
500E/E500のミニカーは、現時点で3種類(カラーバリエーションを含めると4種類)存在している(量産品に限る、ただしハンドメイドモデルでも見たことはないので、もし存在するとすればスクラッチ=ワンオフだろう)。
これを多いと見るか少ないと見るかは微妙なところだが、そもそもベースのW124のミニカーも決して多くはないので”まあまあ”といったレベルか。同時代のライバルBMW M5(E34)に比べると、まだマシかもしれない。
ということでモデルの発売順に、現時点での全モデル紹介およびレビュー。なおスケールはすべて、ミニカーの標準スケールといえる1/43。
(1)ミニチャンプス旧金型
この中で唯一、500が現行車種である当時に製造されたもの。1992年カタログにて予告が入り、1994年カタログでは試作品と断った画像が、1995年カタログでは市販品画像が掲載されている(もっとも1994年と1995年画像で違いがあるわけではない)。この時期はまだ購入品のリスト化を行っていなかったので、日本での正確な発売時期はもはやわからないが、おそらく1994~1995年のはず。
カラーバリエーションはブラック/グレー内装(品番:MIN 3240)とアンスラサイト/ブラック内装(MIN 3241)の2種類が用意された。なおこの当時のミニチャンプスは現在とは違い、色違いがある場合は同時に発売していたので、どちらが古いということはない。
旧金型版のミニチャンプス製124シリーズはW/S/C/A124とすべてのボディバリエーションが用意されたが、この500はノーマルのW124とは金型が異なり、きちんとフロントオーバーフェンダーやフロントバンパーは再現されている。つまりエンブレムだけ”500E”にした手抜きモデルではなく、パッと見た瞬間に「あ、500だ」とわかるレベルには仕上がっている。発売当時はわりと感動したものだ。
ただし15年前のミニカーであるという事実はいかんともしがたく、細部の再現性が現代レベルではないことはともかくとして、特にリア周りの印象がよろしくない。もっともリア周りの造形がよろしくないのはノーマルW124でも同様なのだが。
逆に古いモデルならではの特徴といえるのは、ボディだけでなくシャシ側も金属製であること。そのため見た目よりもずっしりと重いのは、人によっては嬉しいかもしれない(←自分)。
またブラックはソリ黒ではなく黒メタではあるものの、ブルーブラックではなく普通の黒メタといった印象。ノーマルW124ではもっとブルーブラックっぽいグレードもあるため、そちらにしてほしかったなあ、という感じ(なお箱の色表記は、黒メタだろうがブルーブラックだろうが、すべてBlack)。
(2)スパーク
ここからは近年発売されたもので、これは2008年12月に日本でも発売されたモデル。スパークは近年急激に成長したMinimax社が擁するブランドのひとつで、ミニカーでは一般的なダイキャスト(金属)製ではなく、レジン(樹脂)製であることが特徴。この500も当然レジン製となっている。
このモデルは発注書が出回ったときに”Mercedes-Benz 500E 1986”(品番:S1020)と謎の表記となっており、出てくるまで非常に不安だった。というのは500に興味がある人ならご存知だろうが、1986年にはまだ500は存在していないからだ。いったいどんな仕様で出てくるのかと思っていたら……出てきたのがこれ。
結局、発売されたモデルの表記は500Eのままだったが、現物はほとんどE500である。後期型フェイスの500は他に存在していないため、その意味では貴重なモデル化だ(ミニチャンプス旧金型ではフェイスリフト後のEクラスも各種出ているが、E500は存在しない)。表記がそのままということで不安だったリアのエンブレムも、書体違い含めきちんと”E500”になっている。
ただし現物をよく観察してみると、E500としてはちょっと微妙なところがある。まずは前後のバンパーレールがマットブラックになっている、これは後期型ならバンパーと同色ペイントが正しい。
次は細かいところだが、ドア側のウィンドウサッシ部分がセンターピラーを含め、ブラックに塗装されている。これもいうまでもなく、ボディと同色が正解。画像ではわかりづらいとは思うものの、デザインも実車と微妙に違う。あとこの画像見ていて気づいたが、ドアノブがボディ同色なのも間違いだな。
この2点はモデルがグリーンメタリックのためあまり目立たないのだが、シルバーなら相当違和感があっただろう。なお余談だが、カラー表記はカタログ上ではDark Met Blueとなっているが、現物は完璧なグリーンメタリック(おそらくマラカイトを再現したつもり、だと思われる)である。
……初出時はミスはそれだけかと思ってたんだけど、他の後期型W124モデルを眺めててもうひとつ気づいてしまったので追記。こいつ、トランクが前期型だ。並行(本国仕様)の94トランクってあまり見たことないというか、個人的にあまり後期型に興味がないので気づいてなかったが……ということは、500Eをベースとして94ボンネットと灯火類を交換し、エンブレムだけE500にした仕様(笑)?
さて考証ミスはさておき、手にした誰もが多分感じるのは、ヘッドライトの天地方向が足りないことだろう。妙に細目になっているため、なんだかW202っぽい印象を受けてしまい、これはこのモデルの欠点といえる。
ただしそこに目をつぶれば、全体としては悪くない。個人的に500が500っぽく見える最大のポイントはフロントオーバーフェンダーではなく、それに合わせて拡大されたフロントバンパーの広がり方だと思っているのだが、このモデルはその感じがよく再現されている。実車の前に立ってフロントマスクを見下ろしたときの、あの感じがよく出ているといえるだろう。多分にディフォルメが入った(これはスパーク製全体に見受けられる特徴のひとつ)モデルではあるが、実車の印象をスケールダウンしたという意味ではなかなかだ、と思っている。が、前期型トランクはちょっとねぇ。気づかなきゃよかったかな。
(3)ミニチャンプス新金型
近年、ミニチャンプスは一度モデル化した古いミニカーを、現代の技術で作り直している。その中に124シリーズも含まれ各種が新金型で登場したが、2009年4月には500も発売された。そのモデルがこちら。
店頭で最初目にしたときは、先行して出ていたノーマルW124にあまりよい印象を受けていなかったこともあってそれほどよくもなかったのだが、新旧並べて観察してみると、やはり進化していることはよくわかる。ヘッドライトレンズやインテリアといった細部がきちんと再現されていることはもちろん、旧金型では省略されていたヘッドライトワイパーも装備されている。どうでもよいが、屋根(サンルーフ)も追加された。
そしてボディフォルム自体も、店頭で手にしたときはちょっと物足りなさを感じたものの、オーバーフェンダーやフロントバンパーはきちんと500仕様。個人的にはもうちょいオーバーディフォルメでフェンダーを出してもよいと思うが、実車をスケールダウンするとこのくらいが適正なのだろう。ボンネットのプレスラインや、リア周りの造形は、これが一番実車らしいといえる。リメイクしただけの価値はある良作だ。またひっくり返して裏側を見ると、足回りも結構きちんと作り込んである。
ただし……こいつには致命的な欠点がある。なんとリアの”500E”エンブレムが未装備なのだ。
左が新金型、右が旧金型。旧でもきちんと再現していたのに、なぜ新で未装備なのか?最初はデカール貼り忘れのエラーなのかと思ったが、複数確認してもエンブレムありの個体は存在しないし、そもそもトランクリッドのスリーポインテッドスターはデカールではなく印刷処理のため、どうやら仕様のようだ。なお他の新金型124シリーズはすべてエンブレムはあり、なぜよりによって500だけがレスエンブレムなのか、非常に残念である。
既に述べたように、デキ自体はなかなかのレベルにあるこのモデル。あまりに惜しいので、知り合いに頼んで”500E”エンブレムを自作デカールとして制作してもらった。自作デカールを手がけたことがある人にはお馴染みのアルプスMDプリンタを使用し、画像データ自体は手持ちのエンブレムをスキャンして用意している。
自作デカールを貼った姿がこれ。
文字が読めるようにアップで撮影すると、いわゆるデカールのニス部分が目立ってしまうのだが、現物はそこまでではない。ついでなのでヤナセやMBJマーク、ナンバープレート、車庫証明(笑)なども再現した。
現時点ではカラーはこのブラックメタリック/内装ブラック(品番:400 037060)のみ。これもブルブラではなく、完全な黒メタなのは残念。新色は通常品としては予告されていないと思うが、1年ほど前からメルセデス特注品としてシルバー系が出る、ということにはなっている。しかしいまだに音沙汰がない。
なおこのモデルの欠点として、どうも製造時の処理がまずいのか、発売後わずか1年しか経っていないにもかかわらず、既に塗装が浮き気味になっているものが多い(というか、手元の数台はそう)。実はこれ、旧金型版でも同様(500に限らず124すべて)だったのだが、近年のミニカーとしてはちょっとお粗末で、真面目に作れよ……といいたくなるところだ、