
思えば、2005年から7年間トライアンフ車にずっと乗り続けてきた訳で、
途中675を挟みつつ、3気筒1050を一通り乗ってきた経験をちょっと
書いてみようと思う。
・SprintST1050(05年~09年)

 スムーズなエンジン特性を持つスポーツツアラー
 中速から高回転までフラットに吹け上がる特性で最も高回転が得意。
 センターアップマフラーから吐き出される音は、低回転では野太く
 迫力がある。高回転まで回ると、甲高い音が混ざりつつ低く吼える
 ような音になり、回して音を楽しむこともできる。
 カウルの大きさから高速性能は非常に高い。
 ハンドリングは、寝かせた分だけ曲がるタイプで積極的な操作を
 しなくてもスムーズに曲がっていく。
 パニアケースを搭載しても膝が擦れるとされるほど、運動性はよく
 保たれている。
 一方で足回りは、ツアラーらしく柔らかくおっとりした動きをする。
 
 05~06年式は、低いハンドルに荒々しいエンジン特性で、
 スポーツ寄りの性格を与えられている。07年式からスプリントGTへの
 モデルチェンジに至るまでは、高いハンドルに大人しいエンジン特性で
 ツアラー寄りの性格を与えられている。
 
 06モデル以降からABSが装着されていて、これがスプリントSTとの
 相性のよさが感じられる。サスペンションや車体の特性か、ややブレーキの
 コントロールに不安があるスプリントSTには、ABSの装着が合っている
 と思う。
・Tiger1050(08年~継続)

 やや過敏なエンジン特性を持つデュアルパーパスっぽいスポーツツアラー
 ピックアップ重視のエンジンで、やや開けはじめがスプリントSTより
 激しく応答する。低速の気持ちよさが特徴で、するすると走っていく。
 一方で高回転まで回せば、雰囲気が一変しスポーツNKっぽい荒々しさが
 顔を出す。猫足系の足回りのお陰で、どんな操作でもしっかりタイヤが路面を
 捕らえているような安心感がある。回して攻め込んでも恐怖感はなく、
 ハイペースでコーナリングを楽しむことが出来る。
 なお、集合管の特性か高回転はジェット機のような排気音が発生する。
 
 日常では優雅さ、ワインディングでは機敏さ、長距離ではやさしさを持つ
 タイガーらしいオールマイティな性格は、1台で何でもできる気にさせる。
 後発のTiger800/800XCとは異なった、オンロード向きでスポーツバイク
 ベースのツアラーとして、完成された乗り物だと思う。
 Tiger1050は、トライアンフらしい中庸さを最も発揮された例だと思う。
 
 08モデル以降は、ABSが装着されているが元々コントロールしやすい
 特性のため、いざと言う時の保険程度に考えてよいと思う。
・SpeedTriple1050(10年~継続)

 3車のうち、もっとも標準となるモデルで一番低速重視の正確を与え
 られている。3000rpmからフロントアップを開始するトルク特性を持ち
 一方で高回転は苦手に感じる。
 
 豪快なトルク特性、軽いが手ごたえ十分のハンドリング、短いホイール
 ベースで激しい姿勢変動、これらの特性によりストリートファイターらしい
 機敏で豪快な乗り味を楽しむことが出来る。
 
 スタートダッシュが兎に角速く、フロントをカチ上げたまま自由自在に
 駆け巡る。
 08モデル(エンジン特性は07.5を含む)からは、安定感のある
 サスペンションと、開けはじめの過剰なトルクを押さえたエンジン制御に
 よって、より乗りやすく楽しむことができるようになった。
 
 また、08モデルで採用されたブレンボキャリパーは、強力な制動力だけ
 ではなく、レバー入力に対して自在にコントロールできる安心感がある。
 ブレーキに関しては、絶大な信頼を持つ。
 2011年モデルで、フルモデルチェンジしたスピードトリプルは、
 エンジンは08モデルをベースに、更にパワフルかつスムーズに上まで
 吹け上がる特性を与えられており、スプリントSTとスピードトリプルの
 良いところを合わせたようなエンジンを持つ。
 
 車体が大きく進化し、2000年前後のリッタースーパースポーツ黎明期からの
 キャリーオーバーだった旧型に対して、現在のスーパースポーツらしい
 前輪荷重をたっぷり取った安定したハンドリングを持つに至っている。
 旧型は豪快に振り回して乗るような印象を持ったが、新型ではバンク角に
 あわせてフロントからどんどん曲がっていくような、積極的に曲がるバイクに
 変化していた。リア190/55-17のタイヤサイズの影響もあるかもしれない。
 
 鋭いスタートダッシュは健在だが、フロントが浮きにくくなった車体特性
 により、扱いやすく速くなった印象を持った。
 ブレーキは、ブレンボマスターシリンダーを更に追加し、更にABS機能を
 持つモデルも登場して、元々高かったブレーキ性能は更に磐石となった。
 リアブレーキについては、新旧でディスクのサイズやキャリパーの性能差
 によって、旧型がフロント偏重、新型は前後バランス型とリアブレーキの
 特性が大きく異なるのも面白い。
このように、トライアンフ1050シリーズは、同じエンジンを搭載する
3タイプの車両を、車体特性や吸排気、エンジン自体の味付けによって、
別々のバイクとして変化させてきている。これが面白くて、大型三発の
トライアンフは止められない。