
トライアンフの新生クラシックスタイルのうち、排気量が最も従来モデルに近いのが、
このストリートツイン(900cc)です。エンジンの水冷化および、クランク角270度化は
ボンネビルT120と共通なのですが、排気量は900ccに抑えられています。
そして、エンジンパワーは従来の68psから55psにダウンした代わりに、
トルクが65Nmから80Nmに一気にトルクアップ。これには、エンジンの
ロングストローク化によるトルク発生ポイントの低下によって実現しています。
代わりにレブリミットの低下することで、最高出力は55psまで落ちています。

実はこのストリートツインですが、3回試乗し最終的に、タイガー及びタイガースポーツの
後釜として、我が家に来ることになった車両でもあります。
ストリートツインは、ボンネビルをはじめとするクラシックシリーズのなかで、
もっとも気軽に乗れる車両として開発されたそうです。そのため、従来のボンネビル(無印)に
対して、ホイールベースの短縮や車体重量の軽量化、ポジションのコンパクト化を施し、
操作性を大きく向上させてきています。
実際、ハンドルは低くて近く、シートも低くて細いため、これまでボンネビルシリーズに
体格が不足して乗れなかった女性の方でも、気軽に乗れるサイズに仕上がっています。
では、このバイクがレディース専用バイクか?と問われると、そうではないスポーツバイクの
素性がこのバイクから感じられるのが、このストリートツインの面白いところであります。
電子装備は、ライドモードを除きボンネビルT120同様に、スロットルバイワイヤー、
トラクションコントロール、ABS、スリッパークラッチが装備されています。
車重の軽いストリートツインのフロントブレーキは、シングルディスクになります。
また、ボンネビル(無印)同様に、メーターはシングルメーターになりタコメーターは
付属しません。
さて、エンジンをかけると中々元気な排気音が飛び出してきます。270度化された
ツインは、ドババババというボンネビルT120より少し音量が大きいような乾いた
音を立てて回ります。
走り出すと、少し初期反応の鈍いスロットルを開け気味にし、クラッチをつないでいくと
すぐに80Nm近くのトルクが湧き出てきて、元気のいいダッシュをしていきます。
走り出してすぐに感じるのは、車体の動きが前後左右自在に操れるように軽いことでしょう。
加速も減速も、旋回もとにかく軽く、乗っていて楽しくなってきます。
残念なのは、リアサスのダンパー容量が少し足りないようで、コツコツと振動する割には、
大きな入力があると沈み込みが大きくなってしまいます。コストとの兼ね合いでしょうか。
どんどん走っていくと、エンジンの特性のお陰で、タコメーターが不要と思えるような、
スロットル開度や回転数であまり特性が変化しない味付けがされていることに気付きます。
ジキル博士とハイド氏ばりに、二面性を持ったボンネビルT120とは、この辺の特性が
異なっており、ストリートツインはより気軽に乗ることを目的としたモデルであると
主張しているようです。
ワインディング区間では、タンクの細さからタンクのホールドが少し難しく、かかとで
引っ掛けて倒しこむ必要があります。ペースが穏やかな時は、あまり気になりませんが
少しペースを上げてみると、少し気がかりな点が出てきますs。
軽いので、初期旋回が決まりますが、開けて曲がるとなると、少し準備が必要です。
ステップ位置がT120より若干スポーティな感じで後ろにさげられているため、
タンクを挟みにくい構造になっているほか、リアサスが悪さをするのか、初期旋回・待つ・
リア沈めて加速とキチンと操作する必要があります。また、パワーがさほどあるわけでは
ないので、二次旋回にちょっと違和感があります。
膝を擦ろうとするとか、気軽に乗るバイクの範疇を越えなければ、この性格が顔を出す
事はまれだと思いますので、問題ないと思いますが・・・リアサスのリプレースを考える人が
多いんじゃないでしょうか?
トルクが高いので、スタートダッシュは決して遅くはないものの、エンジンが伸びないので
立ち上がり加速などは不利ですので、やんちゃ走りはほどほどに。
試乗から戻ってきて、じっくり眺めてみてみると、やはりコンパクトさが際立って見えます。
並べてみると、極端に小さいとは思わないのですが、乗るとコンパクトです。
新しいボンネビルシリーズのなかで、裾野を広げる役割をこのバイクは担っているんだなと
思わされました。
さて、ストリートツインの魅力のうちの一つに豊富なカスタムパーツがあると思います。
レッド・シルバー・ブラック・マットブラックのタンクカラーに、ベンチシート、フェンダーレス、
めっきクランクケースカバー、フライスクリーン、レザーバック、スワローハンドル・・・
最もオプションがラインナップされているのが、このストリートツインになります。
純正オプションは、ボンネビルシリーズ全体で、150種を予定しているとのことで
社外品やディーラーオリジナルパーツを絡めたカスタマイズ展開は、従来のトライアンフには
無かった新しい試みになります。
これらのカスタマイズを施して、軽快な走りでバイクに乗ること自体を楽しめるこの
ストリートツインは、中々のファンバイクとしてトライアンフの販売を支えていくのでは
ないでしょうか?
さて、次のインプレは同じストリートツインですが、カスタマイズ車両の方になります。