「何? これ」
待ち合わせた彼女に、開口一番、眉間に皺を寄せて言われたセリフがこれ。
「これ」とは、今日届いたばかりの日産GT-R。
「このドアノブ、変」
駐車した窓越しに 彼女のつぶやき。
スペシャリティカーらしい凝ったデザインのドアノブは、実際わかりにくい。
知らないだけかもしれないが、これまでにこんな変なドアノブを採用したクルマを
国産車では知らないし、聞いたこともない。
強いて言えば、デザイン最盛期にマツダが出した ユーノス ロードスターか。
いや、これ、超グッドデザインだと思う。
彼女は前後を眺めた後、慣れない動作で助手席に入ってきた。
「右ハンドルだし、日産のマーク。
でも、国産車って感じじゃないし」
この前は、ホンダ オデッセイを中古で買って3年乗った。
多くの人を乗せる訳でもないのに、6人乗りなのを除けば良く走る車だった。
オートマチックのオデッセイだが、ドライブを楽しいと思ったのは確かだ。
仕事の景気は良くないが、勤務先は一部上場だし、年収も1000万ちょっと。
クルマにさして興味はないが、たまにはクルマ雑誌を眺めたりはする。
外車なんて、すかしてて論外。
ラージなミニバン乗ってるジャージ姿のオヤジも、軽のくせに追い越し車線飛ばしてる
無知丸出しな奴らも馴染まない。
俺は俺。
ハーフパイプで滑るスケボーのスタイルも、人とはつるまない。
カッコつけるの無意味だし、真剣じゃなきゃ楽しめないって。
そんな俺が「GT-R」に出会ってしまった。
黒いドライバーズシートに乗り込むと、正にそこはコクピットだ。
メーター類は、ほとんどナビ画面に分割された映像で表示される。
今までに経験したことのないステージがそこにあった。
降りて外に出る。
威圧感のある風貌は、タイヤが20インチと大きいからか。
285 35/20 異常に太いタイヤが綺麗にボディに収まっている。
まるで未来のロボット、ガンダムのようだと思った。
これが日本人が考えるクルマの未来形。
いや、日産だから出来たクルマだろう。
「あんた、マトモに私と結婚する気あんの?
これ、いったい幾らすんのよ!」
結婚資金にと貯めていた金を頭金にして、オデッセイを下取りに出し、
それでも数百万のローンを組んだが、こいつには言えない。
「俺はオマエと結婚したいが、結婚するために生きてるんじゃない。」
って、言えねえよな。
Posted at 2009/12/09 19:25:19 | |
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