
もうすぐR32ともお別れ・・・
R32へのオマージュとして、別の場所にあったブログ記事を再掲します。
----------------------------------
R32の心臓は、ご存知のとおり6気筒エンジン。
しかも世界で唯一の狭角15度V6。
なんとも、ヘンテコなV6なのだ。
V6 3188cc
241ps(177kw)/6250rpm
32.6kg・m(320N・m)/3200rpm
もともとは、1991年11月に発売されたゴルフIIIのVR6に搭載されたものがベースになっていて、基本設計は結構古いエンジン。そういえば、alfaの147GTAや156GTAのV6も基本設計はもっと古い。エンジン開発には手間と資金がかかるので、どこのメーカーもそれなりの年月使い続けるようだ。
ゴルフI&IIでコンパクトハッチの礎を築き、GTIでアウトバーンの格差社会をぶっ壊したVWは、少し大きくエレガントになったゴルフIIIで、優雅なツーリングマシンを作りたかったらしい。
でも、世間の度肝を抜くにはヤッパリ何か隠し玉が必要。そこで、「あのゴルフに6気筒?」作戦を展開した。
FF車なのでエンジンは勿論横置き。直列6気筒ならエンジンルームの幅が足りない。60度や90度のV型6気筒ならエンジンルームの奥行が足りない。
ならば、コンパクトなV型6気筒を作っちゃえ。という訳で、出来上がったのがこの狭角V型6気筒エンジン。実際、少し幅があって大きめの直列4気筒エンジンくらいの大きさ。
一次・二次振動や等爆、フリクションロスなんか無視。滑らかな回転なんて構造的に無理無理。
持てる技術力誇示のためか?技術屋の酔狂か?それともゴルフへの愛ゆえか?とにかく、こうやってヘンテコV6は誕生した。
当時のスペックは、2791cc、170ps/5800rpm、23.9kg・m/4200rpm。
因みに同時期に発売されたBMW325iのスペックは、2493cc、192ps/5900rpm、25.0kg・m/4700rpm、ベンツC280のスペックは、2799cc、197ps/5800rpm、27.0kg・m/4800rpm。
やはり他のエンジンから比べると少し控えめなエンジンだった。(もちろん数字上のスペックだけが全てではない)
しかし、ゴルフIIIVR6は、ロングツーリングや余裕のある走りを好む向きにおおいに受けたようだ。また、このエンジンは一部改良してコラードにも搭載され、スポーツクーペの心臓としても活躍した。
時代は流れ、1998年にゴルフIVが発売された。発売当初は直列4気筒のみのラインナップのみだったが、しばらくしてV6から1気筒切り落としたV5を搭載したゴルフ&ボーラが発売された。排気量は2324ccで170ps(125kw)/6200rpm 、22.4kg・m(220N・m)/3300rpmのスペックだった。さらにヘンテコなV5だが、フィーリングはとても軽く、実用エンジンとしては申し分のないものだった。
ゴルフも4代目になると、コンパクトハッチから少し背伸びをしたものに変わっていた。初代に比べると大きく重くなり、栄光のGTIもトリムラインの一部に埋没し、ATだけでなく本国ではディーゼルエンジンも選べたとか。
そこで、当時フルラインナップ化とブランドイメージ向上を画策していたVWは、またまた世間の度肝を抜くことを考えた。でもリストラの嵐が吹き荒れる中、新規に開発を始めるわけには行かない。目に付いたのがお蔵入りになりかけていたVR6エンジン。新たなシリンダヘッドを得て、動作的にはDOHCとなったこのエンジンは、可変バルブタイミングなど最新の技術で唯一無二の孤高の存在として復活した。
思いのほか良く出来上がったエンジンに、4モーションと専用の足回りを組み合わせたのがR32。
ニュルでの調整の後2001年に発表されたR32は、マイルドになったゴルフに鬱屈していた一部のユーザーに熱狂的に受け入れられたようで、日本でも発売と同時に完売状態となった。かく言う私も、発表日(発売日ではない)にディーラーに駆け込んだものの、6ヶ月の納車待ちを食らってしまった。
R32に搭載されたV6エンジンのフィーリングは、直列でもなく通常のV型でもない独特なもの。
BMWの330iエンジンN52B30Aが、精密機械のようにシュワーンと高回転までよどみなく回るのに対して、R32のBFH V6エンジンは、家庭用カキ氷機のようにガガガーと高回転までぶっ壊れそうになりながら回る。
意外と回転落ちも速く、クラッチを切った瞬間に一気に回転が落ちるので、シフトアップ時にガクガクなる事もしばしばあった。慣れの問題だけどはじめは戸惑ったものだ。
エンジンが冷えている間は、ざらついたフィーリングが気になるものの、一旦暖まってしまえばゴキゲンなエンジンに変身する。何処からでも湧き上がるトルクの塊は、どんなシーンでも余裕の走りを楽しむことができる。洗練さは無いものの、ドカーンと豪快な味付けのエンジンなのだ。
ヘンテコV6は、この後ポルシェ:カイエン、VW:トゥアレグ・フェートン・イオス、アウディ:A3・TTなどに搭載され、第一線で活躍中。
親戚にW8、W12、W16エンジンなんてものもある。最新パサートに搭載のV6は更に狭角10.5度らしい。どうやらVWはヘンテコなものが好きらしい。
ブログ一覧 |
R32(GOLF R32) | 日記
Posted at
2009/12/17 03:12:11