京都、名古屋間は、のぞみで35分。
高速道を使いクルマで走ると、市街地まで2時間はかかる。
それでもドライブにはちょうど良い程度の距離と時間だ。
タカシのクルマは、買ったばかりのレクサスCT200h。
ハイブリッドのハッチバックで、視界も良く小振りなのがいい。
マウスに似せたポインタも、座ったままで操作し易くお気に入り。
シートのファブリックも安っぽさが無く、外観はシックだが逆にそこがいい。
さすがトヨタ、細かな収納や形状が考え抜かれている。
レクサスブランドである素性の良さに間違いがない。
その日の夜、京都に住む友人と待ち合わせ、祇園へ飲みに行く予定のタカシ。
翌朝の出勤を考え、駅上のホテルを予約。
ドライブがてらと彼女のひとり、倫子を誘った。
「少し遅いが、紅葉を観にいかないか」
お泊りが無理な倫子を助手席に乗せ、軽く市街を走り京都見物。
その後チェックインしたホテルで汗を流し、千枚漬けを持たせ改札で見送った。
待ち合わせた友人と入った店で、恭子と名乗る女子学生と出会った。
「このお店はヘルプでバイトなの」
恭子が通う大学は友人と同じ、つまり後輩という。
賢く偏差値が高いことよりも、その容姿の美しさにタカシは運命を感じた。
「バイトあけたら部屋にこないか」
ストレートなタカシの誘いに、恭子がのってきた。
「ここ、12時までですから、あとで寄りますね」
席を替わる時、そっと耳打ちされた。
期待に胸膨らませ、ホテルへ戻り、部屋で待つタカシ。
倫子と過ごした形跡を入念に隠滅し、シャワーを浴びソファで待機する。
寿司か焼肉でも食べにと思っていたが、運転疲れと酔いで酷く眠い。
ホテルの部屋のチャイムが鳴ったのは、午前3時近くだった。
学生らしい私服に着替えた恭子を、バスローブ姿で部屋に迎え入れる。
そっと抱きしめてみるが、抵抗はない。
まわした腕のタグホイヤーを見て、タカシは考えた。
美しい恭子と過ごすこれからの時間で、選択肢は2つ。
このまま一気に押し倒し、行為に耽るか。
次の機会にと、キスまでで抑えておくか。
渋滞を考慮し、出勤時間に間に合うよう逆算すると、5時にはチェックアウトしないと。
仮眠は諦めるとしても、あと2時間もない。
仕事を上がったばかりの恭子には悪いが、食べ歩いている余裕は無い。
タカシなりのポリシーで言えば、美人とのキスはそれ以外とのエッチに勝る。
美人とはすぐにエッチせず、ときめく気分を長続きさせたい。
子供の頃から給食でも好きなものは後に残すタイプだった。
何より、この出会いは大切にしたいと考えていた。
遠距離で地の利が無いことと、恭子が学生という点は気になるが、問題としない。
しばらくは京都に通うことになりそうだ。
「夜のお店に入るのは、やめて欲しいんだ。
君は学校があるだろうから、できる限り僕がこっちへ通うよ。
他の男とは縁を切ると、約束してくれるかい?」
うなずき微笑む恭子の薄い唇に、そっと口を合わす。
やはり運命的な出会いだと思った。
タカシの身体は脳内物質の分泌により跳び上がるほどだった。
「ところで、お小遣いは幾らくれますか?」
無邪気を装う笑顔の恭子に、美しい真心を期待したタカシ。
出逢った場所が飲み屋であること、学生であってもお水はお水。
素性は隠せるものではないらしい。
冷静になってみれば、いいようにたかられる男のひとりにすぎない。
この出会い、やはり最初から間違っていたようだと恭子にタクシー代を渡し
仮眠することにしたタカシだった。
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2011/12/18 11:54:11