
暑い日が続いていますね。夏の照りつける太陽に、その膨大なエネルギーをひしひしと感じます。太陽の中心温度はなんと1500万度!太陽が輝いているのは、重力により閉じ込められたプラズマの中で4個の水素原子からヘリウムが生成される核融合反応によるものだそう。オーロラや雷、稲妻もプラズマでできていて、宇宙空間はほとんどがプラズマで満たされているとか。壮大な話ですね!
さて、大学共同利用機関法人自然科学研究機構・核融合科学研究所(岐阜県土岐市)にある大型ヘリカル装置(LHD)の見学会に参加したのが3月3日でした。その時の報告をしようと思いつつ、震災が起き、書かないままに時間が過ぎていきました。遅ればせながら、夏休みを迎える前にその時の様子を報告したいと思います。
この研究所は、2035年~40年頃の実現化を目指している核融合発電の基礎研究であるプラズマ開発の研究を行っています。プラズマと言えば薄型テレビを思いつきますが、身近なプラズマ技術としては、蛍光灯やネオンサイン、水銀灯、空気清浄機などがありますね!
「地上に太陽を」をスローガンに、核融合エネルギーは、東西冷戦の頃から国際協力で開発が50年にわたって進められてきました。実際の核融合発電炉では、1億度のプラズマの閉じ込めを目指しているそうです。 さて、見学会で最初にびっくりしたのが、装置の大きさです!写真でも、なんとなくこのスケール感がわかりますか?
ヘリカルとはらせんを意味する言葉だそうで、この装置は、らせん状にひねって成形した超伝導コイルを使い、ドーナツ型の磁場をつくっています。超伝導コイルのお陰で、電気抵抗による発熱が生じず、長時間にわたって継続運転ができるそうです。
下の写真は、真空容器の模型ですが、この中でプラズマが点く仕組みです。核融合を起こさせるには、プラズマを高温・高気密にして長時間閉じ込める必要があるとのこと。太陽は自分自身の重力でプラズマを閉じ込めていますが、地上で核融合を起こすためにさまざまな閉じ込め技術が試みられています。これはヘリカル方式ですが、他にトカマク方式、レーザー方式などがあるそうです。
見学会で説明してくださった武藤敬教授。この研究所では技術開発だけでなく、大学院生らの教育も行っています。
核融合エネルギーの燃料は海水中に含まれていて、重水素を利用します。海水を燃料にできるとエネルギー資源を自給することができるのは大きな利点ですね。
現在、ITER(イーター)という大型の実験装置が、日・米・中・韓・印・露・欧の国際協力のもと、フランス・カダラッシュで建設されようとしています。核融合発電に必要なプラズマ閉じ込め性能の最適化や制御技術の確立など、さまざまな実証実験や工学試験を行う予定だそうです。 建設期間が10年、運転期間は20年の計画で、水素プラズマ、重水素プラズマ、最後に重水素とトリチウムのプラズマでITERの目的である燃焼プラズマの制御実験が行われるそうです。
核融合発電は、放射線の安全上の対策が必要です。しかし核分裂と違い、核融合は核反応の暴走は起こらないといわれています。潜在的放射線リスクは、同規模の原子炉に比べると1000分の1程度と、相対的に小さいようです。しかし、核融合炉に含まれる放射性物質により被ばくすることがないよう、厳重に管理する技術や素材の研究開発が進められています。
「夢のエネルギー」と呼ばれ、革新的エネルギーに位置付けられている核融合発電ですが、とても難しい技術のため、難問課題がたくさんあるようです。しかし、世界のエネルギー問題解決に貢献すべく、将来的な実用化が期待されています。
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核融合 | 日記
Posted at
2011/07/05 17:01:02