ボディ剛性、ナチュラルなハンドリング、DSGのダイレクトな加速フィール、静粛性、マテリアルの質感、すべてにおいて素晴らしく出来が良く、走りの質は、トヨタ・クラウン、BMW・320i、メルセデス・Cクラスと比較しても、まったく遜色ないもの。これらのクルマと比較して、価格は、100~200万も安く、この値段でこれほどのクルマが買えるというのが衝撃だった。
エンジンはわずかに1400cc。オレが乗っていたコンフォートラインはターボのシングルチャージャーだったが、サクサクと小気味よく走ってくれた。
1400ccエンジンは、ゴルフ5の途中から導入が始まった。最初はターボとスーパーチャージャーのダブル過給で、これは本当にスポーツカー顔負けのど太いトルクでモリモリ走った。ゴルフ6でもハイラインはタブルチャージャーが搭載されていたが、コンフォートラインはシングルとなった。
シングルチャージャーはゴルフ5のトレンドラインから載せられている。ゴルフ5の時は、走りの質が発展途上で「廉価モデルならこれでもいいか」という妥協を強いられるものだったが、ゴルフ6のコンフォートラインのシングルチャージャーは、洗練され、充分楽しく走ることができた。
DSGは、このモデルから乾式クラッチを採用し、シフトショックや定速時のギクシャクは皆無になった。段数は7速。ダイレクト感のある加速感で、タンタンとシフトアップしていく様は、今まで体験したことのないもので、そのフィーリングに心酔した。しかし、3年を待たずに、ゴルフを降りてしまったのは、このDSGのせいでもある。
どれだけ性能が良い2ペダルでも、自分の意思をすべて汲み取ってくれるわけではない。山道、峠道など、路面状況が次々変わるような場面では、ギアを固定したままアクセルで速度調整をしたい場面や、早めにギアを上げたいあるいは下げたい場面など、制御したい内容は一定ではない。クルマ任せにすれば、意思とは違う制御をするし、思い通りにマニュアル操作で思い通りに動かうとすると、上手くいかない。そのイライラが少しずつボディブローのように蓄積し「MTじゃないと無理」という結論に至ってしまった。
オレが乗っていたのはゴルフ6の初期モデルで、いろいろと不具合も出た。一番閉口したのがエアコンのトラブルだ。一度エンジンを切ると、エアコンの設定がリセットされて、設定温度が最低温度になってしまう。乗るたびに、冷たい風が、最大風量で出てくる。クルマに乗って最初にしなければいけないのが、エアコンの調節というアホみたいな状況。何度も入院して、調べてもらったが、最終的にユニットの交換をするまで直らなかった。完治に一年の時間を要している。
DSGを乗りこなすことが出来なくて、降りてしまったが、今から振り返ってみても、ゴルフ6は相当によいクルマだった。ゴルフ7に世代交代をしているが、走りの質は退化しており、歴代のゴルフの中で最も良いクルマがゴルフ6だと思う。本国にはあるMTで、ベーシックグレードをチョイスできていたら、たぶん今でもオレはゴルフに乗っていたと思う。