成功のポイントは発想の転換にあった。
塾は子供達のためにあるのではない。
子育ての不安から逃れたい親のためにあるのだと。
ターゲットは母親。
家計を握るのも、育児の決定権も母親にある。
不安を抱えた母親の心を掴むことが全てだ。
当時は、まさか妻がこんな仕事を始めるとは思わなかった。
子供達には塾に行かせず、妻が家で勉強を教えていた。
自分の子が済んだら、次は他所様の子供達になった。
自宅で教える個人塾が、市内数か所に展開するまでに。
大量の名門大学生をバイトで雇い入れ、人事が仕事になっていった。
私まで仕事を辞めて手伝うようになって久しい。
塾の仕事はマネジメントと月1回の講演会。
何の目的かと言えば、母親たちを集めてファンにさせること。
簡単に言えば、韓流スターみたいな役回りらしい。
妻が母親たちを叱りつけ、自己改革せよと強く叱咤する。
そのあとで子供のために必死な母親を、優しく励まし慰める。
私の役目は、任せて下さいと言うこと。
塾の経営に、ポリシーや理念、指針なんていらない。
「お子さんはできる、問題はあなた」と堂々と言いきる妻。
母親の不安を増幅させ、引き受ける役になりきる。
子供の将来に満足なんて約束できるはずがない。
受験にしくじっても、後悔は子供の責任。
合格すれば私たち塾のおかげとなる。
毎月、定期的に月謝が入ってくる。
広告宣伝費は湯水のように無担保で銀行が貸してくれる。
慣れるとお金を使わなければという思いに駆られるようになる。
室内の内装は全て国産無垢材を使用。
什器備品類をロハスで徹底させる。
派手さや安っぽさは排除し、徹底して自然志向を出す。
月に一度、全ての会場を回る講演会にも気を遣う。
所得の高いエリアでは、最高級品を身に着けること。
所得の低いエリアでは、高級品は排除して簡素に振る舞う。
母親からの相談は、個別に時間を割く。
母親をファンにさせるためだけに専心精魂、心血を注ぐ。
同じ母親の心理だからわかるのだろうが、感心すらする。
妻のおかげでこうしてレクサスに乗っていられる私。
団体職員として勤務し、好きな研究に没頭していた頃が懐かしい。
息子二人は医師になり、この塾の跡を継ぐとしたら孫になるだろう。
カリスマ性や説法だけでは、もう年齢的に限界がきている。
これまでのイメージ戦略で、この先どこまで続けられるか不安もある。
意識のずれを埋める揺るぎないブランド確立のために、お金を注ぎ込む。
うちの塾はレクサスのように、高級、安心、先進のイメージ。
誰のために稼ぐかと言えば、不出来だった場合の孫たちのため。
ボケる前にバトンを渡したいが、その前に銀行に乗っ取られないか心配だ。
出向先がなく、経営に塾知した支店長連中が余っている。
塾練した海千山千の彼らを信用していたら、無一文で追い出されてしまう。
お金の扱いだけは、未塾な社員たちには任せられない。
ライフワークとのめり込む妻を、教祖のように奉るのもそろそろ辞めにできないか。
何より塾は学校や家庭ではないし、私たちは教育者でもない。
妻の不安を取り除けない世間の夫たちに、つくづく同情する。
これ、同類相憐れむってことか。
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Posted at
2011/09/15 13:38:16