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アルファロメオに乗り換えて早2ヶ月。

購入直後に燃料ポンプのトラブルで
レッカー車のお世話になったのは
まだ記憶に新しい。

だってまだ2ヶ月しか経ってないから。




そんな初期トラブルにもめげず
国産車とは真逆な位置に付いている
ウィンカーレバーの操作も間違える事もなく
自身初の外車にも慣れてきた。

右折時にウィンカーではなく
ワイパーを動かして右折すると言う
とんでもなく恥ずかしい行為を犯したのは
購入初日の朝だけである。




『うん、これで僕も一端のアルファ乗りだ』




そんな事を思いながら
遅めの昼食をとる為に
店を抜け出し
快調にクルマで流していたある日。







信号待ちでクルマを止めて

信号が赤から青に変わり

いざ走り出そうと

シフトを1速に入れる為

シフトレバーを前に押し出した。







その瞬間……







『スカッ！！』









…ん？『スカッ！！』？

？？？？














(ザー…ガガ…)
『ピット！応答してくれ！ピット！』




(ピピ…ガガ…)
『どうしたアイルトン、何かトラブルか？』




(ザー…ガ…ガ…)
『ああ、トラブルだ！
ギアが入らない！ギアが入らない！
どうやらギアボックストラブルらしい！』




(ザー…ピピ…ガガ…)
『了解したアイルトン！
応急処置は困難か？アイルトン！』




(ピピ…ザザ…ザー…)
『無理だ！シフトレバーがグラグラだ！
シフトレバーがグラグラだから
1速にも2速にも入れられない！
どうにもこうにも引っかからん！
もう一度言う！

シフトレバーがグラグラなんだ！』





(ザー…ザ…ザ…)
『了解だアイルトン。
そいつはギアボックストラブルではない。
単純にシフトレバーの破損だ。
残念ながら今日はリタイヤだ。
今からそちらにマーシャルカーを…
いや、板金屋のレッカー車を向かわせる』




(ピピ…ガガ…)
『オーケー、ボス。
仕方が無い、諦めよう。
メカニックの連中に謝っておいてくれ。
大事なマシンを壊しちまって、すまないと…』










…などと、ピットと交信するかのごとく
板金屋さんとの電話のやり取りの末
再びレッカー車のお世話になった。




とは言え『シフトレバーの破損』とは。




国産車に乗り慣れた者にとって
『考えられないような
信じられないトラブルに見舞われるぞ』と
購入前から散々聞かされていたが

まさか本当に
『考えられないような
信じられないトラブル』に
自身が見舞われるとは。

しかもこの2ヶ月で2回も。




恐るべし！アルファ！
恐るべし！イタリア！




なんだかんだで
無事にレッカー車にクルマを載せて

悪阻で苦しむ嫁さんに無理を言って
嫁さんの軽自動車を借りて
移動手段は手に入れた。




と、ここで思い出した。




まずい！
店に戻らなきゃ！
もう1時間半も時間を食ってるし！




慌てた僕は
嫁さんに借りた
『スバル プレオ』に飛び乗り
一路、店に向かって走り出す。





久し振りの国産車。




やはりクルマに安心して乗るには
『国産車』に限る。

問題なくシフトする
嫁さんの『スバル プレオ』




早く店に戻らねば。




焦る僕はクルマを飛ばす。




ところが目の前には
異常にトロいハイエース。




『くっそ！
トロいくせに
悠々と右車線を走るんじゃない！』




などと若干イライラしながら
異常にトロいハイエースを追い抜こうと
左車線にクルマを向かわせる為に




『ウィンカーレバー』を
『下に』降ろした。




乗り慣れたアルファロメオでは
左側に付いている『ウィンカーレバー』を
『下に』降ろした。
























ワイパーが動きました。

本当にありがとうございました。

ありがとう。
ありがとう。

君と一緒に過ごした毎日は
本当に本当に楽しかった。




ありがとう。
ありがとう。

君と一体になれた日々は
本当に本当に幸せだった。









君のその伸びやかなフォルム。
君のその耳に心地よいサウンド。
君のそのしなやかな足廻り。



君のその全てが。
君のその何もかもが。
僕の五感を刺激し続けてくれたんだ。











さようなら。
さようなら。

君の後ろ姿は最後まで美しかった。




さようなら。
さようなら。

君のことはずっとずっと忘れない。










北の大地で新たな人生をスタートする君は
新しいオーナーにその身を委ね
静かに見守る僕の前から姿を消した。




後ろのポケットから携帯を取り出し
君が僕に見せた最後の後ろ姿を
写真に収めようとしたが、やめた。





君が僕に見せた最後の勇姿は
僕のこの目にしっかりと焼き付けた。





赤いテールランプが暗闇に消えた。
僕は煙草に火を着けて
白い煙を勢いよく吐き出した。





耳を澄ませば君の声が聞こえる。
その声も次第に小さくなり
とうとう君の声さえも
僕の前から消え去った。










君と過ごした
あの『熱かった』夏の名残を惜しみながら
僕はこう呟いた・・・







『Good-Bye my Friend』