いろいろと測定してみましたが、単純な気流で静的な抵抗を測ってるだけですので、この結果がそのままエンジン出力にはつながりません。
測定した結果からは、フィルターの違いよりもダクトやフラップの影響の方が大きいという事がわかってきました。
フィルターはどれでもエンジン出力には大きな影響はないようですので、好きな物を選べばよい事ということです。
では、ダクトの方はどういうものが良いのかという、難しい方のお話です。
あらかじめ断っておきますが、専門知識もなく計算ミス多発症の私には荷が重い話なのですが、今までの測定で性能が決まるわけではない、という事を書いておかないと不味い気がしてきたので頑張ってみます(^_^;)
ご存じだと思いますが、ダクトの役割は概ねこんな所でしょうか。
・エンジンの熱気を吸わず吸気温度低下によるエンジン出力向上
・慣性力により充填率が高まりエンジン出力向上
・吸気脈動によって充填率が高まりエンジン出力向上
吸気温度について
夏と冬でパワーの違いが体感できますし、サーキット派の方はタイムにも出ると思いますから、わかりやすいですね。吸気温度が10度下がると約3.5%ぐらいエンジン出力を向上できます。
ダクトによって、エンジンの熱気を吸わないようにするだけで、相応のパワーアップにつながります。
慣性力による充填率について
ダクト中を流れる空気の勢いによって、吸気バルブが開いた時に空気を押し込むという事です。
そんなものに効果があるのか、私も半信半疑な所があるのでちょっと計算してみました。
どれぐらいの空気を吸ってるの?
4000rpmでは 1.8(L)/2*4000(rpm)=3600L/分=60(L/秒)
6000rpmでは 1.8(L)/2*6000(rpm)=5400L/分=90(L/秒)
毎秒ペットボトルで60本分以上ですから、なかなかの量です。
ダクトを通る空気の速度は?
直径5cmのダクトで4000rpmのとき = 30.5(m/sec) 110(km/h)
直径5cmのダクトで6000rpmのとき = 45.8(m/sec) 165(km/h)
直径8cmのダクトで4000rpmのとき = 11.9(m/sec) 42(km/h)
直径8cmのダクトで6000rpmのとき = 17.9(m/sec) 64(km/h)
意外と速いですね。
ラムエア効果を得るためには、5cmのダクトだと4000rpmで110km/h以上からですが、8cmでは42km/hからです。この点だけに注目すればダクトは太い方が有利になります。
ダクトを流れる気流のエネルギーは?
ダクトが50cm x 5cmで4000rpm = 1.00
ダクトが50cm x 5cmで6000rpm = 2.25
ダクトが35cm x 8cmで4000rpm = 0.27
ダクトが35cm x 8cmで6000rpm = 0.62
(いちばん上を1としたときの相対的なエネルギー量です)
流速の二乗に比例し、長さに比例するところがポイントです。
エネルギー量が多いほど慣性力による充填作用は高まりますから、この点だけに注目すればダクトは細くて長い方が高性能な事になります。
例えば、長さ1m直径1cmのダクトの場合、6000rpmでのエネルギー量は112.5にもなります。
吸気脈動について
空気というバネを吸気脈動で揺らしたときに、うまくリズムが合えば端点での圧力が高まる事を利用して充填率を高めるものです。
これはパラメータが多くて一般化が難しい上、自分の知識では何とも算出できないのが残念(>_<)
概念的には、ダクトの長さに比例して短いほうが高回転向き、長いと低回転向きです。
一方でダクトのデメリットというと、
・吸気抵抗の増加によるエンジン出力低下
・慣性力により充填率が変動しエンジンレスポンスが低下
・吸気脈動によって充填率が低下しエンジン出力低下
などでしょうか。
吸気抵抗について
管を空気が流れるとき、内面との摩擦や粘性によって抵抗が発生します。これも計算が難しくて具体的な数字にはできなかったので相対的な関係になりますが、こんな感じです。
ダクトが50cm x 5cmで4000rpmのとき = 1.00
ダクトが50cm x 5cmで6000rpmのとき = 1.50
ダクトが35cm x 8cmで4000rpmのとき = 0.27
ダクトが35cm x 8cmで6000rpmのとき = 0.41
(いちばん上を1としたときの相対的な抵抗の大きさです)
流速とダクトの長さに比例して増加する所がポイントです。
この点だけに注目すれば、ダクトは短くて太い方が良く、できればない方が高性能になります。
慣性力による充填率の変動について
慣性力は充填率を高める作用がありますが、これは動いている空気は急には止まれない事を利用した物です。と同時に、止まっている空気は急には動けないのでレスポンスが低下する要因にもなります。
スロットルを閉じる操作をしても押し込まれる空気で回転数の低下が遅れる、開いても動かない空気で回転数の上昇が遅れるというターボラグと似たような現象で、スロットルの通りにパワーが付いてこなくなるという事です。
この点だけに注目すれば、ダクトは慣性力が小さくなるように、太くて短い方良く、できればない方が高性能になります。
吸気脈動による充填率の低下について
先ほどは、脈動によって充填率が向上すると書きましたが、逆の現象も起こります。
空気はバネですから、ダクトによって固有の周期が与えられます。この周期はエンジン回転数とは無関係に固定ですから、バネの周期と吸気の周期が合えば充填率が高まりますが、例えば1/2周期では逆に圧が低下して充填率も下がります。
また、ダクト形状や容積に関係する位相の問題もあり、単純に○○cmならXXrpmで効果的とはなりません。
以上のように、ある側面ではダクトは長くて細いほうが良く、別の側面では太くて短い方が良いのです。
その転換点をどのあたりに置くのかが、ダクト設計の肝でしょう。

よく言われている通りですね。
その点、純正のエアクリBOXは良くできてますね。
長く細いダクトによってそのメリットを享受し、ダクトの吸気抵抗が問題になる領域ではフラップを開いてデメリットを打ち消します。
2ZZに比べて1ZZが低回転域でのトルクが太いと言われるのは、ダクトの違いとフラップの開閉制御の違いの影響も大きいのかもしれませんね。
2ZZは1ZZよりも高回転まで回りますから、より多くの空気を吸います。エアクリBOXのフラップは同じですから、1ZZと同じダクトでは流速が速くなりすぎでデメリットが無視できなくなるため、太く短くなっていて、結果的に慣性力が低下して低回転でのトルクが低下している可能性はあります。