一生結婚しないんじゃないかなと、今も思っている。
容姿や機会とかじゃなく、生活することに冷めてしまっているから。
子供はひとりくらい産んでおいてもいいかなとは思うけれど。
ひとり暮らしをしていても、実家のことばかり気になっていた。
父に癌が見つかってからは特に、できるだけ里帰りするようにしていた。
大好きだった父が亡くなり、七七日が済み、1周忌が済んだ頃、
ぽっかりあいた胸の隙間に彼が入ってきた。
アクアを見にくる人が絶えない、ここトヨタの展示ブース。
仕事帰り、彼との待ち合わせは1階で。
その後は、上の階で食事をするパターンになっている。
ヴィッツのボディに初期プリウスのエンジンを載せ、燃費は最高レベル。
なのにどうってことないクルマと感じるのは、簡素な内装から受ける印象か。
機能性重視で移動手段に特化とは、まさにカイゼンのなせる技と思う。
名古屋駅前、ミッドランドスクエアにあるトヨタ自動車ショールーム。
この日は2日間だけということで、2台のクルマが運び込まれていた。
それぞれの名前は、AE86とハチロク。
AE86ってのは、昔のカローラレビンとスプリンタートレノのこと。
違うクルマなのに、同じ型の名前なのだそうだ。
当時、若者に人気があった伝説のクルマらしい。
その愛称からとった新しいハチロク。
今年の主力商品として全トヨタ販売店で売り出されることが決まった。
発表はされたものの、納車自体はもう少し先になるのかな。
「あれ、ちょっと待って」
やってきた彼は私に目を向けたあと、すぐに後ろへ視線を送る。
「おお、レビンじゃん。俺、乗ってたよ」
そっちですか?
新型のハチロクではなく、古いクルマに見入ってる彼。
目の輝きが、いつもと違う気がする。
すぐ横に、割腹のよい中年男性が部下らしいスーツ数人を引き連れ立っている。
すだれ頭のオッサンだけれど、彼と同じように目が輝いている。
なんだか凄くイヤな気分になった。
革の上下を着た男性が、スーツ姿の若い女性を連れて見入っている。
秘書らしい女性は全く興味がないようで、時間をやたら気にしている。
彼もセレブっぽいが、歳は見かけ以上にいってるのだろう。
「リトラクタブルヘッドライトのトレノに乗ってたんだ」
子供のような目で、古く赤いクルマを眺める中年組。
三つ揃いのスーツを着たオッサンたちが、堂々と取り囲んでいる。
「ちょうど世間でビデオデッキが売り出された頃でさ。
ダチが買ったってんで、それがソニーのベータでさ。
ドリキン土屋観て、夜中に峠走りに行ったもんよ」
4階の蕎麦店に入り、カウンターで嬉しそうに昔話を語る彼と私の歳の差は21。
バツイチの彼には高校生の子供がいるが、会ってはいないと言っていた。
笑顔で受ける私も若くないが、意味不明な単語がこうも並ぶと不安だ。
「軽井沢シンドロームに影響され、ジープ買うかゴルフにするか悩んでさ。
ホンダからプレリュードやブルドッグ、バラードスポーツが出るし。
悩んだ末に買ったのが、このハチロクだったんだ」
ノスタルジーもわかるけれど、新しいハチロクのほうがいい気がする。
ただ、結構高いこのクルマを同世代の男の子たちが買うだろうかと思うと、
まだアクアを選ぶ方が正解な気がするのは私だけだろうか。
言ったらまた結婚が遠のきそう。
って、既に無理かも。
Posted at 2012/02/11 17:27:15 | |
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