
今回、北海道を訪ねた一番の目的は、磯焼けの回復実証現場を見学することでした。向かった先は増毛海岸と舎熊海岸です。
左の写真は、車で移動中に通った増毛駅です。JR留萌本線の終着駅で、高倉健さんが主演した「駅(ステーション)」の舞台になったことでも知られています。
線路を見て、「えっ」と思わず声が出ました。なんとも味ある風情の駅ですね。 素敵。
さて現在、全国の海で「磯焼け」が進行し、沿岸漁業に深刻な影響を与えているといわれています。磯焼けというのは、海岸に生えている昆布やわかめ、そのほかの多くの藻類が減少し、不毛の状態となってしまい、そのかわりにサンゴモという白く硬い殻のような海藻が、海底の岩の表面をおおう現象のことをいいます。
磯焼けの原因には、海水温の上昇や食害など、さまざまなことが言われていますが、増毛海岸の漁協では、磯焼けの原因は、山の腐葉物質や鉄分欠乏などが主な原因とする「栄養欠乏説」に立ち、海岸に施肥や鉄分を補給することで、豊かな海を取り戻そうとする藻場再生プロジェクトを行っています。この研究プロジェクトには、東京大学、新日本製鐵(株)などが参画しています。
藻場再生プロジェクトに関わる潜水士の渋谷正信さんが、増毛海岸の磯焼けの状況と回復への取り組みについて説明してくださいました。(渋谷さんは長いキャリアを持つ日本屈指の潜水士です。)
打ち上げられたサンゴモを手にとる渋谷さん。サンゴモは、白い石のようにも見えます。
増毛での藻場再生プロジェクトは、製鋼スラグと木材チップを発酵した腐植土を利用して鉄分供給ユニットをつくり、海に供給することで藻場の再生を助けるというものです。下の写真が軽炉系製鋼スラグですが、製鉄副産物で、天然の石灰石が起源であるため、海藻類が吸収しやすい二価の鉄やミネラルを多く含むのが特徴です。かつて二価の鉄は、森林から河川を通じて海に供給されてきましたが、近年の森林伐採やダムの造成で川からの栄養塩の供給が減少しています。プロジェクトで使用する鉄供給ユニットにより、海が不足している栄養を補っているそうです。
実際に船に乗って、磯焼けの現場や鉄供給を行っている現場を見せていただきましたが、防水したカメラでないと携帯不可と言われ、残念ながら今回撮影することができませんでした。水深2~3mの浅瀬で磯焼けが広い範囲で起きている状況がわかりました。かつては、海藻がからみつくほど豊かな海だったそうです。
増毛漁業協同組合の竹内廣中さんが、増毛における環境生態系保全活動モニタリング調査について、詳しく説明してくださいました。
きれいな海と豊かな海は違うとのこと。たとえば、何年か前まで魚の加工工場があり、排水を海に流していて、その工場の前は海産物がたくさん捕れる豊かな海でした。ところがその工場がなくなった後、磯焼け現象がおきて海藻が減少し、魚も以前ほど捕れなくなってしまったそうです。
この藻場再生プロジェクトで鉄供給をはじめてから一年以内にその効果が表れて、実証実験現場ではホソメコンブをはじめとした海藻群落の形成が見られています。今後も群落の遷移を追跡しながら、新たな施肥施設設置の効果を検証していくそうです。もっと詳しく知りたい方は、下記の情報を参照ください。
山本光夫特任准教授の磯焼けに関するレポート↓
「海の森」再生に向けて~鉄鋼スラグと腐植物質による磯焼け回復技術~
増毛漁業協同組合のブログです。↓
MOBA.WS藻場再生プロジェクト
あら、私のことも紹介してくださっているんですね。ありがとうございます(^.^)
Posted at 2010/08/14 14:21:19 | |
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磯焼け | 日記