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無伴奏チェロのブログ一覧

2012年04月10日 イイね!

Copen って どうよ

Copen って どうよ






教育大学時代からの友人と、名駅に呑みに来ている。


ヤツは公立中学の教師で、オレは予備校の講師。
前回呑んだ時は、オレが連れてきたチューターをヤツに紹介した。
どこまで行ったか関知しないが、まだ繋がってるらしい。


今回は、ヤツが同僚という女性を連れてきた。
専門は英語、担任も部活も受け持っているという。
背が高く細く、いかにもスポーツが得意ですといった印象だ。


「私、クルマ大好きなんです。特にスポーツカーっていいですよね。
 手足のように動かす、そこはやっぱりミッションでしょ」


オレのカレラがミッションと知ってのことか、それともヤツの入れ知恵か。
とりあえずは3人、クルマの話題で盛り上がった。


「私の愛車コペンも、ミッションなんですよ。
 よかったらぜひ一度乗ってみて下さいね。
 私も一度でいいからポルシェって運転してみたーい」


なーんて目を潤わせ露骨に言われたら、お約束でしょ。
持ちモノを褒められて嬉しくない男なんて、いない。
翌週、彼女をドライブに誘うことに。




吞んだ時、海岸線をドライブし食事までは話の流れになっていた。
当日、市内で彼女との待ち合わせは、夕方の5時。
ドライブと軽い食事で、2、3時間程度のつもりで。


約束の時間に少し遅れ、サイドガラスを指で叩く笑顔の女性。
前回のパンツスーツとは違い、短か目のスカートが嬉しい。
カレラの助手席に乗り込んだ彼女の、最初のセリフがこれ。


「せっかく土曜のデートなのに、ごめんなさい。
 明日は部活が早いので、日付けが変わるまでには送って貰えますか?」


まったく意表をついたソノ気発言。
当然、オレのナビはフル回転でレストランからホテルへのルートを探す。
インター近くのラブホでいいだろうか、戻ってシティホテルにすべきか。


そんな思惑は微塵も顔に出さず、まずはゆっくりと発進。
都市高速を降りて、産業道路を南下。
明るいうちに運転させて欲しいといっていた彼女の要望に応えるべく、
広い路側帯にウインカーを出して駐車する。


「ここからしばらくは真っ直ぐだから、運転してみる?」

待ってましたとばかりに微笑む彼女と、席を交代。


「クラッチって、左足ですよね?」

尋ねるというより、確認のつぶやきだろう。
シートポジションを直し、クラッチを踏みこんで、ショートレバーを動かす彼女。

「実は左ハンドル、初めてなんです。
 あ、でも、ミッションの左右の向きは一緒なんですよね」


それってペダルが左右対称だったら、違う意味で面白いかも。
シンプルな質問も楽しいし、誰にだって最初はある。

「ウィンカーとウォッシャーは逆だけど」と言った矢先に、ワイパーが動いた。



「行きます」

と、バックも振り向かず、いきなり発進する彼女。
加速でシートに押さえつけられた時、いやーな予感がした。
スパッとつないだ1速で6千回転まで引っ張ると、ダブルクラッチで2速へ。


「あってますよね、これ、2速で」

はい、あってますよ。
もしお隣りの4速だったら、2千回転以下のはずですから。


2速も6千回転近くまで引っ張ったままの彼女。
既に制限速度はかなりオーバーしてますが、と声をかけて良いものかどうか。
どうやらスピードメーターを見る余裕が無いらしい。


「ちなみに、今、何キロですか?」

やっと聞かれて答えると、

「ふーん。だったら3速は入れられないかな」

って、この状態で走り続けるの?


アクセルのオン・オフで、前後にぎくしゃくと揺さぶられるオレ。
足を踏ん張るには遠すぎるし、手を置く場所も無く、シートベルトを握り締める。
片側2車線のほぼ直線とはいえ、右助手席のオレは常に白線上のままだ。


サイドミラーで確認すると、後続車は2車線ともかなり間隔をとってくれている。
そりゃ誰が見たって危険なクルマだろう。
近寄りたくない気持ちはよくわかる。



凄く長く感じたけれど、慣れぬまま10分も走っただろうか。
路側帯に設けられた駐車場へ誘導し、停まるよう指示。
停止と同時にサイドブレーキを引いたオレの左手は、べっとりと汗をかいていた。


「思ったより難しくないんですね。エンストもしなかったし」

彼女がこちらを向いた時、血の気の引いたオレの顔は青白かったに違いない。
酔った。 それも自分のクルマで。


外へ出ると身体は重く、背中に冷たい汗をかいていた。
交代し席を戻すと、ルームミラーがオレの位置のままだと気付いた。
つまり彼女って、一度も後方確認してないってことだよね。


緊張で力が入っていたせいだろう。
クラッチを踏みこむ左膝が震えている。
ソノ後どころか、このまま一緒に食事をすべきかどうか考えている。













Posted at 2012/04/10 15:23:13 | コメント(7) | トラックバック(0) | 日記
2012年04月06日 イイね!

陸王 って どうよ

陸王 って どうよ









「そりゃあ、あんた達子供に本当のこと言えるようなお父さんじゃないわよ」


四十九日の法要の席で、酔って話し出した叔母を誰も止めなかった。
6人兄弟の長男である親父が亡くなったいま、叔母が最年長者だからだろうか。


「あんた達のお父さんはね、長男でそれはそれは好き勝手なことし放題の、
 やりたい事ヤリ放題で育ったの。
 典型的な馬鹿殿様ね。

 こんな田舎でも、昔は由緒ある家柄だったのよ。
 名鉄電車でここが終点だった頃、駅降りて『松浦さんちはどちらですか』と
 そこにいる誰に尋ねても知らない人はいないくらいにね。

 新幹線もない、大学行く人自体少ない時代に、兄弟全員東京の学校に下宿で
 行かせてもらってね。
 なのに、兄ちゃんは就職もせず家に戻って来て毎日遊んでるから、
 お父ちゃんが『トラック買ってこい』ってお金渡したのよ。

 そしたら夕方、バイクに乗って帰ってきたの。
 『陸王』って言ったかしら、大きな音のするオートバイでね。
 それ見て、お父ちゃんが怒ってね、『明日返してこい』って。
 
 そしたら何と、その明け方に出てっちゃったのよ。
 『旅に出る』ってメモ書き残して。

 しばらくして、和歌山の南紀白浜にある旅館から『金送れ』って書いた
 電報がお母ちゃんに届いてね。
 散歩中も中居さんが逃げないか警戒して離れないって言うから爆笑よ」



遺品の整理をしていたら、バイクに乗った親父の写真が出てきた。
オールバックの髪型に、下駄履いてバイクに跨ったもの。
メグロ、キャプトン、インディアン、珍しいバイクも写ってる事から察するに、
数台乗り継いだのだろう。


親父は、僕ら家族にさえ1円の金も遺さず亡くなった。
どこかに借金や債務保証があるに違いないと、親族たちが真顔で語る。
3ヶ月以内に相続放棄の手続きをするよう、次男であり弁護士の叔父にも言われた。


僕が叔父の事務所に入ったばかりの頃、法務局で財産目録を取ったことがあった。
抵当権には百を超える不動産が担保され、職員がホチキスで綴じるのに苦労していた。
こんな分厚い謄本初めてと呟いた台詞が忘れられない。


いつの間にやらそんな財産を全て使い果たし、何ひとつ遺さなかった親父だけれど、
一族の長たる貫禄だけは最期まで保っていた。
祭りでも食事でも、ツルの一声で親族全員が集まった。
それも、もうないだろう。



生きざまを見せる男の背中ってのは、何歳の時の背中を言うのか。
息子の僕に、何を伝えたかったのか。
古いアルバムの写真を見ながら、ひとり考えてみる。










Posted at 2012/04/06 14:56:09 | コメント(10) | トラックバック(0) | 趣味
2012年04月01日 イイね!

Mercedes-Benz SL って どうよ

Mercedes-Benz SL って どうよ







つくづく、学校には縁がないと思っていた。


中学まで成績優秀だった俺は、進学するつもりだった難関校を急遽変更。
不本意ながら自宅から近い高校へ通うよう、親の説得に応じたものの、
自ら選べなかったことへの反発から、無気力で荒れた3年間を過ごした。


おまけに、大学受験寸前に家業が倒産し、家は破産。
働いてくれるかと親に言われ、あもすもなくその日から働く覚悟を決めたが、
その後の事情で、近所の私立に籍を置きながらバイト三昧の日々となった。


親に言われるまま、運命には逆らわず、なすがままに働いた。
家族で一致協力し合い、家計の為に休みなく時給を稼ぐ仕事に励んだ。
多忙で一所懸命だったけれど、その実、無気力な日々を過ごしていた。



そんな時、一般教養の授業で物理学のA教授に出会った。
駐車場にベンツのSLで乗り付け、態度はでかく、授業中も言いたい放題。
三流私学の全くヤル気のない学生を前に、A教授は吠える。


「僕の書いた本はブルーバックスのベストセラーにもなってるから、
 他の教授達みたく君達に購入を強制しなくても全く困らないよ」


そう言われても、買って読まないと試験はその本から出るに決まってる。
上から目線の見下したセリフに、学生から嫌われるのは当然。
でも、授業はわかりやすく、個人的には好感が持てた。



「授業料の高い私学の学生が、授業をサボってバイトだなんて、愚の骨頂。
 時給に換算する以前に、選択の誤りに気付かない愚かな行為だ」


なるほど、ふてぶてしくも堂々と語るA教授の言葉に、もう一度、
おのずと勉強したくなる大学を受験したいと思うようになった。
休講や空いたコマの時間を活用し、翌年センター試験を受けたのは自分の選択だ。
合格通知が見たかっただけのことと言いつつも、自らチャンスを呼び込んだ気がした。


自分で決めたことってのは、言い訳できず、後悔なんて無駄なこと。
自ら決断することで、行動や言動が責任をともなうことを知った19歳の俺。
己の道は己で決める、自主自立して大人、そんな当たり前のことに気付かされた。



あれから転学して卒業し、就職後に独立して10年。
ポルシェに乗る今も、ベンツのSLを畏敬の念をもって眺めている俺。
10年の歳月を経て、モデルチェンジをしてもSLらしさを失わない姿勢は、
メーカーのプライドを感じさせてくれる。


恩師なんて言葉を口にするのも恥ずかしいが、必然の出会いだったと今も思う。
時として人の言葉ってのは、心に響くものなんだよな。















Posted at 2012/04/01 19:57:05 | コメント(4) | トラックバック(0) | 暮らし/家族

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