうございます。

これほど読み込んで頂けると、とてもとても嬉しいです。

気楽に笑って頂けるのが一番ですが、オチがないですね、これ。
お恥ずかしい限りです。

人の生き方は何をもって成功と言うかは人其々。
納得できる道を切り開いて歩いて行けるといいなと思っています。

またご意見をお聞かせ下さいませ。
2011年9月5日 1:17
こんばんは。
私は父がスキーのインストラクターの資格を持っていたので3歳から、ずっと滑っていました。中3で膝の手術をしたので、それからは雪山に行けなくなってしまいましたが。
当時を思い出しました。懐かしかったです。

私も、1日中ひたすら滑っていました。上級者用のかなりの急斜面まで。

頭の中を真っ白に……。
その時の感覚が思い出されるフレーズでした。
今はプールで我慢してますが(笑)プールは白くは無いので、頭の中をクリアにして……という感覚でしょうか。。無心でいられますね。
コメントへの返答
2011年9月6日 17:46
コメントありがとうございます。
素敵なお父様ですね。
集中して何かを成し遂げる環境が、日和さんには既にその頃から育っていたのでしょうね。

難しく物事を考えている人って面白味が無いなと感じるこの頃。
馬鹿に見られるくらいがちょうど良いのかもしれません。
スポーツしてる時は頭真っ白にして考えないから楽しいのかななんて。
またご意見をお聞かせ下さいませ。

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