
当たり前の話だが、愛知県豊田市に行くとトヨタ車の比率が高い。
レクサス、スープラ、ハチロク、アルテッツァ(目につくのがクーペやセダンばかりだが・・・)
当然、トヨタ本社へ行く時はトヨタ車で行かなければならないという、暗黙のルールもある。
浜松に行った時は、とにかく普段目にしないSX4やスプラッシュ、キザシを見る。
スイフトスポーツなんかそこたら中に停まっている。さすがスズキ王国だと思う瞬間である。
自動車メーカーは、当然自社の社員にも自社の車を買うことを強要している。
原則は自由のハズだが、他社のクルマは遠く離れた駐車場の使用を強いられたりするため不便を強いられる。
ある意味では、トヨタや日産のようなメーカーの社員は自分のライフスタイルに合わせてクルマを選択できるから幸せだ。その点で、本田も一通りの車種を備えている。マツダ、三菱、富士重は多少キャラが偏っているのであまり選択の自由は無い。
前述のスズキはラインナップが少ない中、特に中~大型の普通車に乗りたいものにとって選べる部分は少なく大変だろう。
ちなみに、スズキの場合は他社のクルマは寮に停められないので、1km程度離れた場所に駐車場を借りている人もいる。
それだけ、自社の売り上げに貢献しない人には冷たいのだ。
顧客の立場から見たら、自社の製品を愛しない人が「ウチの製品は最高です」と言われてもピンと来ないので、健全な考えだ。
そんな中で、私が知る限り本田社員でありながらホンダ車に乗らない”アンチホンダ野郎”がかなりいる。
例えば本田はバイクも作るメーカーとしておなじみだが、moto-GPのライバルであるドゥカに乗っている人の話はチラホラ耳にする。
ある人は、入社してすぐに本田のスポーティーカーを買ったが、本田社員が集まるサーキットの走行会に行き、同じ車種が山ほど走っているのを目の当たりにして嫌気が差したそうな。
今ではエボやBMW乗りになっている。
ある話では、本田技術研究所の部長クラスの人のお気に入りはポルシェであるというし、BMWの3シリーズを買ったという話も聞く。
ホンダ車に乗らない本田社員は、本田社員として失格かどうか。
あくまで私の面識の範囲で恐縮だが、ホンダ車に乗らない本田社員ほど私のイメージする「ホンダ人」に近い人がいる気がする。
当然、ホンダ車に乗る「ホンダ人」がいないという訳ではない。それに、あくまで私のホンダに対するイメージが先行している主観なので、違うという人もいるハズだ。
私がイメージする「ホンダ人」とは、今までの価値観(過去のホンダ車、過去の成功)を否定し、もう一度素直に見直せる頭の柔らかさを持った人、となる。言葉で定義すると少々違う気もするが大体はこういうイメージだ。
そんな人々が作るクルマだから、「君たち、まだそんな昔の価値観に縛られているんだ。じゃあお先に~」と言えそうな製品を作りヒットさせて来た気がする。例えば、スーパーカブがそのひな形ではないだろうか。
参考にした形状なんかはあったかもしれない。インスピレーションを受けた形状もあったかもしれない。それでもスーパーカブは長く愛された製品となった。
ホンダらしさを悪い意味で世間に知らしめた出来事があった。
2代目インサイトのシルエットだ。
2代目インサイト発表当時、ライバルのトヨタプリウスとシルエットが似ていた非常に前に長く伸びたAピラーを持ち、低く絞ったルーフラインもプリウスをイメージさせた。
コンセプトは燃費の良いHEVを安価に提供するという事であり、結果として燃費を稼ぐ為の形状はどうしてもプリウスに似てしまう。
世間は、2代目インサイトはホンダがトヨタのプリウスを真似たとひどく批判した。
トヨタがホンダのストリームを真似て、同じパッケージングのウイッシュを販売した時なんかはその種の話は一部の人々が冷ややかに語る程度で、マスコミに騒がれる様な事は記憶にない。
つまり、トヨタに期待するものとホンダに期待するものは根本的に違うという事を表し、例え真似ていなくても似たものを作る事はホンダがしてはいけないという暗黙のルールがあるのかもしれない。
ホンダが作るべきものは、今まで無かった何かだと。
そういう意味では、FFでここまで速いクルマが作れるという事を示したインテグラTYPE-Rはホンダらしいと言えるだろうし、世界一クリーンなエンジンと称されたマスキー法をクリアしたシビックはいかにもホンダらしい。
話は少々脱線するが、私はホンダではない新しいクルマを購入した。
理由は明確で、今のホンダに新車で欲しいと思わせるクルマが無かったからだ。
すでに販売終了したセダンのシビックTYPE-Rは私好みのフィーリングだったけれども、EK9を手放してまで欲しいとも思わなかった。
CR-Zは大いに期待しサーキットの試乗会に参加させてもらうなど購入意欲が出る様に気持ちを高めたが、同じHEVならば速さは劣れど軽さで優る初代インサイトの方がエキサイティングだったし、ミニサーキットでの無改造のタイム比較で実はインサイトの方が速かった現実を見れば燃費の良いインサイトの方を取るのが理にかなっていると考えた。
(戦略的なプライスが無ければ、500万円程度で売られてもおかしくない内容のクルマでもあったし・・・)
私はホンダが大好きだが、人からホンダ好き、ホンダマニアと言われる事は好きではない。
その言葉の裏には、好きだからこそ欠点にも盲目的になるという意味合いが含まれてそうだからである。
盲目的にならず、欲しいクルマを買う。そういうホンダ車に乗らない「ホンダ人」こそ、実は一番ホンダらしい仕事をする人材ではないかと考えた。
既存の概念に拘らず、それを捨ててホンダに無いもの、ホンダ以外にも無いもの、新しい挑戦こそホンダらしい。
内なる探究心ではなく、外に向かう探究心。その表れがホンダ車以外のクルマの選択とならないだろうか。
その上で、自分の欲しい今までホンダに無かったクルマを自ら開発し、購入したというLPLなどは大いにホンダ人だ。
何かの改良やモデルチェンジではなく、全くの新規開発車種の登場が待ち遠しい。
少なくとも私は、そのホンダの気概に惚れてこれまでホンダを買ってきたのだから。
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2012/01/09 00:28:54