ちょっと前から「幻想郷グランプリ※」の出場車を1/43で再現するのがTECH-0さんの中で流行ってたんよ。
※10年以上前、69年日本GP風な設定を東方でやってた薄い本
大体はEBROの1/43を改造して作ってんだけど、917LHのサタデーナイトフィーバー号は、白のピンストが入ってたりして1/43だと流石に厳しいもんで1/18を改造。
で、「917LHは、やっぱカッコええのう~」ってなったので、ポルシェ917LHの話をするんよ。
917というと、映画「栄光のルマン」とか70・71年ルマン優勝車の917Kが有名。
TECH-0さんの好きな917LHってのは当時、ちょっと頭おかしいユノディエールの直線(6km)対策で尻尾を延長したルマンスペシャル超高速仕様のタイプで"Lang Heck"≒ロングテールの意味です
ちなみに69年の917は、通常のショートテール車にテールピースを付けて延長する構造で、ショートの公称Cd値が0.40に対して0.33トップスピードで40kmくらい速かったみたいです。
ここで「あれ?」っと思った人がいるかもしれません。
これは、有名なカムテール、俗に言うコーダトロンカの「自動車の場合、涙滴型を途中でカットした形状の方が空気抵抗が少ない」っていう誤解によるもので、実際は適切に最後まで絞り込んだ方が空気抵抗は小さくなります。
※具体的な話は「リアスポイラー延長検討②」に書いてあるよhttps://minkara.carview.co.jp/userid/167863/car/61672/3834997/note.aspx
一応カム博士の名誉のために言っておくと、これはちゃんと理解できてない話をドヤ顔で広めてしまった自動車評論家的な人の功罪で、カム博士は当時としては非常に先進的な提言をした偉い人です。
なんせ1930年代ってビートル1くらいの時代だからね
ちなみに「一番太い部分の50%のテール面積が最も効果的」みたいな話もヨタ話です(多分便宜上、実験結果を そう表記してただけじゃないかな?)
↓たとえばビートルの場合だと、多分赤線あたりで切るのが空力bestっぽい
あと、「切る」ことがカムテールの目的みたいに言われることが多いけど、大事なのは「適切な角度で絞る」「後端にエッジにする」なので、騙されないようにね。
さて、TECH-0さんはLHが好きすぎるのでLHをベタ褒めしてきましたが、先に書いたように、70・71年とルマンで優勝してるのは917K(Kurz=短いの意)です。
両年とも本命はLHで、ポールから序盤はトップ快走みたいな感じで、直接の敗因はトラブルで潰れちゃったことなんですが、917Kも割といい位置に付けてて、それが連続優勝に繋がってます。
じゃぁ、空気抵抗の大きいKは何が良かったのかというと、まず分かり易いのが、尻尾が短いから単純に慣性モーメントが小さくて回頭性がいいこと。
LHはフレームも含めてリアオーバーハングに、大体長さ600mm 重量で30kgくらいの尻尾が付いてる分です。
また、尻尾が長くなると空力中心も後ろに移動するので、ヨー角が付いた時に直進状態に戻そうとするモーメントも大きくなり、直進安定性がよくなりますが、反面、回頭性は低下します。
ちなみに、NSXのリアオーバーハングが長いのも、MRで重心が後ろよりになった分を補正して安定方向に振っていると考えると、ロードカーとしての性能を重視してた性格からも合点がいきます(NSXはリアガラスの絞りがちょっとキツ過ぎるから、空気抵抗を減らす効果もありそう)
ちなみに「ゴルフバッグを載せるために伸ばすとは、けしからん!」とか言ってる人を見かけたら、そういうレベルの人だと思ってお察しください。
(まぁ折角スペースができたからラゲージ広げたれってのはあるだろうけど)
もう一つは大きなダウンフォースを得られていること(多分これが一番デカい)
一見、LHの方が大きなウイング付けてて逆のようにみえますが、Kの方はボディー全体でダウンフォースを発生させる事を狙った形をしてます。
圧力差による力は、生じる面積の大きさが大正義です。
Kを側面視で見てみると、ボディー上面後部を側面視で絞り込まず、高い流速を維持したまま後端まで流れるような形状をしてます。 LHのように絞り込むと圧力が回復して圧力抵抗が減りますが、その分流速は下がります。
自動車の前半部分は構造上、翼断面形状になりがちなので、そこから翼のように絞り込んでしまうと、当然リフトが発生します。
昔、リフトが大きくて苦労してたムンクラの紫電71を見てみると、確かにそういう形をしとるんよ。
このように、自動車は断面的にはリフトを生じる形状なんですが、リフトの大きさってのは、断面形状だけでなく迎角との組み合わせで決まります。
飛行機が背面飛行できるカラクリがこれです。
翼断面的には逆さまで、マイナスリフトで墜落しそうですが、大きな迎角をとることで、リフトを発生させて飛んでる訳です。
これを念頭に、917Kの側面視を見てみましょう。
AVのモザイクを消す要領で目を細めてみると、リアを絞らず後方に伸ばしてることで、マイナスの迎角をもった歪な対称翼のような形状が見えてきます。
一般的な翼に比べれば強引で効率は良くないですが、それでも図のような循環が生じる条件は満たされるので、床下が加速・上面が減速。
結果、ボディー全体でマイナスリフトが発生します。
やったね!
この手法は後年のポルシェ956でも引き継がれてて、956の場合は、より洗練され高効率な形状になってます。
でも、やっぱカッコいいのはLHだよね!
異論は認めん。
Posted at 2019/09/09 23:17:22 | |
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