2011年12月09日
2ch再生とタイムアライメント(4) サブウーハー編
タイムアライメントについて、なんとなくシリーズ物のような連載になってしまったが、最後はサブウーハー編である。サブウーハーのセッティングでよく聞かれることとして、
1) 後ろにあると、低音が遅れて聞こえる
2) 遅れて聞こえる分、TAで補正しなければならない
などの意見をよく目にする。ま、よほど大きな車でもない限り、運転席からリアラゲッジまでの距離は3m以内だろうから、音速を340m/sとすれば、時間的な遅れは9ms以下といったところだろう。オーケストラの演奏などでは、コントラバスはバイオリンのはるか10mぐらい後方から演奏されるわけで、この程度の時間遅れはどうってことないような気もする。
さて、50Hzの低音の波長はどのぐらいだろうか。物理学の知識によれば、波長λ[m], 周波数f[Hz], 波動伝播速度vとのあいだに、
v = fλ
の関係が成り立つから、この式から50Hzの波長を求めると、6.8m(なんと!)となる。つまり、低音の位相を半波長分動かして、音の干渉を調整しようとすれば、驚くことに3.4mもの長さでTAを調整しなければならないのである。確か、カロッツェリアのTA調整範囲は最大で3mだったはずなので、これでは50Hzの波長に対して十分な調整能力を持たないことになるのである。このように、サブウーハーのTAセッティングは、音の遅れと位相の問題の2つを同時に考えなくてはいけないという点が難しい。
個人的にいろいろと試した経験では、まずは位相をあわせることが第一だと考えている。つまり、ミッドウーハーとサブウーハーの音がうまくクロスして、ウーハーの低音、とくにクロス周波数付近の音がもっとも効果的に出る位相を探ることが重要なのである。ウーハーのセッティングのやりかたを整理しよう。
<サブウーハーのセッティング法>
1) サブウーハーの接続法(正相 or 逆相)を決める。密閉で12dB/Octならミッドと逆相、バスレフで12dB/Octなら正相。18dB/Octならその逆でよいはず(理由はいつかまた書きます)。
2) サブウーハーとミッドの合成音圧がもっとも高くなる位置をTAで探る。相互干渉で音が小さくなる位置を見つけたら、そこからクロス周波数の半波長分だけTAで移動させてやればよい。例えば、クロス周波数が80Hzなら、波長は4.25mなので, その半分の2.1mだけTAを使って仮想的に動かすと考えればよい。
3) サブウーハーのレベル、EQ調整などはすべて上記の1), 2)が済んでから行う。12dB/Octと18dB/Octの非対称クロスや、クロスオーバー周波数を意図的に離すなどといったことはまずは考えないこと。
さて、私の場合、64Hz, 18dB/Octの周波数特性でのクロスで調整した結果、TAは100cm前後になった。ここからさらに一波長分ずれた位置でもよいのだが、64Hzの波長は531cmなので、調整範囲を外れてしまうし、やや非現実的な値になるので、この値をつかうこととした。実際のウーハーの位置から考えると、100cmという値はやや足りないのであるが、それよりも位相が合うことを優先した結果である。
以上、4回ににわたってタイムアライメントについて述べてきたが、タイムアライメントは人間の耳への音の到達時間をそろえるだけでなく、位相を合わせることも考えなければならない。ちなみに10kHzの音の波長は3.4cmである。つまり、音の高域成分は、首をちょっと動かしただけで位相干渉が生じ、音がころころ変わるのだ。であるから、タイムアライメントのセッティングに1cm単位でこだわるなどということは、あまり意味がないと言えるのである。
追伸 人間は2つ(時にはそれ以上)の音源の音を2つの耳で聞いている。つまり、耳に入ってきた時点で複数ユニットから発せられる音の相互干渉が起こっているわけだが、それを脳内で再構成して、立体的な音場を認識しているのである。二つの目で見ているのに意識の上ではダブらずに見えていることと同様に、ステレオの音楽再生とは、ほんとうに不思議なものである。
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Posted at
2011/12/09 00:52:24
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