新聞記者

いつものシネコンでは上映されないため、青森市まで足を伸ばし、「新聞記者」を観賞してきました。
この映画に関しては、よく制作できたな、ということに尽きると思います。現政権と官僚の力関係、ジャーナリズムの衰退、個人の保身による社会正義実現の阻害など、現代社会の病巣をえぐり出しています。池井戸潤の作品のように、正義が勝つことなく終わるあたりも非常にリアリティーがあり(それはエンターテイメント性を低下させているとも言えますが)近年の邦画では希にみる重厚な作品になっています。

脚本：★★★★★
政府によって葬られた父を持つ女性記者と、内閣府に出向し、諜報活動にあたる官僚を軸に物語は展開します。散りばめられたエピソードは全て現実に起こったであろうことばかりで、激しい既視感を覚えます。作品がフィクションだと感じられなくなるほどに練り込まれています。松坂桃李演じる官僚の葛藤は、観客自身が考えなくてはならない問題でしょう。保身の為に社会正義の実現を阻害して良いのか？目の前の小さな炎がやがて社会全体を焼き尽くす大火になっていくことは、歴史が証明しているのですが。

キャスト：★★★★⭐
女性記者を引き受ける女優が日本にはいなかったのではないか、と思います。韓国の女優さんが熱演していますが、ビジュアル的にイモトアヤコに見えてしまい、やや残念です。松坂桃李はとても良いです。最後の葛藤から自身の矜持や感情を捨て去っていく表情の変化には感嘆させられました。本田翼はいつも通りの学芸会ですが、他のキャストは非常に高水準でした。