デッドニングついでにオーディオの変更を、ショップの友人F君に依頼。
2、3日預からせて欲しいと言うので、代車を借り受けることにした。
F君の家はショップとは反対方向になるため、朝、僕の家に立ち寄ると言う。
代車は何がいいかと聞かれ、何でもいいから小さいのをと答える。
その日、僕の家にやってきたF君の足は、なぜかオートバイ。
それも不思議な形をした大きな外車。
まず目につくのは、赤いブレーキにブレンボのロゴ。
背が高く、それでいてオンロードのタイヤはかなり扁平で太い。
身長が高いF君が跨るからか、馬のようでさまになっている。
出勤前で歯磨き途中だった僕。
何のつもりかと口ごもりながら尋ねようとしたものの、魅入ってしまった。
黒いシャーシーにオレンジ色のボディラインが実に美しい。
リアにはツアラー用に脱着式のサイドボックスが付いている。
タンクにはKTMの文字。
これって、あのクロスボウを創ったオーストリアの会社じゃないか。
「ポルシェも面白いけれど、たまにはバイクも楽しいよ」
って、言われなくてもバイクの楽しさは知ってるつもり。
学生時代をバイクと共に過ごした経験がある。
が、結婚後、久しぶりにバイクを手に入れようとして妻と大喧嘩。
ふたりで子供を育て家庭を築いてゆこうという決意に欠けているのではないかと
両親にまで注意され、購入を諦めた経緯がある。
そんな僕らの過去を知るはずもないF君に、説明をするのは野暮ってもの。
快くキーとヘルメットを受け取り、ポルシェの鍵を渡す。
特に必要な代車でもないし、そのままバイクを預かることにした。
家に入り、妻に説明する。
「バイクは乗らないよ、預かるって言ってもほんの数日の間のことだし。
何より、事故でも起こして怪我したら大変だしね」
僕とほぼ同時に出勤する妻も、慌ただしく身支度をしながら聞いている。
「あら、いいんじゃない、久しぶりにバイクに乗ってみるのも。
もう子供も高校生だし、私は気にしないわよ、あなたがひとりバイクで旅に出ても」
必要とされていないのか、夫の役割が終わったのか。
何かあっても妻が困らないようにと、遺言代わりのエンディングノートもつけてある。
家族で旅行もしなくなり、これからは夫婦でと思っていたのは僕だけ?
最後は喰われる雄蜘蛛ってのも、雌の変化に気付かないから幸せなのかも。
Posted at 2012/08/05 17:22:06 | |
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