
1 はじめに
キャンピングトレーラーを購入したものの、様々な問題にぶつかって運用を断念して短期間で手放した経験から誰かのお役に立てればと思い、一筆記事を書いてみることにしました。今回は、経済的にキャンピングトレーラーを運用できる牽引車について私見を述べたいと思います。
2 トレーラーを選択した理由
私がキャンピングトレーラーの購入を決めたのには様々な理由がありますが、この記事で主題となるコスト面から評価すると、同程度の広さ・装備水準の自走式キャンピングカーよりも大幅に安く購入でき、車両の維持コストも格安であることが一つ大きな理由でした。しかし、せっかくお金のかからないトレーラーを入手しても、これを牽引するために高価で燃費が悪く維持費の高い車を普段から乗り回すことになっては本末転倒です。そういうわけで、牽引を行う自家用車についても経済性を重視して選択したいわけですが、どのような車種を選択すればよいのでしょうか。
3 牽引車に適する条件
比較的運用の容易なヨーロッパ系750㎏以下クラスのトレーラーを前提にお話ししますが、まず、このクラスのトレーラーを安全に牽引できる車両に求められる条件にはどのようなものがあるでしょうか。まず車両重量については、一般にトレーラー重量が牽引車重量の75パーセントを越えないことが条件とされますので、1500㏄クラス以上であれば大体1200kgは超えてくるので問題ないといえます。次に、エンジン出力についてですが、これも1500㏄クラス以上が最低条件になります。次に重要なのは、トランスミッションです。内燃エンジンはオーバーヒートを防げば過負荷には割と耐えますが、ミッションは異常な負荷がかかると過熱によりトラブルを起こす場合があり、機械的な損傷につながります。特にCVTは負荷に弱く、トレーラー牽引にはリスクが伴いますので、トルコン式多段オートマか、マニュアルミッションが適します。ただし、マニュアルミッションについても牽引時の坂道発進に難があり、クラッチ焼けのリスクもあることからコンサバティブなATミッションが無難であると思います。あとは750㎏以上の強度があるヒッチメンバーを装着できる車種であれば良いわけですが、750㎏以内とされるトレーラーも、実際にはオプション装備の搭載や、水・燃料・キャンプ用品その他を積載すると800~900㎏に達することになるため、安全を考慮すれば1000㎏クラスの耐荷重を持つヒッチメンバーが装着できることが望ましいといえます。
4 条件に合う車種はかなり限定される
まとめると、1500㏄以上のエンジンと多段式AT又はマニュアルミッションを搭載し、牽引重量1000㎏クラス以上のヒッチメンバーを装備できる車両となります。この条件に合う中で経済性に優れた車種を検討してみました。なお、ハイブリッド車についてはメーカーが牽引を明確に禁止しているケースが多いほか、国内向けと輸出向けではミッションクーラーの有無が異なる場合があるようで、海外で牽引可能とされていても国内仕様は不可ということもありますのでメーカーに確認が必要です。一方でアウトランダー、エクリプスクロス、RAⅤ4、ハリアーのPHEVはメーカー公認の優秀な牽引車です。プラド、ハイラックス等の大型SUVやハイエース等は余裕で条件を満たしますが、運用コストも維持コストも高額で取り回しも悪く不適格です。一方で経済性に優れる1500~2000㏄クラスの乗用車のほとんどはCVT搭載で750㎏までのヒッチメンバーしか設定がなく、安心して牽引可能とはいいがたいでしょう。また、1000㎏以上のヒッチメンバーの設定がある非CVTの乗用車は2000㏄クラス以上がほとんどでガソリン車の場合は燃費も10km/ℓ前後となりこれもあまり経済的ではありません。では、このクラスの狭間にあって、運用コストが安く、安全に牽引できる数少ない車種が8つあるので上げていきましょう。
5 PHEV4車種
まずは前項でもあげた、三菱アウトランダー・エクリプスクロスPHEVとトヨタRAV4・ハリアーPHEVです。この4車種は日常走行ではEVモードで経済的に走行でき、牽引能力に優れる上に1500Wの電源供給能力を有し、理想的な牽引車です。ヒッチメンバーも1000㎏以上に対応したものが入手可能で問題ありません。ただし、新車・高年式車は高額な一方で、価格が手頃な三菱の旧世代の中古車はハイブリッド走行時の燃費が悪く、駆動用バッテリーの寿命にも不安があるという問題を抱えています。
6 マツダ6/アテンザ
積載能力に優れ、概ね15~20km/ℓに達する優れた燃費性能と、強力なトルクを持つディーゼルエンジンを搭載し、多段オートマもマニュアルミッションも選べ、1000㎏クラスのヒッチメンバーも設定があります。また、新車も中古車も比較的手ごろな価格です。ただし、頻繁なオイル交換が必要なほか旧世代のスカイアクティブDは、走行距離が延びるとEGRやDPFに大量の煤が堆積してエンジンに異常を来し、分解清掃が必要になるケースが多いため中古車の場合は覚悟が必要です。一つ小さいマツダ3/アクセラでも良いですが、アウトドアユースでは積載能力にやや難があります。
7 欧州Cセグワゴンのディーゼル車 ゴルフヴァリアント、308SW
同じCセグでも、同ハッチバック及びAクラス、Ⅴ40はホイールベースと積載能力が不足、メガーヌエステートはディーゼルが輸入されていないため除外です。この2台は本場欧州でも牽引に適した車種として高評価です。中でも308は国内での中古車価格がかなり下がっているので優良な中古車が入手しやすくなっています。近年は故障リスクも国産車と差は無いようです。アドブルーの補充が必要な代わりにオイル交換周期は2万キロ前後と手もかかりません。ただし、ヒッチメンバーは輸入品かワンオフ製作となり、取付も特殊な配線工事が必要なため、国産車の数倍の費用が掛かります。また、メンテナンスと修理のコストは国産車より割高となるので覚悟が必要です。
8 私の選んだベスト牽引車
以上、要求を満たすのは国内で入手可能な車種の中でわずか8台です。この中から私は最終的に308SWを選びました。理由は次の通りです。
三菱とマツダは中古車を選択した場合、短い間に駆動用バッテリーやエンジンという最重要コンポーネントにトラブルを抱える可能性があり、かといってこれにトヨタが加わった新車・高年式車は高価で手が出せませんでした。またいずれもボディサイズが大きめで取り回しにも問題がありました。意外にも残ったのは輸入車のみで、ゴルフヴァリアントと308SWを比較すると、ディーゼルのタマ数が少なく中古車価格が比較的高いヴァリアントに対し、コンディション良好で安価なディーゼルが多く出回っていた308SWが残ることになりました。
最終的にこの車を購入したものの、諸事情があってこれでトレーラーを牽引することはなく、トレーラーは手放すことになったのですが、その話はまた別途紹介させていただきたいと思います。以上、もしこの駄文をお読みいただいた方がおられましたらありがとうございました。
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Posted at
2024/04/09 00:12:44