「ポルシェは難しいから」
昔カレが乗っていたポルシェが、986と呼ばれるタイプと知ったのは最近のこと。
いつもそう言ってたけれど、実際に運転してみて難しいと思うことはなかった。
この前まで付き合ってたカレのポルシェは、996と呼ばれるタイプ。
これまた何度か運転させてもらったけれど、特段難しいと感じることはなかった。
「ポルシェはドライバーを選ぶ」って本当か?
都市伝説のようなものなんじゃないだろうか。
カリスマのように、一部の人にしか所有できないことで成り立っている伝説では?
「RRは加速中にステアリングを左右に動かしても直進して曲がらない」とか。
「前が軽く200キロを超えると前輪の接地感がなく浮き上がるように感じる」とか。
なるほど、とイメージが湧く点がもっともらしい。
「試してごらんよ」
前のカレは笑い飛ばすことはせず、サーキットを勧めてくれた。
広い駐車場で、強烈な加速中にステアリングを切ったら旋回した。
コース上で230キロを超えても、接地感はしっかりある。
あたしの聞いた「都市伝説」は、嘘だった。
カレラ乗りのカレは、楽しそうに笑っていた。
付き合っている彼女のあたしに、自分のポルシェを惜しげもなく運転させる。
そんなカレの凄さに気付いたのは、恥ずかしながら最近のことだ。
相手の立場になって物事を考えられるか。
それには気持ちの余裕と客観的な常識が必要だ。
あたしを見守ってくれていたカレが、大切な存在だと気付くのが遅かった。
今のカレは、最近アウディTTを買った。
どこかポルシェに似たアウディのスポーツカーだ。
クルマが好きで、特にドイツ車に強い思い入れがあるみたい。
「運転してみてもいい?」
あたしが聞くと、しばらく悩んだ末にカレが答えた。
「保険の限定を解除するから、結婚しないか」
買ったばかりのこのTTを、サーキットに持ち込んでもいいと言ってくれるカレ。
「喜んで」と答える余裕が、今のあたしにはある。
Posted at 2011/12/25 15:26:42 | |
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